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「ベルリン・天使の詩」③ダミエルとカシエルそれぞれの道

★ダミエルは人間として生きて死ぬことを願った

 ダミエルもカシエルも・・他の天使たちも、傷ついている人々の声を聞くだけの存在だ。何の力もなく永遠のときを生きるだけ。それでも寄り添うだけでも存在する意義はあるのかもしれないが・・・。

 カシエルは、ベルリンの壁が立ちはだかる更地のポツダム広場で彷徨うホメロスの守護天使となったようだ。神から力を奪われ、ただ見守り、聞き、寄り添うだけの守護天使。(もしカシエルが天使を退職したら、ホメロスの秘書になれたのになぁと余計なことを考えるわたしww)

 一方ダミエルは、サーカスで空中ブランコを演じるマリオンを見かけ、心惹かれて楽屋を訪ねる。例のごとくマリオンの心の声を聞くダミエル。

  マリオンがとても美しいということは、ダミエルが心惹かれるきっかけだったと思うが。それだけではないと思う。

 貧しいサーカス団員としての暮らしの中で、前向きに努力し続けるマリオン。
 傷だらけのベルリンの中で、嘆いているだけの大人が多い中で・・・マリオンは、ささやかな夢を一輪の薔薇のように抱えて生きているのだ。
 神から見たら、ちっぽけな虫けらみたいな人間かもしれないけれど・・。

 天使として存在しているときは、世界はモノクロームだ。しかしマリオンを見つめているときには、ふうっと世界が色彩をもつ瞬間がある。おそらくダミエルが人間に近い感覚を味わった瞬間に(マリオンへの恋)。
 しかし天使である限りは、マリオンに触れてもその指先にはなんの感覚もなく、マリオンには気づいてももらえない。


 おそらくダミエルは、声を聞くだけの天使という存在に決別し、マリオンと見つめ合い、言葉を交わし、肌に触れ、苦楽を分かち合う暮らしをしたかったのだろうね。そして、死ぬことも・・・。

 ここでキュンとするのは、マリオンはダミエルの存在、気配が感じられる感性をもっている女性だということ。純真な子どもたちと近い心をもっている女性だということだ。

 カシエルとダミエル。カシエルは守護天使。ダミエルは人間へ・・・。それぞれの選択。

 依願退職とでも言えばいいのかな。ダミエルが人間になった時に世界は色彩をもった
 そしてなんと天から甲冑が降ってきたよ!ウールの(恐らく)重たそうなコートを着ている天使たち。正装は中世の騎士みたいな甲冑と大きな翼だ。翼は自動消滅か・・。そして退職するなら甲冑を返却するところだろうが、まるで退職金代わりのように天から与えられた。人間になったら生活するのに大変だから当座の足しにせよということか(笑)

 ラストシーンはなかなか素敵だった。ラブストーリーとして盛り上がる映画ではなく、美しい映像と音楽、断片的なイメージ、哲学的な思索に満ちたPVみたいな感じだから、ラストでは意表を突かれた感じがする。
 書いてもいいのだろうか?(笑)
 いや・・やめておこうかな。

 とにかく幸せな気持ちになれたことだけ記しておこう。

 購入してあるから、また繰り返して鑑賞するのを楽しみにしたい。