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大阪エヴェッサ・竹内瑞希が秘める通訳への思い「日本で良かったと、思ってもらいたい」

舞洲プロジェクト公式noteでは、舞洲に拠点を置くプロスポーツ3チーム大阪エヴェッサ、オリックス・バファローズ、セレッソ大阪で働くクラブスタッフへのインタビュー特集企画「舞洲を支える人々」を実施中です。クラブスタッフとなった経緯やチームへの思い、舞洲にまつわるお話などを伺います。

B.LEAGUE所属・大阪エヴェッサを運営するヒューマンプランニング株式会社 通訳の竹内 瑞希(たけうち・みずき)さんは、大学在学中の2020年から1年間のインターンを経て入社しました。

「選手やコーチと誠実に向き合い、的確に伝えられるように意識しています。言語や文化の差異が壁にならないようにしたいんです」。このように語る背景には、自分自身が感じた海外生活での難しさが根底にあります。練習や試合時の通訳にとどまらず、オフコートでの選手のサポートも大切な役割です。

エヴェッサの通訳となった経緯や現在の業務内容、通訳という仕事への思いを伺いました。

きっかけは、6年前の求人募集

ー通訳になろうと思った経緯を教えてください。

竹内:小学校から高校までバスケットをしていたのですが、腰椎椎間板ヘルニアを患っていたので大学以降はやめようと決めていて…海外や文化人類学に興味があったので、国際関係の学部に進学したんです。ただ、「通訳になろう」とは思っていませんでした。

大学在学中から、積極的に海外へ行きました。オーストラリアで日本語教師のインターンシップに参加したり、1年間休学してフィジーで働きながらアートを研究したり。現地でのコミュニケーションを通じて英語が話せるようになりました。語学が大好きで、他にも中国語、インドネシア語、フィジー語を話せます。去年からイタリア語も少し勉強し始めました。

ー再びバスケと出会ったきっかけはどこにあったのでしょうか?

竹内:海外の大学院に進学予定だったのですが、新型コロナウイルスによって入国できなくなってしまったんです。大学4年間かけて準備をしてきた大学院進学以外は視野になかったので、この先どうしようかなと悩みました。

そんなとき、過去にWリーグ(バスケットボール女子日本リーグ)の試合で見た通訳の方をふと思い出したんです。町田瑠唯選手(元 富士通レッドウェーブ)が大好きで、大学時代にWリーグをよく観戦していました。いつかの試合で通訳の方を見かけて、「英語とバスケ経験が活かせて、自分に合う仕事かも」と、就職の選択肢として考えたことがあったんです。

「バスケ 通訳」で検索すると、大阪エヴェッサの6年前の求人募集が出てきました。6年前のものだと気づかず、書いてあったメールアドレスにこれまでの経歴や思いを書いて送ったんです。すると担当の方がお電話をくださって、「実はあの募集は6年前のもので...。でも、ちょうどビジネスレベル以上の英語ができて、バスケの知識がある方を探している」と。

いざ決断を迫られると「バスケの現場に戻るのか」という葛藤もありましたが、直感で「ここしかない」と思いました。そこから1年間のインターンを経て、正式に入社させていただきました。


外国籍選手が楽に過ごせるように、何でもサポートする

ーあらためて、今の業務内容を教えてください。

竹内:練習や試合中の外国籍選手とのやりとりを想像している方が多いと思いますが、実際はオフコートでの業務のほうが多いんです。20名以上の外国籍選手やコーチ、そのご家族の全体的な世話役をしています。

契約交渉段階から打ち合わせの通訳やセッティング、英語版の書類作成を担当しています。正式サイン後は、入国時のビザの申請や検診、入国後も行政関連の手続きを進めます。できるだけ負担が少なくなるようにサポートするのが役目です。

英語版の契約書作成は、フィジーで働いていた頃にクルーズ会社で契約書の書き方をいちから勉強した経験が活きています。海外では「戦力にならない」と判断されてしまうとすぐに切られてしまうので、寝ずに取り組んでいたのが懐かしいですね。ビジネスで使う英語に触れてきて良かったと感じています。

