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【日本の音楽を熱く語ろう】番外編 米津玄師

日本のロックを熱く語ろうシリーズ番外編、このお方だけはジャンルの壁をぶち抜いて語りたいというミュージシャン、米津玄師氏。

彼はわたしに15年以上ぶりくらいに新しい音楽を聴く気にさせてくれた。しかもCDまで買ったのだ。
わたしはもう長いこと、今まで愛してきた音楽だけを聴いてきた。新しい音楽、流行りの音楽を全く受け付けなくなってしまっていたのだ。そうするうちに愛したバンドは解散していく。わたしは音楽を聴くことすら少しずつやめようとし始めてきた。

そんなときに彗星の如く現れたのが米津玄師だった。おそらく最初はパプリカだったと思うけど、とにかく歌詞が素晴らしい。語彙があり表現力があり、常人には思いつかないようなフレーズを書く。
わたしがパプリカで最も感激したのは、

喜びを数えたら あなたでいっぱい

なんてフレーズなんだろう。
誰かを好きになるとたしかにそうなんだけど、こんなフレーズは思いつかなくて何故か嬉しくなった。

lemonを聴き、flamingoを聴いた時点でわたしは彼のアルバムを購入することにした。
わたしは本当に大事に思うモノをそういう形でモノに残すタイプだし、そのCDにはライブ版DVDとアートブックが付いていた。
アートブックは米津玄師の画集で、天は二物を与えるというくらい素敵なイラストが描かれていた。
そしてDVDだ。初めて観る米津玄師のライブ。

一曲目 flamingo

呆気に取られた。
この人はライブの方がCDよりも歌がうまいのだ。
かつてこんなヴォーカルがいただろうか?
どう聴いてもうまい。
ちょっとすごくないですか?

米津玄師のアルバムは、全てに於いてわたしの想像を超えてくれた。

【STRAY SHEEP】

STRAY SHEEP

パプリカ
馬と鹿
まちがいさがし
flamingo

全曲通しで聴いて欲しいけど、とりあえず順不同でこの四曲を押したい。
とくに、まちがいさがしは味わい深い曲だと思う。

米津玄師の曲で他によく聴く曲

灰色と青
アイネクライネ
打上花火
pale blue

一番好きな曲はアイネクライネかな?
あの「名前」という言葉が出てくる歌詞ってあるでしょう?
King nuの白日とか。
やっぱり好きな人の名前を呼んだり呼ばれたりって大切なのかもしれないな。分かるような気がする。

消えない悲しみも綻びも
あなたといれば
それでよかったねと笑えるのが
どんなに嬉しいか
目の前の全てがぼやけては
溶けてゆくような
奇跡であふれて足りないや
あたしの名前を呼んでくれた

あなたの名前を呼んでいいかな

かわいらしくてしっかりとした実のある歌詞だと思う。

米津玄師がlemonを出して超メジャーにならなければ、ロック畑のわたしには彼の音楽は届かなかったと思う。テレビもCMもタイアップも知らないわたしには、ネットも見ないから新曲の情報源が全くない。敢えてそうしているのもある。今は、そこを超えて来るような音楽だけを探しているのだと思う。

米津玄師はそこを突破し、パプリカに次ぐlemonを聴かせてくれた。一曲で終わるミュージシャンは多いけど、わたしの元に二曲届くのは間違いなく日本を騒然とさせるクラスのミュージシャンの作品だ。

米津玄師。
わたしはずっと、こういうお方を待っていたのだ。
どんなお方かは、後から話そうと思う。
驚いたことに、彼はロックミュージシャンではなかった。わたしの人生史上、おそらく初めてのロック以外のミュージシャンだと思う。米津玄師はジャンルを超え、国境をも超えた。

わたしが待っていたのは、歌詞に対して常に真剣な姿勢を見せるタイプのミュージシャンだった。

日本のロックバンドにも様々な歌詞を書くタイプのミュージシャンがいるけれど、音ノリを優先させるフレーズが多く、そもそもロックは特に、意味のない単語や言葉を使って書いても構わないのだから、

例えばTHE HIGHLOWSとかのエレキマンだなんて、もはやエレキマンが何者でも構わないくらい無茶苦茶にカッコいい曲だったりする。そしてわたしはもちろん、それらのミュージシャンが歌詞に対して真剣ではないとは思ってない。近頃のロックバンドでは、英語も含めて美しい詩を書くバンドも現れてきているようだ。

しかし、米津玄師の歌詞の世界に直面したときこれだけはロックの世界では無理なのでは、と感じた。もちろんロックにも例外的な曲もある。
だけど、ロックでは全曲通してこの歌詞のクオリティは出せないのではないかと思うのだ。

米津玄師の歌詞についてわたしが評価や評論するのはおこがましいので、あくまでも一ファンとして感じるところを書いてみる。

日本語を正しく美しく使っている。
実はこの時点で落第しているミュージシャンはたくさんいる。

語彙が多く表現に独創性がある。
米津玄師の歌を聴いていると、馴染みのない言葉やどこかで聞いたような単語が出てくると思う。
極端な例だとflamingoなんかはおそらく江戸時代の花魁言葉だと思う。
わたしが好きな灰色と青にこんな歌詞がある

袖丈がおぼつかない夏の終わり

このような語彙があれば、わたしももっと良い文章が書けると思う。語彙は読書と検索で増える。

米津玄師の歌詞のさらに良いところは、嘘がないというところだ。
何故分かるか?
分かるのだ。米津玄師はそういう人間ではないと。

そう思って考えてみたら、世の中の音楽は嘘だらけだと思う。
人間だから、そのときに思ってもいないことを歌うのは仕方がない。
だけど初めから思ってもいないことを作り歌うのは嘘を歌うことだ。
例えば、恋愛なんてくだらないと思いながら歌うミュージシャンのラブソングは嘘っぱちだ。
だけど作品が良ければそれが売れるからいいのだ。

だけど米津玄師は自分が作った歌詞に誠実な人だ。
とにかく真面目な人だと思う。
例えば、まちがいさがしにこんな詩がある。

君じゃなきゃいけないと ただ強く思うだけ

この思い込みは真面目で一途な人の持つものだ。
わたしも自分がそうだから、例えば誰かに想いを寄せているときに他の異性が目に入ることが全くない。たから、恋をすると、貴方しか見てない状態なんだけど、まさにこの歌詞もそんな状態だと思う。

きっと米津玄師さんの恋愛も真面目で一途だろう。
もちろんそうでなくてもプライベートまでいちいち思いこまれるのはご迷惑だろうし構わないけれど。

わたしは特にこの米津玄師については、プライベートを知りたくないと思っている。普段から好きなミュージシャンのプライベートには全く興味がないけれど、米津玄師の場合はインタビューなどでの本人の言葉以外は一切知りたくない。
あくまでも、作品で語って欲しいからだ。

この前うっかりとある曲についての歌詞解釈(個人ブログ)を見てしまい、とても嫌な気分になった。
誰がどう解釈しようと勝手だから、自分の中にその人の持つ先入観をインストールしてしまった自分を反省した。なんだかそれからその曲が真っ直ぐに聴けなくなって、こんなに恐ろしいことなんだと思っている。
わたしは米津玄師と自分だけの世界で彼の作品を聴いていかねばならない。このことは肝に銘じておこう。

とにかく米津玄師の音楽の前にわたしはこれほど常に真面目である。わたしにとって、そんなミュージシャンがこの世にいたとは驚きでもある。

わたしに15年ぶりに新しい音楽をくれ、その後も新曲を楽しみにする喜びを下さった米津玄師さん。

明日映画館で、地球儀を聴いてきます!


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