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【エッセイ】たちがわるい

下ネタが入りますので、苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

 ありがたいことに小説家の大原鉄平さんとお会いし、お話しする機会をいただいたのだけど、相手にはご家庭もあり、あまり長居してしまうのは忍びないと思ってどれくらい話せば良いものか悩めば、なに、店を何度か変えながら気づけば7時間も話し続けていた。
 よくもまあそんなに話すことがあったなと思うかもしれないが、話尽きてお開きになったというよりは、先に店の閉店時間が来てしまったことによって強制終了させられる形となった。
 店を出て、ほぼハモるように「全然時間足りなかったですね」と言うのだから、お互い生粋のおしゃべりである。

 話の流れで、女ったらしの友人の話になり、エピソードを聞いている時に相槌で

「それはたち悪いですね」

と言いながら「いや、これ、勃ちの良い人の話やん」と事故的にダブルミーニングしてしまえば、どうしてもそれを伝えたくなり、でも初対面でまだ関係性も確立されていない、しかも私の中で神格化している『小説家』に対して、それは失礼になってしまわないかと逡巡し、結局、

「今の話に『たち悪い』はややこしなるんですけどね、うへへ」

みたいな気持ち悪いセルフツッコミをしたのだけどタイミングが悪く、大原さんはそれに気づかず話を続けてしまったので、いよいよ恥ずかしくなって、苦し紛れにコーヒーを頼んだ。

 私が疑問に思っている疑問に対して丁寧に議論をしてくださり、考えが似ている部分も多く、心地よい時間が流れた。お互いに「小説家」になった時に対談ができればいいと思ったのだけど、もしそうなると、今のように人の小説に好き勝手言及できなくなってしまうような気もするが、やはり私は小説家になりたいのである。


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