入国後も、車を持っていない選手が多いので送迎したり、日常生活の中での疑問に答えたりしています。「旅行支援の制度を使いたいのだけれど、どうすればいいの?」と電話がかかってくることもあります(笑)。

ー細部まで、外国籍選手をサポートされているんですね。これまでの経験を活かして、竹内さんだからこそできる業務内容だと思います。

竹内:私も海外に行って、自分が人種的にマイノリティになる感覚や海外で過ごすストレスを経験しました。小さな文化の違いが積み重なって、「(母国に)帰りたい」と思ってしまう選手もいます。だからこそ、外国籍選手がなるべく楽に過ごせるようにサポートしていきたいと思っています。


誠実に向き合うことが、選手との信頼関係に繋がる

ー練習の際、ハキハキとコーチの指示を伝えている姿が印象的でした。コミュニケーションをとるうえで、意識していることはありますか?

竹内:相手が誰であろうと、ウソがないよう誠実に向き合いたいと思っています。直訳だと、ニュアンスが異なることがあるんです。上手く補足しながら、コーチが伝えたいことを的確に伝えられるように意識しています。

練習中の伝え方は、試行錯誤しているところです。コートが広いので、お互いの言葉が届くまで少し時間がかかりますし、同じタイミングで話してしまうと、コーチの声が聞こえなくなってしまいます。練習の流れを止めないように、タイミングをみて素早く伝えるように心がけています。

ー同時通訳でそこまで意識するのはかなり難しいことだと感じますが、やっていくうちにできるようになってきたのでしょうか?

竹内:1年目の時は、チームにもたくさん迷惑をかけました。ようやくメッセージが伝わる通訳ができるようになってきたと自信が出てきたかなと。性格的に表に立つタイプではないので、親にも「別人みたいだね」と言われました(笑)。

選手との信頼関係も築けてきたと感じています。不安なことがあっても、「みずきが言うなら大丈夫か」と。日本人選手はミーティングや練習、試合の時にしか会わないので、むしろ外国籍選手の方が距離感が近いくらいです。

ー「誠実に向き合う」ことが、信頼に繋がっているのですね。

言語を壁にすることが、ないようにしたいんです。なんでも話せる雰囲気が、オンコートでのコミュニケーションにも繋がっていくと思っています。


エヴェッサには、安心感がある。

ー大阪エヴェッサの好きなところを教えてください。

竹内:フロントスタッフ、現場スタッフ、選手全員が温かいところです。インターン時代や1年目の頃はミスもありましたが、「大丈夫!」と受け止めてくれるなど、話しやすくて、風通しがいいんです。「きちんと聞いてくれる、答えてくれる」という安心感があります。

ー印象に残っている舞洲でのイベントや試合はありますか?

竹内:試合はどれも印象に残っていて選べません。イベントだと、この夏に大阪の小学生を対象としたバスケットボールクリニックが印象的でした。エヴェッサのヘッドコーチとアシスタントコーチが指導にあたり、私が通訳として参加しました。バスケの楽しさの伝え方が上手いなと。

私がバスケットをしていた頃は、「〇〇するな!」や「走れ!」と厳しく声をかけられてきました。でも「アヒルみたいに肘を上げてボールを守ろう!」などと、楽しく、でもしっかりとバスケの基礎が伝わる話し方をしていました。実際クリニックが終わると、目に見えて成長している選手が多かったです。通訳としてコーチが話すニュアンスをきちんと伝えて、育成にも貢献したいと思った瞬間でした。

ー最後にあらためて、今後の目標をお聞かせください。

竹内:プロチームとして勝つ必要があるので、通訳としてチームの流れを加速させていきたいです。選手間でアクティブなコミュニケーションを生み出せるように話しやすい雰囲気を作っていくことで、微力かもしれませんがチームの勝利に貢献できるようこれからも頑張っていきたいです!



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