母スパイになる〜トリックオアトリート大作戦〜
人生には刺激が必要だ!
(いい意味で。ある程度ね)
と思っているので、私はサプライズとかするのが好き。どうしたらおもしろくなるか考えるのが楽しいし、驚きと共に思い出がより印象強く残ってくれるかなぁと思うから。
それとは対照的に、夫はサプライズするのも、されるのも苦手。たぶんサプライズを考える思考回路がないのと、「びっくりするのもさせるのも、なんか嫌だから」だそうです。ふむ、なんとなく夫らしくて笑ってしまった。
そういえば、プロポーズもなんとなく予告されていたし、なんなら私が根回しした感もあるので(言い方)、それはいい。愛されるより愛したい派の私は、目玉焼きには醤油より塩コショウ派の私は、サプライズされるよりサプライズしたい派なので、それでいい。
なにより、自分の体から3人も男子が生まれ出るというサプライズ体験をしたので、しばらく刺激はいい。
けれど、子どもたちにはサプライズ…というか、特別なお楽しみを時々企画してあげたいなぁと思う。
それは、子どもたちに思い出を残してあげたいのはもちろんのこと、子どもたちの弾けんばかりの笑顔をみたいという自分の「サプライズしたい欲」を満たすためなのかもしれない。
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時は10月末。私は末っ子を連れて、ひさしぶりにショッピングモールへおでかけした。
目的は、100円均一と無印良品にいくこと。
100円均一でサプライズのために必要な諸々を買うのである。
今年のハロウィン、実は家で何もする気はなかった。
そもそも、ハロウィンというものが子ども時代になかった私は、
「それって食えるの?あ、かぼちゃ食べればいいのか!」
くらいの、ただのカボチャ好きだった。ちなみに「どてかぼちゃ!」の「どて」ってなに…(どうでもいい)
でも先日、マリーナのあったかいハロウィンエピソードを読んだら、子どもたちが楽しめるなにかをしてあげたいなぁという気持ちが、ふくふくと胸の奥からわいてくるのを感じた。
マリーナの話によると、昔からハロウィンの伝統が根付いた地域だと、かぼちゃのランタンを作り、軽くできる仮装をしてご近所をめぐり、「トリックオアトリート!」でちょっとしたお菓子をもらって回るのが定番らしい。た…楽しそう…!
しかし昨今の日本において、というか、うちの周りの地域では、ご近所さんにお菓子をもらって回るハロウィンが慣習になっているわけでもない。
でも、子どもにとってお菓子をちょこちょこ集めて回るっていうのは楽しいだろうなぁ…というのは、簡単に想像がつく。
それじゃあ家の中で宝さがしするみたいに、お菓子をさがすのはどうだろう?
指令を書いた紙とお菓子を家の中にかくして、その指令にそって探すと、次々と指令の紙とお菓子がでてくるっていうの。
実はこれ、私自身も子どものときに大好きな遊びだったし、それがテーマの絵本も好きだった。(瀬田貞二さんの作で、林 明子さんがイラストってすごい豪華)
サプライズ好きな私は「子どもが字をちゃんと読めるようになったら仕掛けるぞ」と子どもが生まれる前から意気込んでいた。
あと、NHKでやっている「猫のしっぽ かえるの手」が好きでよくみているんだけど、ベニシアさんがハロウィンに近所の子どもを家に呼んで、庭に隠したお菓子をさがすっていうのをやっていて、いつかやってみたかった。でも庭にはかくすとこないので、家の中でやる、うん。
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あ、そうそう、ショッピングモールにきていたんだった。
サプライズのことを考えながらちょっと歩き回って、末っ子と軽くランチを食べる。
次に100均で、わーわー言い出した末っ子をなだめつつ、ハロウィンぽい柄の紙コップと、ちっちゃめな個包装おかしを数種類買った。
さて、忙しくなってきやがったぜ!
気合い十分。
お店をでて、ふと気づく。
………
ベビーカーにかけてあったはずのトートバッグがなくなっていた。
トリック オア トリート!
じゃなくて、
落とした! オア 盗まれた!
オーノー、こういうサプライズは勘弁だよ、ベイベー…
自分のポンコツさに嫌気どころか寒気もするレベル。あわててベビーカーおしながら競歩でインフォメーションセンターに行ったら、落とし物センターに届いていた。親切なお方、ありがとうございますありがとうございます…。
いつ落としたのか、皆目おぼえていない。サプライズと久々のショッピングモールに舞い上がりすぎだよ、自分。
この一件でぐったりしたので、無印ではおいしそうなレトルトカレーを何種類か買って、おとなしく家に帰った。
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その日はもう保育園へのお迎え時間がせまっていたし、ハロウィンは10月31日だから、明日(つまり今日)息子たちが保育園にいってる間にじっくり準備しようと思っていた。
けど、折しもその日は保育園で「ハロウィンごっこ」なるイベントがなされていて、かわいい仮装衣装をお持ち帰りするっていうので、息子たちはわかりやすく浮かれている。
仮装衣装は、保育園の先生方が子どもたちと一緒にゴミ袋や紙で作ってくれた力作で、6歳長男はクロネコ、3歳二男はコウモリの仮装をしていた。
ちなみに、保育園では本当のお菓子をくばることはできないので、これまた工作したお菓子を交換するという楽し気なことをやってくれる。
これは、鉄は熱いうちに打て!仮装は熱いうちにトリックオアトリート!ではないかと悟った私は、息子×3が家にいる状態で、お菓子を家じゅうにかくすというチャレンジを敢行することを堅く決意したのである。
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保育園から家に帰って、少し一緒に遊び、私は夜ごはんを作るふりをして、何食わぬ顔でキッチンに身をかくした。
ここからは「トリックオアトリート大作戦」を実行にうつすべく、闇夜(キッチンの灯り)にまぎれ、迅速に行動しなくてはならない。
息子たちがポケモンのぬり絵にいそしんでいるすきに、紙コップにお菓子をちょっとずつ入れて、指令の紙を用意する。
指令の紙はこんな感じにした。
①はしをいれるところをみてみよう
②いつもくつしたどこにいれる?
