子どもの夢はとっぴょうしもない
わが家のトイレは、洗面所の向かい側にある。
3歳の二男は、まだひとりでトイレができない。
大きい方がしたくなると、子ども用の便座をひっつかみ、
「じろちゃん、じゅんびするからね、かっか(母)はこないで!」
ときびしい顔でさけび、トイレに直行する。
しばらくがんばってから、
「ちょっときてぇ〜」
と私を呼ぶ。まだ全部できっていないけれど、長時間ひとりでトイレにこもるのはこわいらしい。
トイレのドアは、基本あけっぱなしだ。
私はトイレの壁に寄っかかったり、トイレわきの階段の1段目に座ったりしつつ、二男のトイレが終わるまで会話をたのしむ。朝の忙しい時間だけど、普段なかなか二男とマンツーマンで話せないから、貴重な機会として利用している。
先日は出かける前だったから、洗面所で顔を洗ったりメイクをしたりしながら二男の話を聞いていた。
「ねぇねぇ、ごはんたくさんたべたら、おうちがこわれるかもしれないよ?」
……二男の話は、いつだってとっぴょうしもない。
「え?なんでそう思うの?」
洗面所から問い返すと、
「だってた?ごはん、いーっぱいたべたら、じろちゃんおっきくなっておうちこわれるかもよ?」
そうか、二男はたくさん食べたら巨人みたいに大きくなれると思っているらしい。子どもらしい発想に胸がぽっとあたたかくなるのを感じながら、
「そっかぁ…でもね、人間は1番大きくなっても、とっと(父)くらいにしか大きくならないのよ」
と、わかりやすい例をだしながら説明してみる。
夫は身長が180センチちょっとあり、3人の息子がみんなそんな大きさになったら、家がだいぶせまくなりそうだなぁ…などと、未来に思いをはせる。末っ子の0歳三男にも見下ろされ、家族の中で私が最もちんまりした存在になる日が来るのは、とてもふしぎな気がした。
するとまた、トイレから二男の声。
「でもた?じろちゃんは、大きくなったらロケットになって、かっかと、とっとと、いっちゃん(長男)とさんちゃん(三男)のせて、うちうにいこうとおもってたんだけどねー」
あやうく、あらぬところに眉毛を書くところだった。
二男の将来の夢、ロケットだったなんて初耳だ。念のため、宇宙飛行士になりたいのか、ロケット本体になりたいのか聞いてみたら、本体!だそうで。ますます、その発想なかったわ…。
小さい頃、私の夢はなんだっただろう?
覚えているのは、シンデレラが好きで、袖のぽわっとした、腰から下がふんわりとした水色のドレスがあこがれだったこと。
よく考えたら、結婚式で着たのはまさしくそんなのだった。だから、いつの間にか夢が叶っていたことになる。
子どもたちが大人になる頃には宇宙も今より身近になって、ロケット自体に人間の意思を装備したウェアラブルロケットが登場しているかもしれないし。
私も、じろちゃんロケットに乗って宇宙旅行する日を楽しみにしていよう。
………それにしても、とっぴょうしもないな。
〈おわり〉
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