スマホ中毒な私が爪を桜色に染めたのは白いサンダルがまぶしかったから、だけじゃない。

ひさしぶりに、爪に色をつけてみた。

きっかけは、お気に入りの白いサンダルをじゃぶじゃぶ洗ったこと。

鮮やかになった白いストラップとまばゆい夏の日差しに、素のままの足の爪がはずかしかった。

でも、それだけじゃない。

足の爪を塗り終えたら、手の爪までも一気に染め上げてしまいたくなった。


∞∞∞∞∞

実は4月に買ってあった新しいネイル。家でジェルネイルができるってシロモノで、専用のUVライトで硬化時間は30秒。しかも剥がすときには除光液いらずで、ぺりぺりってはがせるの。

これなら三男がお昼寝中にできるって意気込んでたのに、結局1回か2回やってリビングの棚に押しやっていた。


子どもが小さいから、時間がとれない。

育休中なんだしさ、夫も爪とかそんなとこ注目しないしさ、つまり誰もみてないって!


そんなことを理由にしてたけど、本当はちがう。

私の中の「インナー姑」が、ネチネチと文句を言ってきたからだ。

インナー姑って言葉が一般的かどうか、よくしらない。私がこの言葉に出会ったのはTwitterで流れてきた知らない誰かの言葉だった。

私の頭の中にも、インナー姑が住んでいる。

それは、パーマ頭に三角メガネの典型的な口うるさいおばはんで、私がやることなすこと文句を言い、否定し、どんどん自信をなくさせる。

もちろん、このおばはんは実在しない。本当の姑の名誉のためにも言っておくと、別に夫の親から変な言いがかりをつけられたことはないし、インナー姑のモデルななってるわけじゃない。

そしてあくまでも、インナー姑は私だけを攻撃する。他の誰かが同じ行動をしていたとしても、そこを攻撃したりしない。たぶん。


そんなインナー姑が、言ってくるのだ。

「子育て中なのに、爪に色なんてつけてどうするの?はがれて食事に入ったらどうするの?子どもが食べるかもしれないのに、母の自覚あるの?」

ああ、もう!ほんとにうるさい。


∞∞∞∞∞

だけどその日、私はインナー姑の言葉を無視することにした。

もともと、それなりにおしゃれすることが好きな女子だったと思う。

小学校高学年くらいから、ピチレモンとかの少女向けファッション雑誌を買い出し、ファッションやメイクに興味を持ち始めた。

子どもが生まれる前は、雑誌で旬の服やメイクを研究していたし、都会のOLを気取ってネイルサロンにも通ったりしていた。

つやつや、キラキラと輝く爪は、仕事中もキーボードの上で私の目と気持ちを満足させてくれた。

それは誰のためでもなく、まぎれもなく自分のためだった。

9歳〜大学という青春時代を剣道にささげてきた私にとって爪のおしゃれはタブーだったから、特別憧れがあったのもある。


それが、子ども3人の母となり、育休中の現在はどうだろう。

子どもにひっぱられるし、離乳食をぐっちょんぐちょんになすりつけられるから、洗濯に疲れたTシャツはいつも首がヨレヨレで、シワシワ。

産後の抜け毛がひと段落し、今度はそこからピンピンのアホ毛が生えている。いつもひとつ結びの髪は、長男と二男にからまれてもみくちゃにされ、三男にぎゅーぎゅーにひっぱられるから常に与謝野晶子もびっくりな乱れ髪だ。

ぐずる三男を抱っこしながら訪れた洗面所で、鏡に映った自分に愕然とすることがある。

ボサボサ頭で分厚いメガネをかけ、ちょっとたらこ唇なその女は、さまよえる落ち武者の霊みたいにみえた。日によっては、ラーメンズの片桐さんにみえることもある。(いや、片桐さん好きです)


そして極めつけは、夫の言葉だった。

「かっかはスマホ中毒だからな〜」

子どもがちょっと遊んでるすきに、スマホをのぞき、ちょっとのつもりが長引いてたときだった。

スマホ中毒…!?

そんなつもりは…いや、ちょっとだけあった。

最近、Twitterやnoteのために、スマホをのぞく時間が多くなってる自覚があった。

もともと文章を書くのが好きだったし、自分の中でモヤモヤしてる形のない感情に、言葉という姿を与えることに喜びを見出してしまったから。

特に今は、外出する機会も、大人とちゃんと話す場も少ないので、社会との接点が少ないのも一因かもしれない。

自分という存在が、これまで以上にこころもとなく感じる。誰かとつながっていたいと思ってしまう。不安な気持ちを、誰かと共有したくなる。


そして、家事と育児は誰にも評価されない。

子どもは日々成長しているけれど、繰り返される地味なルーチン作業はのっぺりとしていて、そのわりにジェットコースター並みの激しさで緊急対応事項が起き、しかもそれが同時多発的なのでアップアップなのに、意識しなければ達成感だって感じにくい。

だからなのか、つい、いいね!スキ!を求めてしまう。

特に自分が何かつぶやいたり、noteを更新した後は頻繁にのぞき、誰か私の言葉を認めてくれるひとはいないかなぁ…と確認作業に追われる。

そんな心理状態のときは特に他のnoterさんが、別次元に輝いてみえるのが、さらに事態を悪化させた。

いや、実際、私が好きなnoterさんは本当にすごくて、自分には思いつかないような切り口だったり、表現力だったり、行動力だったり、果てはカリスマ性だったり…を持ち合わせた方々がわんさかいる。