③ぴんくのおしりふきおきばへ…
④まるいはこのみぎがわみてごらん
⑤きみたちがはをみがくものなーんだ?
⑥そうじきがはいっている、ろうかにあるばしょは?
⑦にほんごで「うぃんどう」ってなんのこと?
ちなみに、①の答えは、カトラリーを入れているひきだし。
今回、難易度は低め。いつも使っているものがどこにあるかわかれば、だいたいたどり着ける内容にしてみた。
指令の紙が書けたら、紙コップに入れたお菓子を後ろ手でかくし、あるいはTシャツの中に隠しながら、横あるきで洗面所やら廊下の物入れやらに移動し、お菓子をかくしていくあやしい母。気分はスパイ。準備はぬかりなくしたい。
隠したら、ぐずぐず三男を抱っこしつつ、一度シミュレーションしてみる。この遊びは流れが肝心だから。
ちなみに、私のスパイ活動により夕飯は無印のレトルトカレーになったのだけれど、期待どおりおいしかったのでよしとしたい。
満を持して、息子たちに今回の計画を発表する。
指令①はしをいれるところをみてみよう
の紙をひらひらさせ、
「ごはん食べ終わったら、トリックオアトリート大作戦を開始する!」
と高らかに宣言すると、いつもマイペースな子どもたちも「はやくごはんたべる!」と食いついた。
いつもの倍速でカレーをかきこんだけれど、ちょうど夫が帰ってきそうな時間になった(今から帰るよメールが毎日くる)。せっかくなら夫も一緒にトリックオアトリート作戦をしたいと欲をかいた私は、
「とっとが帰ってきたら、仮装しておどかしちゃう?」
と提案してみた。
やるやる~!とノリノリな子どもたち、それぞれクロネコとコウモリに変身し、玄関わきの洗面所に身をひそめた。しかし、こういうときに限って夫はなかなか帰ってこず、息子×2はしばらくまっくらにした洗面所に隠れていた。(その間に三男末っ子は授乳で寝落ち)
息子たちがこそこそ行動してるから、静かだわ…と思わずツイート。
そのツイート直後、静寂をやぶり夫が帰ってきた。暗がりから転がり出た息子たちをみて、びっくりというよりかは「わー!かわいいねぇ」とまったりした反応をしていた。さすが、サプライズ苦手の民よ…。
そしてようやく始まったトリックオアトリート大作戦。
少しひらがなが読めるようになってきた二男に指令を読んでもらい、「あそこだ~!」と向かう長男にとてとて二男がついて回る姿は大変ほほえましい。
指令③ぴんくのおしりふきおきばへ…
これは、おしりふきを入れているケースがピンクなんだけど「ピンクのおしりってなんだよ~!」と、ぎゃはぎゃはウケながら探す。うんうん、楽しそうでなにより。
④まるいはこのみぎがわみてごらん
二男は、ドラム式洗濯機のことを「まるいはこ」と呼んでいるので、二男へのサービス問題。でも左右の判別はあやしいので、兄と協力しないと解けない仕様にしてみた。
指令⑦にほんごで「うぃんどう」ってなんのこと?
※完全に私のミス…「にほんごで」じゃなくて「えいごで」だよね…
2人とも知らないっていうので、辞書をみてごらんと言ったら、いつもより意欲的に辞書をめくっていた。やっぱり人間、「知りたい」って目的があると目の色が変わる。
「ウィンドウ」が「窓」ってことを理解した2人は家じゅうの窓をさがし、最後の1つを探し当てた。
たくさん集めた!
そして最終指令は…
よくがんばったね。しれいのかみをぜんぶならべてごらん。おばけのまーくをみてみると…?
おわかりいただけただろうか…(心霊現象特集のナレーション風)
はっぴいはろうぃん
キャーーーー!!!
はい、この「ハッピーハロウィン」を最終的なこたえにしたくて、ずいぶん頭をひねった。そのために「ぴんくの…」とか「うぃんどう」とか、ちょっと無理くり突拍子もない言葉を使ったりしたんだけど、それもまた一興だったな。
この仕組みにいたく感動してくれた長男は、今度はクリスマスに自分で指令の紙を作りたいそうだ。
ゲットしたラムネを食べつつ、
「それでね~『メリークリスマス』って言葉にするんだ」
なんて、にこにこしてたけど、
…答え、いっちゃってるじゃん…!
ってことに気づいてガチ泣きしていた長男でした。
何かほかの言葉、考えてがんばれ…。
みなさんも、ハッピーなハロウィンを〜!
〈おわり〉
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