レタパを開けたら猿田彦

先月末約3年勤めた会社を退職した
退職は自分の本意ではなかった
契約社員の厳しさを身にしみて感じた

自分にとって縁のある会社で、人脈も築いてきた
だからこそそこを去るのはしんどかった

その気持ちはおそらく、ほとんどの同僚、上司が察していたであろう
退職日には私が想像していた倍以上の規模でお疲れ様会が開催された
とてもありがたいことだった

退職は自分で決めたことでもあった
この場所に長く入れない現実を受け止め、次のステージに進むために必要な決断だった
だからこそ、お世話になった方々へきちんと挨拶の言葉を伝えようと努めた
感受性が強い私は、そういった場面では涙を流してしまうことが多い
しかし、私ももう30歳だ
涙は流すまいと強く自分を律した

挨拶の言葉を発した後、仲良くしていた同僚が駆け寄って
「よく頑張った!」と声をかけてくれた
涙はこぼれなかったが、震える声から心の涙がドバドバと流れていたのは皆にばれていたであろう

そんな感情溢れる「別れ」をした後、数日間は余韻に浸っていた
しかし現実は生活の中にドバッと厳しくやってくる

そう、住民税の支払、国民保険や社会保険への切替手続き、それに伴うお金の支払…
次の就職先を決めず退職したため、自由な時間は増えたがお金は減る一方だ
焦りの波が少しずつ迫ってくる

支払や諸々の手続きを片付けていると退職先からレターパックが届いていた

中を開けると書類が数枚入っている
雇用保険受給に関する離職票などの書類であった
待っていた書類ではあったので、やっと届いたなと思った
と同時に、書類とは別に小さな袋が入っていた

小さな袋…
取り出してみると猿田彦珈琲のドリップ珈琲だった
おすそ分けですと書かれた可愛い付箋が貼られていた
働いていた部署の上司からだった

久しぶりの上司の字に心が和んだ
そして退職しても尚、気にしてくれる人がいるということ
とてもありがたかった

就活活動をしているが思うようにいかないことが多く、
少し気持ちが落ちている時だった
だからこそ上司の心遣いが心に沁みた

よし、大好きな珈琲を飲んでまた頑張ろう
そう思えた出来事であった

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