そんなすごい方々のnoteを読んだり、やりとりさせていただくだけでもありがたいことだというのに、こともあろうかジェラシーなんて感じてしまうちっちゃな自分に嫌気がさしつつも、その確認行為をやめられない。

つるっとなめらかなスマホのボディは魅惑的で、ついつい手が伸びる。

そして、みるたびに罪悪感でますます心がささくれていく。子どもたちにもやさしくできなくなる。

それはまさに、悪・循・環。

まちがいない、中毒だ。


「スマホを新しくしたら?」と提案したのは、IT機器の好きな夫だった。だから、「スマホ中毒」って言われたその瞬間、全然素直になれなかったけど、本当は誰よりもそれを危惧してたのは自分だった。

図星だから、「そんな言い方ひどい!」と反抗し、ぶすくれた。そんな私は、本当に心身ともにおブスだったと思う。


∞∞∞∞∞

だから私は、爪を桜色に染めた。

まだ誰も起きてこない早朝。

控えめにラメの入った桜色のボトルから、つやつやした液体を筆にとり、ゆっくりと爪にのせた。

夏の日差しじゃなくて、コンパクトなUVライトにさらす時間は1回30秒。文明の利器たちに感心しつつ、そんな30秒でさえ、待つ間は落ち着かず、そわそわする自分に驚く。

昔は、普通のネイルに何十分もかけられていられたのに…。

今では、いつ子どもたちが泣いて起きるかが気がかりで、30秒さえとてつもなく長く感じる。

マイペースな子どもたちを「早く早く!」と急かすのが板につきすぎている。

焦る自分に焦る。

のんびりできない自分にがっかりする。

まぁおちつけ、私。


そんな焦燥感が露骨に反映され、はみだし、ムラになったその出来栄えは、お世辞にも上手とはいえないけれど。

三男とのお散歩でこんがり日焼けした指に塗られた桜色は、季節外れにはんなりとして、とても浮いて見えたけれど。

自分のためだけに集中していたほんの15分ほどは、いいね!とかスキ!とか、自分の表現力の乏しさとか、気にせずにいられた。

久しぶりに色気づいた指先の輝きは、新しいスマホの白いつやつやボディのそれと、ちょっとだけ似ていた。

その日、スマホをのぞく代わりに自分の爪をみつめると、桜色の爪がアンテナになって、ちょっとだけ外の世界と自分を繋げてくれてる気がした。

べりっとはがすタイプのネイルは、塗りが甘くてすぐにはがれてしまったけれど、その後の何日か、スマホをいじる時間を減らすように意識してみた。

子どもたちの目の前ではなるべくスマホを触らないようにし、スマホをのぞく時間も決めてみた。

まだまだ完璧にコントロールできてはいないけど、少しずつ、飼いならすことはできそうだ。いや、やってやる…!


∞∞∞∞∞

思えば、私の育休中の目標は

「きちんと向き合う」

だった。これを意識するためにも、Twitterのハンドルネームも「@きちんと向き合う」にしている。

これは、仕事をしているときよりも子どもたちと一緒に過ごせるので、「子どもたちときちんと向き合う」という意味もある。

子どもたちときちんと向き合うために、noteやTwitterも利用していきたいのに、自分の弱さのせいで子どもたちと向き合う時間を減らしてしまっては本末転倒だ。

これは、おおいに反省しなくてはならない。


さらに、「弱い自分自身から逃げずにきちんと向き合う」というのも大きな目的である。

思えば、剣道の試合ではコートの中で1人だった。相手はいても、常に「こわい」「ダメかも」「負けるかも」と考える自分自身との闘いだった。

普段の私は今とそう変わらずぐらぐらしていたけれど、剣道のときだけは「気持ちで負けない」をモットーにしていた。

素の爪のままでも、防具で身を固め竹刀を振っている時だけは、背筋をしゃんと伸ばしておもいきり相手にぶつかっていくことができた。

袴はハイウエストワイドパンツになり、腰に巻くのは胴と垂れじゃなくエルゴの抱っこ紐になった今でも、自分の弱さと向き合うこと、気持ちで負けないことは意識できるはずだ。


だけど、今、爪だけは武装させてほしい。

ちょっとだけ、社会と交信できてる気にさせてほしい。

息子たちも、

「かっかのつめ、なんかかわいい〜!」

と褒めてくれるし、許してほしい。


∞∞∞∞∞

P.S.

このnoteを読み、心優しいあなたは「なんか悶々としてるし、マイミと絡むの控えた方がよさそうかしら…?」とご配慮くださるかもしれません。

でも、その心配はご無用です。

わがままかもしれませんが、どうぞこのnoteのことは取り置き、これまでどおり自然にお付き合いいただけることが最も支えになります。

私自身、みなさんのnoteやツイートにガンガン絡んでいきたい気持ちもやまやまありつつも、不器用でキャパシティがすぐ満杯になってしまい、なかなか即リプできなかったり、タイミングが悪かったりしている現状です。

でも、コメントいただけるのはすごく嬉しいですし、絡んでいただけるのはとても楽しく、大変励みになっていることはまぎれもない事実なのです。

いつもいつも、本当にありがとうございます。

noteでみなさんに会えて幸せです。

今後とも、どうぞ仲良くしてやってください

(最上級の土下座)


〈おわり〉



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