見出し画像

日本と海外、人との距離感と助け合い、コミュニティについて

「あのとき知ってたら、もっと助けてあげられたのにね」
と、先日友人が言ってくれたとき、とても嬉しかった。
私がバンクーバーに来て得た、いちばん貴重なものは、この地で出会った人々だ。

私は、1年3ヶ月前にバンクーバーに息子とふたりで来た。当時はコロナ禍の物流混乱が続いており、船便・航空便ともに日本からカナダには送れず、大きな段ボール4個とスーツケース3つで渡航した。さらに、移住支援エージェントを利用しなかったこともあり、生活のセットアップすべてを自分でやる必要があった。IKEAの家具をうまく受け取れず、1週間床に寝袋を敷いて寝て、その後、やっと届いたベッドやソファも組み立てが大変で、10時間もかかったと話したときに、友人がかけてくれたのが、この言葉だ。

未だに私と息子は、快適なベッドとマットレスで眠れることを日々感謝して、車がある日常を幸せに感じ、さらに、最近いただいた枕がとても使い心地がよく、ベーシックな生活環境が日々レベルアップしていることに、二人で感動しながら生活している。最初はベッドもソファも椅子もテーブルもカーテンさえもなかったのだから。

そして、もうすぐクリスマス。去年は大雪でフライトがキャンセルになり、夫と娘がクリスマスに間に合わず、寂しいクリスマスになるかと思った。そうしたら、お世話になっている近所のTさんが、私と息子と、そして私の大学院の友人をご家族のクリスマスディナーに招待してくれた。初めて自家製のターキーというものをいただき、とても温かい気持ちになった。今年も、私が12月25日のフライトで日本に一時帰国すると伝えると、12月24日のディナーに招待してくれた。

実は、海外で暮らすたびに、昔からいろんな人に助けてもらって生きてきた。東京だと、長く住んでいても、ここまで日常的に他人のお世話になることはあまりない。それくらい、今も昔も、異国で暮らすということは大変なのだと思う。

20代前半で暮らしたLAでは、一緒に住んでいた彼氏にふられて家を出ることになったとき、当時仕事を手伝っていた、ファッションメディアコーディネーターのNさんのお家に3週間くらい住ませていただいた。West Hollywoodの素敵なお家に泊めていただき、キッチンでいろんな話を聞けたのが楽しかった。お料理も上手でおしゃれでかっこいい、心から尊敬する女性だ。当時Nさんは50代だったが、私もこんな50代になりたいと今でも思っている。

30代後半にジャカルタに住んでいたとき、帰国前、子ども達と私だけ3ヶ月住む場所が必要になったときは、大学OBである女性の先輩が、ご自身のコンドを3ヶ月賃貸させてくれた。ジャカルタ初の日本人女性駐在員として数十年前にジャカルタに来て、その後現地で会社を設立し独立した方で、めちゃくちゃかっこよかった。

私は海外でいつも、困って、泣き言をいって、いろんな人に助けてもらってきた。いつか助ける側にいきたいとずっと思って、できる限り困っている人がいたら、手を差し伸べたいと思うのだが、自分の環境が落ち着かないせいで、なかなかそっち側にいけない。今住んでいるバンクーバーでも、助けてもらってばかりだ。

「マイノリティの経験をして、人に助けてもらった経験をもつ人は、人に優しくなれる」私はいつもそう思っているのだけれど、それはこうした自分の経験に基づいた気づきだ。

ちょうど先日、PRを支援しているデライト・ベンチャーズで、シリコンバレー起業家の対談イベントレポートを公開した。その中では、日本を飛び出し、シリコンバレーで奮闘する日本人起業家のコミュニティと助け合いについての話が多く出てきた。シェアハウスを運営して、情報交換したり、できる範囲で助け合う、そうしたちょっとしたことで、人は勇気づけられて頑張ろうと思える。心が折れてチャレンジを諦めてしまう人も、こうしたコミュニティがあれば、もう少し頑張れるのではないだろうか。

タイ、マレーシア、インドネシアなど、東南アジアでは、現地での日本企業のプレゼンスが高いこともあり、日本人コミュニティは、北米よりも活発なように感じる。私が今回、留学先として最初に検討していたマレーシアも、Discordの移住者コミュニティがあり、移住前からビザや子どもの学校、仕事関連含めて、多くの情報交換が可能だった。

北米は、良くも悪くも、留学、企業派遣、現地就労、起業、国際結婚と、さまざまな背景の日本人が集まっている。東南アジアよりもビジネスにおいて日本語を話せることの優位性が低いこともあり、留学→現地就労・起業のハードルは、東南アジアより高いと感じる(東南アジアでは、日系の人材エージェントが多く進出していて、日本企業の現地採用も積極的におこなっている。私もジャカルタで日本人・ローカルスタッフともに採用していたので、その辺りは北米と大きく違うと感じる)。

北米では、みんながそれぞれ独力で、仕事を見つけること、ビジネスを作ること、生きることに必死で、かつ、エリアも広いことから、なかなかオープンな助け合いコミュニティは生まれづらかったのかもしれない(もちろん、クローズドのコミュニティは多くある)。現地に溶け込むことを重視して、華僑のように、同じルーツを持つ人同士のコミュニティを重視しなかったのかな。昔はSNSもなかったし、ね。

日本の国際競争力が低下して、海外で起業する・働く・学ぶ、という選択をする人が増える中で、現地での日本人コミュニティの役割は、今まで以上に重要になるのではないかと思う。日本でも、スタートアップエコシステムはコミュニティを通じて、進化しつつある。海外でも、数十年続く、既存のコミュニティではカバーしきれなかったところに、新しいコミュニティが必要なのだろうなと感じる。そしてそれは、新参者や勢いだけの挑戦者、失敗も受け入れる、ある程度オープンなものであることが大切なのだと思う。

これまで助けてもらった方々への感謝をペイフォワードする気持ちで、自分ができることを、これからやっていきたい。


Twitterでは、スタートアップの気になるニュースやカナダMBA留学での日々などをつぶやいています。よかったらのぞいてみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?