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ランニングついでの目配せで

お母さんに抱っこされた赤ちゃんや一緒に歩く幼児にちょっかいをかけるのが好きだ。マスクで随分やりにくくなったけれど、目だけでも伝わる時はある。お母さんには気づかれないように笑顔にする。不審がられずに笑顔に出来たら成功で私ルールのゲーム、密かな楽しみだ。

ある時男の子がスーパーで買ったばかりのおもちゃの銃をパッケージのまま電子音を鳴らしながら「バババッ」っといろんな方向に向けて発射していた。夢中でやっていたので、近くにいた私に気が付かず、振り返って銃を向けた、その時「ウッやられた」と腹を抑えた。ギクッとして私を見る、「うう」とやると慌てて銃をみた、当たるの?と言った顔だ。笑いをぐっとこらえて演技を続ける。すぐ銃を背中に隠しお母さんを探してキョロキョロし、私の様子を伺ってる。
平気だ、と手を上げるとほっとしたような顔をしてお母さんのころに直行。お母さんにはバレていない。全く楽しかった(ごめんね)
いつもこんなことをして遊んでいる。
子どもはいつも大人をちゃんとしているもの、だと思い込んでいる。
予想外なことをされるとかなり驚くものだ。子どもの既成概念を壊して回っている、ボランティアだ。

今冬、雪がチラつく予報が出た日に、日課のランニング、早めに走ってしまおうと割と重ね着をして家を飛び出した。
SNSの運動アプリを起動して、準備運動、筋をのばして、さて、と走り出した。
山の頂上にある我が家、下り坂道までやってきて今日はどこに行こうかと下ろうとした時、違和感があった。
坂道を登りきったところにある新築の家、玄関にランドセルの子どもが座っていた。
古い住宅街で、空き家が更地になり建てられた新築一軒家、若い夫婦が越してきて幼稚園の男の子が小学生になって通いだしたのは認識していた。ご近所でも若い夫婦、干渉は嫌いだろうと、会釈くらいで交渉はない。
瞬間的に、お母さんに怒られたのかな?と何もせず坂道を下る。
走りながら気になって考えていた。怒られて外に出されてる?いや、待てよ家の電気はついてない、ランドセルのままだ、ということは鍵をなくした?この寒空お母さんの帰宅はいつになるだろう、大変だ!坂道の半分で折り返した。
近づいてくる大人に警戒する男の子。 もちろん、必要な警戒だ。不審がられないようゆっくりと。
「大丈夫?」
しまった、大丈夫って聞くのはダメだ。
子どもは大丈夫と答えてしまう。反射的に迷惑をかけては怒られる、と身構えてしまう。
自分だって大丈夫じゃないのに大丈夫って言ってただろうに。
「何かこまってる?」とすぐ聞き直した。
びっくりして声も出ない、知らないオバサンが話しかけてきて固まってる。
「鍵なくしちゃった?」
具体的に聞くのがいい。子供には。
すると意図がわかったのか警戒が解けた。
声こそ出ないがぶんぶんと首振って否定した。
ランドセルを叩いて「ここに」やっと声らしきものが出た。
「寒いよ鍵本当になくしてないの?中に入らないだけ?」
「お母さん……待ってるの」
そうか。不安になったのか。たまにあるよね。
「お母さん、すぐ帰ってくる?」
分からない、と首を振る。
「そっか、ここで待ちたいのね」
うんと頷く。
「鍵は無くしたわけじゃないのね」
念を押すと、返事の代わりにうん、と頷く。
「じゃ寒いからお母さんあんまり遅かったら中に入るんだよわかった?」
うん、と再び頷く。
「じゃオバサン行くね」
再びはしりだす。
走りながら、ああ、お母さん寒いから中に入って部屋を暖めておいてあげたら?って言えばよかったな、と後悔した。
そんなことをいつ来るか分からない次回のために考えながら走ることに集中した。

その日は快調でたのしく走れた。
少し遠回りしてみよう。
いつも行かない道を通って遠出をした。何やらイルミネーション頑張ってる家を発見したりしていつもより時間をかけた。帰ってくるまですっかり男の子のことを忘れていた。
坂道を登りはじめて、ハッあの子どうなったかな?と思い出した。
登りきって玄関に彼の姿がないのを確認した。
よかった。
そのまま何周か家の周り近所をぐるぐる回る。
目標距離まで後一周といったところで再び彼のうちのところまで来た。車を駐車場に停めているところだった。ワゴンタイプの車からお母さんが降りて荷物を運んで玄関に入っていった。
よかったお母さん帰ってきたのね。
車のスライドドアからひょこっと男の子が顔を出した。
私がおっと思いながら見ていると彼が車から降りてランドセルを抱えて歩き出したとき私に気づいた。目で私を確認するとお礼とばかりに僅かに首がコクッと動いた。私も目で「おう」と返事をする。お母さんは私に気が付かない。
いつものゲームだ。
ちゃんとお礼して、偉いね。

そうか、プレゼントか。
ランドセルと一緒に抱えていた包みで完全に理解した。クリスマスプレゼントを買いに行くのが待ちきれなかったのだ。自然と笑顔がこぼれた。

親以外の大人に対して免疫がない子どももいる。
既成概念を壊したり、心配してくれる大人はいつでも側にいるんだよ。
本日もランニングついでにボランティア、目配せくらいの距離感で。

#PLANETSCLUB #ランニング #ランニング部 #声かけ #子ども #教育 #ボランティア


ちょっと寂しいみんなに😢