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ウェルフェアトレード?

うっかりしていました。
マジェルカは先日の9月9日で11周年を迎えました・・・

「障害のある人が作った雑貨専門のセレクトショップ」
「福祉のフェアトレード「ウェルフェアトレード」のショップ」
11年前にはどこにも無かった。
そもそも誰もやっていなかったから始めました。

だから、福祉雑貨の市場は、まさに未開拓状態でした。

それは具体的にどういう事かというと、当時は今のように素敵な雑貨製品を作ってSNSで発信している作業所など殆ど無い中で、全国あちこちの作業所やバザーを訪問し素敵な製品を探し出(発掘)し、福祉ショップやバザー以外での取引経験や知識が殆ど無い相手にショップの企画書を送ってアプローチをし、時には商取引の仕方やルールを一から説明したり、一緒に考えたりしながらお互いに納得や理解をしてお付き合いを始める(開拓)ことの連続でした。

製品を供給してくれる作業所だけでなく、それを売る市場、お客様の側も全く未開拓の世界だったので、実店舗を立ち上げ、連日ブログやSNSで発信し、ECサイトも立ち上げ・・・
ほとんど休まずやってました。
でも、まともな収入にはならないので、店を開ける前の早朝や、終わった後の深夜にアルバイトを掛け持ちしたり。
今考えると我ながらよくやっていたなと思いますが、それは誰かの為にではなく、自分にとって、未開拓な世界を一から切り開いていく楽しさややり甲斐に溢れていました。
そして少しずつ増えていった、理解、共感して関わってくれる人たちからの期待やお客様からの反応・・・
中でも何より嬉しいと思えたのは、作っている障害のある本人やそのご家族が店に来て喜んでくれた時でした。

でも実は、最初は全く福祉の現場や事情なんて分からないで始めました。

当時は、店に来てくれた福祉関係者が「B型で働いてます」って言えば「B型って実際どんな事してるんですか?」とか「社協の職員です」って言われれば「社協って何してんですか?」とか質問ばかりしてビックリされたり、困らせたりしてました(苦笑)

そもそも最初は、どちらかといえば福祉の側よりも市場の側を向いていました。
でも、
「マジェルカの活動って、作っている人達にこんなに喜んでもらえるんだ・・・」
「こういう場所があることでこういう人達からも期待をされるんだ・・・」
と、日々活動をしながらこの世界の実際を学び、そこで果たせるマジェルカの意味やウェルフェアトレードの役割をアップデートしていた毎日でした。

そんな「ウェルフェアトレード」を、看板を毎日掲げ、あちこちで発信し続け、気づいたら11年経ちました。

ほとんど何も無かったところに撒いた種は11年経った今どうなったのでしょう。

「ウェルフェアトレード」という言葉は他でもチラホラと見かけるようになってきました。
それ以上に“セレクトショップ“や”専門店“として、“福祉雑貨“や”障害のある人たちが作った雑貨“を売る場所が、特に最近、日に日に増えていると驚きとともに実感しています。

先日、ある人から「障害者というのが以前ほど特別な存在じゃない世の中になった感じがする」という言葉を聞きました。

それは、ノーマライゼーションからインクルージョンへと、社会全体が障害者に対してだけでなく寛容な、マイノリティを特別視しない方向に変容していった事もあると思いますが、もっと具体的で目に見える部分では、例えば、障害者アートやパラスポーツに触れる機会がかつて無いほど増えたこともあれば、そこに加えて“福祉雑貨“や”障害のある人たちが作った雑貨“を売る場所、これもかつて無いほどに増えている事も一役買っているのでは、と考えています。
そして、億面なく言わせてもらうと、その状況を作る立役者としてマジェルカも大きく働いたのでは、なんて思っています。

ということは、マジェルカが種を蒔いた「ウェルフェアフェアトレード」が11年経って実を結び始めたという事なのでしょうか。

それに関しては半分正しくて半分は正しくはないと考えています。

マジェルカが大事にしてきた「ウェルフェアトレード」とは

福祉事業所で作られる自主製品を正当に評価し
その価値に見合った適正な価格や方法で流通させ
障がい者の収入や働き甲斐の向上と社会参加を促し
社会の障がい者理解を後押しする

この中の「福祉事業所で作られる自主製品を正当に評価」の点に関しては、
作業所製品の販売に興味を持つ人達が増えた事、その結果沢山の人がその製品の価値に触れる場が増えたという事、もう一つ言えば、お客様から「ほしい!」といってもらえるような製品を作る作業所が増えた事は、大きな前進といえるのかもしれません。
以前は、作り手が価値を発揮してお披露目する場所も、多くの人がその価値を目にする場所も限られていたのですから。

ただ、“かもしれません“と言ったのは、それらは、その次の「価値に見合った適正な価格や方法で流通」がされていればの話だから。
この部分は正直なところ、あまり変わっていないのでは、と感じています。
「価格や方法で」「方法」に関しては、以前の福祉ショップと比べれば、多くのお客さんが足を運ぶロケーションと入りやすいスペースの売り場や見せ方が増えたと思います。
過去にはバザーだったのも、今やマルシェと称しておしゃれで楽しげな感じも増えてます。
では、「価格や方法で」「価格」の面ではどうなのでしょう?

この点は、売り場の数が増えた事に比して、さほど変わっていないと感じています。
確かに、以前の作業所製品に比べ、おしゃれな雑貨や可愛い雑貨が増え、以前に比べておしゃれな売り場が増えました。でも、それは売るモノと売るバショが変わっただけで、作業所製品とそれを作る障害者の働きへ対する根本的な見方というのは大きく変わっていないと感じています。
それは、売る側もだし作る側も。

「障害者が作った製品は安くないと売れない」という固定観念。
「売れない」ではなく「安く売るべき」と積極的に考えているのではないかとすら感じます。
間違えてはいけないのは、この固定観念を持っているのは、お客様の側ではなく福祉の側です。
そして障害者のために福祉雑貨を売りたい人達の活動の多くもいまだ福祉側の目線だと感じてます。

商品自体の価値よりも、「障害者が作っていること」自体に価値を置いて、「障害者が作っているから買ってください」と売り、それに価値を感じ「障害者の為に買うわ」という人達に売る。

だから、「障害者が作っている」という部分を価格設定の基準に据える。
そしてそれをするのが「障害者が作った製品は安くないと売れない」という固定観念に囚われがちな人達。
というのが私の見立てです。

実際にマジェルカで売ってるのと同じ商品が他のショップさんでは激安で買える事は多いです。
行政や委託団体が運営する福祉ショップではもっと激安です。
直接作業所から取り寄せたらマジェルカが仕入れているのと同じ位で買える事もあります。
もしマジェルカで見つけたモノを、できるだけ安く買いたい方は上記を調べてみるといいかもしれません。
(ただ、その結果、それを見つけるきっかけを与えたマジェルカという場所がどうなるのかは、想像力が働く方には分かるかと。)

「他が安いんじゃなくてマジェルカが高いんじゃないの?」
という声もあるかもしれません。

マジェルカのお店に来る方の中から、たまに「結構高いね」とか「まぁまぁいい値段するね」という声が聞こえるときがあります。
そういう方々に声を掛けてみると、例外無く福祉関係者でした。
反対に、そうとは知らずに手に取った品物をレジに持ってきたお客様に、「これらは障害者施設で作られてるんですよ。」と伝えると、「作った人達に還元されるんでしょう?これならもっと高くても良いのに。」という方はこれまでに何人もいました。

みなさんはどう思いますか?

長くなったので続きはまた。


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