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#015 大学院に行く理由と選び方--理系各員に捧ぐ

本シリーズは、①勉強頑張ったら選択肢が増える、②理系かつ高成績の方が選択肢は多い、③選択肢が多いと良い会社に入れて幸せになれるというよくあるお話の②まで必死で頑張ったものの、③は半分嘘である。ということに気付いて四苦八苦した僕が、理系が気付かぬうちに罠にハマらないために、考えて損のないだろうトピックを現場の生の体験から書いていくものである。

先日、大学に入ったばかりのとある1年生の方からこんな質問をいただいた。

理系って、大学院に行く人すごく多いですよね。実際何割くらいいるんでしょうか?そもそも大学院って何ですか?あと、今いる大学の大学院に行かず、東大とかに出てくのって何故なんでしょうか?

今回はこの質問に、特に大学院に進む理由や進んだ時のメリットデメリットに、答えるというテーマで書いていきたい。

個人的な意見を先にまとめて言うなら、金払って労働してでも、自分の人生で研究したいという奴は大学院に行け。となる。

この質問を聞いて、たしかに大学院というものは、僕自身も高校時代と今とで、だいぶ認識が変わった存在だなと気付いた。

本稿はいろんな角度から、大学院という存在をササッと見ていこう。本文中で、大学院に進む人のモチベーションを分けている。そのタイプによって、メリットデメリットが異なるので、自分のタイプから見たメリットデメリットを拾っていく感覚で読んでいただけると幸いだ。

理系はどれぐらい大学院に行く?

理系の大学院進学率は、ネットを調べれば文科省の調査から就活サイトの調査から色々出てくる。

これらの調査からも、僕自身の実際の感覚からも、理系は半分はいかないくらいだけど、3割以上くらいは大学院に進学する。と思っておけばそんなにハズレてはないだろう。

進学者は、学士時代に成績優秀だった人が多い。ただ、たぶん世間の想像以上に、成績が良くなかった層からの進学も多い。これは#012にも書いた通り、成績は努力量の影響を大きく受けるからだ。成績が振るわなくても、院試に向けて一定期間だけ本気で勉強すれば、大学院に受かる程度の学力になる頭を持つ人は、割とたくさんいる。

そもそも大学院ってなんなの?

日本の大学院は、人によってはマイナス時給で働く場所。
また、人によっては、自分の興味ある物事を、その道の師匠の下で思う存分探究し、自分だけが知る新たな世界を発見したり創造したりできる場所。

健全なのは、もちろん後者の人ですね。

どうして他大学の院に進むの?

大学院に進む人のモチベーションは、大きく分けて3つある。
①研究をしたい
②就職を有利にしたい
③次の道を決めてないし、行けるから

このすべてのモチベーションの人が、他大学の院に行く理由も持ち得る。

①の人は、自分の深めたい分野、学びたい先生が決まっているから他大学に行くことがある。大学院のメインである研究活動は、研究室ごとに得意な研究テーマを持っている。自分のやりたいことがある人は、そこに行かないと機材やノウハウがないので困るので、今いるところに拘らず、どこへでも自分の決めた道に従って進むことになる。そしてこのタイプの人は、大抵その通りに人生を進める強い人だ。

②の人は、学歴や偏差値の競争が、社会的優位に立つための競争だと信じている人だ。大学院に行って、1番失敗する可能性が高いのもこのタイプ。目的のための手段を間違えて突き進むと、立ち尽くすより間違いが大きくなる。このミスは、情報不足から起こる。大学院がどんな場所か知らないから、②のタイプが生まれるのだ。

③の人は、たぶん1番多い。このタイプの人は、ここからどう振れるか1番わからないタイプでもある。このタイプの場合、私立大学にいる人なら、学費の問題で国公立に移ることがある。

このタイプでも大学院に進めるのか?と疑問を持つかもしれないが、これが案外進める人も多い。
学生が勉強を頑張るのはもちろんだが、大学院も学生がいないと、研究室の存在理由が危うくなることがあるという理由から、入りやすい研究室が存在するというバグがある。らしい。

この辺は、うまい具合に本来の目的から外れたような無駄に見える部分が、社会の曖昧な部分の人間の吸収場所になっている面白さを感じる。こういうバッファ的な場所は、世の中になくてはならない。

大学院生活について

大学院の生活の大部分は、所属する研究室で決定する。研究内容と、何よりそこに所属する人が大切だ。

大学の名前は、一般的な外から見た飾りのようなもの、かつ、大枠の制度を決めるもの、かつ、地理的な場所としての意味しか持たない。

学士からそのまま大学院に進む年頃は、アイデンティティ確立期の終盤にあたる。ここで、下手な偏りがあると、社会に適応できなくなる。だからこそ、研究室選びは非常に重要だ。

実際、数学科などの現実から離れまくった理論世界ばかりで生きた人は、失踪する例も多々あるそうだ。数学科でなくても、退学者などは多い。実際身の回りに何人もいた。

大学院に進学することを少しでも考えたら、するべきこと

大学院は、人で決まる。どんな研究テーマだろうと、その研究室で伸びるかどうかは、ほぼ人にかかっていると言っていい。

だからこそ、大学院進学を少しでも考えたら、その瞬間に大学院という場所を見に行こう。しっかりしたメールでアポイントを取れば、見学させてくれる可能性は高い。
メールの作り方などは、以下の記事が非常によく纏まっていて参考になると思う。

転職・就活のまどサラリーマン
—【研究室訪問】メールで日程調整し、返信でお礼する書き方・例文

見学の際には、自分が起きてから研究室に来て、何か作業をして、帰って寝るまでをイメージできるまで、情報を集める。そのイメージの上で、自分が行く意味があるのか考えるのが大切だ。

具体的には以下のリストを参考に、質問をしたり研究室を見て情報収集するといい。
○朝何時に起きて、研究室に来るのか?
○研究活動は主に何時ごろに何をして、そのほかの活動はどれぐらいあるのか?
○研究室で過ごせるか?臭い、空気感などは不愉快じゃないか?
○研究の進め方は、どんなスタイルか?先生とよく議論する?先輩と進める?学会などの現場で直接鍛えられる?
○共同研究など、純粋な学業面以外の責任や負担は発生するか?
○辛いときに、開けっぴろげになんでも話せそうで、かつ的確にアドバイスをくれる人はいるか?
(思いつき次第随時追加する。)

まとめ

大学院は、研究/講義/雑務/職務(TAなど)と、様々なことをするようになる、まさに社会との接続点的な活動ができる場所だ。

そこでは、学士時代以上に、最低限の社会とのコミュニケーション(書類のやり取りも含む)が求められる。

気をつけて欲しいのは、学士と同じ場所だと思って同じように過ごせてしまうかもしれないが、学士と同じように生きていると社会から不要の存在になるリスクを負ってしまうということだ。名を実より大きくしてしまう。

まとまりのないような感じもするけど、今日はこの辺で。また次回も、よろしくお願いします。

※トップフォトは、ぱくたそさまを利用しています。
ぱくたそ(www.pakutaso.com)

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