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最初の教え、「直感を信じなさい」

突然全く経験のない業界に放り込まれた私は、とにかく仕事を覚えるのに必死だった。5分前に聞いた名前を忘れてしまう43歳の脳との格闘でもあった。

最初の二か月は朝から晩まで働いた。ご飯を食べるのも忘れて働いたので、計らずとも18時間断食をして激やせ&お肌もキレイになった。

夫は「オーナーなんだからスタッフに聞いてはいけない」というが、何もわからないのだから無理だ。決断力もないし、経験のあるスタッフが立派に見えてお伺いを立ててしまう始末。バカにされてもしょうがない。

日本人だし、ホテル業界出身なので、おもてなし精神はある。そこいらのアメリカ人よりはずっと気持ちのいいカスタマーサービスを提供できる。電話の対応だって英語のアクセントはあるが丁寧に対応した。私が出来ることなんてそれくらいだ。

家に帰っても、スタッフに隠れて医療業界の経営を学び、化粧をしながら料理をしながら運転中もトレーニング動画を見続けた。2週間経ってやっと仕事と全体像が理解できた頃、次の試練が待っていた。

スタッフを注意できない。

人生40年程、リーダーという役割は避けて生きてきた。言われたことをやって、お給料をもらって生きていた完全フォロワーだった。突然リーダーを任されたって、立派な役職がついたって、リーダーシップというスキルは自動的にやってこない。

10歳も年下のあるスタッフはすごい。クレーム対応も他のスタッフへの指示も躊躇なく上手で、生まれつきリーダーシップがあるんじゃないかと感心してしまう。私は自分の発言に自信が無く、間違えることを恐れてすぐに決断できない。

日本であれば常識だが、アメリカでは仕事をしながらガムをクチャクチャ噛んでいるスタッフもいる。例の19歳のスタッフが受付でガムを噛んでいる。オーナー夫人の目の前でも悪びれた様子がない。さすがに注意すべきなのだが、私もなかなか言えないという有様だ。

脇の下が汗ばみながら思い切って注意したある日、「メリッサ(ベテラン)もガム噛んでるじゃん」と言い返され終了。翌日もまたガムを噛んでいた。完全に舐められている。夫は私よりも言えないタイプで、夫婦で完全に舐められていた。

我がオフィスがオーナー夫人が助っ人に入るくらい危機的な人材不足であることは誰の目にもわかっていた。スタッフはもちろん、患者さんにも。そんな時に給料交渉をしてくるスタッフが二名。開業後すぐに起こったパンデミック中も必死で従業員を支えた私達の苦労も知らず、恩を仇で返す。

時給を1ドル上げたがそれが不服だったようで、週明け突然の病欠。そして二日後にはテキストで「やめます」と連絡があった。要は月曜日に他の仕事に面接に行き、木曜日から新しい職場で働き始めたわけだ。例の19歳。

このゴタゴタがあった二週間に、夫が採用した60歳のベテランフロントデスクは10日で来なくなった。

こういうことが起こるとスタッフの士気が下がる。二週間前よりも状況は深刻になったが、なんだか、吹っ切れた。夫は人を見る目がないのかもしれない。

そしてすごく重大なことに気が付いたのだ。スタッフの採用に関しては、ひとつの法則が当てはまっていた。

私の直感が100%当たっていたのだ。

過去三年間、私が違和感を感じたスタッフはことごとく外れていた。どんなに夫が絶賛しても違和感のあったスタッフはありえない理由で続かなかったり、夫をひどく苦しめた。

直感のことを少し調べてみた。直感というのはハイヤーセルフからのメッセージで正しい方向に導いてくれるサインらしい。直感は絶対に正しいのだが、ほとんどの人が直感に従えないのは不安や心配など感情に支配されて間違った判断をしてしまうそうだ。

私はスピリチャルに傾倒していなかったが、過去の自分の体験から直感を信じてみることにした。

そして、奇跡が起こった。

たまたま開けたらフェイスブックの地元の医療業界グループで、気になる投稿を見つけた。よくみる類の求人だったのだが、なぜかその投稿が直感的に気になった。翌日には面接に来てくれて、外国人で未経験の彼女を採用するのは掛けだったが、直感は従って採用した。

結果、彼女は金の卵だった

私達が一から教え、お金も援助してレントゲンの資格も取ってもらった。それを心から感謝してくれ、学ぶ姿勢も気持ちよく、彼女の存在がバラバラだったチームをひとつにまとめてくれた。

次の採用も直感で決めた。クリニカルチームの採用だったので、夫の意見を重要視したが、最終的には私が決めた。今のところ、過去にないすごく良いチームとなり、売り上げもどんどん上がっている。

ひとりひとりのエネルギーが同じ方向を向けば、マスターマインドが出来上がる。個人のスキルがどんなに高くてもチームがバラバラだと機能しない。一日8時間以上一緒に過ごすメンバー選びはこんなにも大切だったことを学んだ。

私の成功への最初の気付きは、「直感力を信じる」こと。どんなに頭で理屈で考えてもダメな時はダメなのだ。トライ&エラーだらけの経験から、過去を振り返っても自分の感覚を研ぎ澄ませることが大切だと自信を持って言える。



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