恋に花が咲くヴァカンスワンピース
15年以上前のその夏、私はある人が所有するクルーザーというものに初めて乗っていた。
というと、豪華な旅行に同乗できてラッキーね!と思われるかもしれないけど、私としては、当時つきあっていた彼に東京でこっぴどく振られた直後で、海の上の景色も失恋の記憶で満ちあふれ、ぼんやりと船に揺られるばかりだった。
とはいえ、クルーザーの上から見る、はじめての海のエネルギーはすさまじいもので、どういうわけか失恋への痛手も、創作へのインスピレーションに変わっていく力があった。
・・・女の子はキラキラもっと強くね
そんな言葉が、見たこともない美しいエメラルドグリーンの海を反射している太陽の奥からわき出てきた。
・・・男の子もときに弱いから
そう、こちらが追うだけの胸の痛むばかりの恋愛で味わったのは、「男の子という年代の、繊細な人のプライドに踏み込んではいけない」という教訓。
・・・あなたのココロに花が咲いたら、きっと彼のココロにも花が咲く
時が経つにつれて、クルーザー上で感じた蘇っていく生命のエネルギーともに、“女の子は男の子にとって花のような存在でいること”の大切さを知った。
女の子が花のように自分の場所で咲いていれば、弱っていた男の子もそれだけで瑞々しく蘇り、彼のココロにも花が咲くのだ。
「そのためには、自分が咲ける花にならないと」
恋で、エキセントリックになるまでやせ細った身体と、ココロをたて直そうと思ったのは、クルーザーでの旅が深く影響されていると思う。
それから年月をかけて立ち直った私は、「恋で女の子が花のように咲くために、自分のココロをキラキラさせていて欲しい」と思うようになった。
そのためのファッションやアクセサリーは、ネイルやバッグや靴は、女の子のココロにきらめきをあたえるエネルギー体そのものだと感じた。
15年以上も経った今、あの夏の海と太陽のエネルギーを浴びて感じた記憶を辿りながら、ヴァカンス用のワンピースを作ることになった。
風が吹くと軽やかになびく布地、夕暮れの海辺でかけまわれるようなたっぷりとしたギャザースカート。花のような色合いのラベンダーカラーと、太陽の色であるオレンジカラーのヴァカンスワンピース。
あの頃を思い出しながら作って名付けた「妄想ヴァカンスワンピース」
きっといつしか世界が収束して、もう一度旅に出られますように、祈りをこめて制作したもの。
これを着たあなた自身のココロに花を咲かせ、彼を想ってほしい。
「私の恋に花が咲きますように」と。
柴崎マイ
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