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#006 理系は勉強忙しいので。が招く泥沼人生--理系各員に捧ぐ

本シリーズは、①勉強頑張ったら選択肢が増える、②理系かつ高成績の方が選択肢は多い、③選択肢が多いと良い会社に入れて幸せになれるというよくあるお話の②まで必死で頑張ったものの、③は半分嘘である。ということに気付いて四苦八苦した私が、理系が気付かぬうちに罠にハマらないために、考えて損のないトピックを書いていくものである。

今回は理系の学力競争の捉え方について考えてみたい。まず冷静に捉えておきたいこととして、理系学問は賢くないとできないのか?という問いを掘ってみよう。これはかなり私見だが、理系学問と文系学問を分けるものは、学問の対象が含む要素の数だと考えることができる。理系学問は、複雑に要素が絡み合う現象をモデル化して、現象の本質的要素のみから再現性を重視して学問を構築するので、要素が少ない。一方、文系学問は直接間接はあるものの、人間が丸ごと関係している現象を扱うので、考察すべき要素数が多い。この特性から、研究レベルでなければ、理系学問は文系学問に比べて、勉強すればほぼ同じレベル、質の学力になることが予想される。理論が綺麗に纏まっているし、モデル化された問いの答えは必ず一つしかないからだ。つまり、理系は学科を決めた時点で、その学部内での直線上での優位競争が始まると言える。比べて文系は、学部学科を決めても、その成長には多様性がある。

理系の学力競争は泥沼化しやすい。育つ向きが全員一緒なので、人の足を引っ張れば、その分自分が相手に比べて上に伸びやすくなると錯覚するからだ。この競争には勝たねばならぬので、他の活動を諦める人もいる。「サークル何やるの?」と聞くと、「勉強が大変そうなので辞めておこうと思ってます。」と返す新入生は意外と多い。よくいる理系大学生の生活を書いてみよう。講義に間に合うギリギリに起床→スマホ片手に講義を受ける→帰宅→課題を行う→深夜までゲーム→就寝。

この泥沼戦争は、そのまま泥沼就活戦争に突入する。技術屋さんになる人は、知識経験両方バッチリの人が良いに決まっている。飛び抜けた人はすぐに採用される。ただ、悲しいかな、理系はなかなか飛び抜けない。はじめに考えたように、理系はほぼ均質的に育つのだ。「優秀な理系の人」以上の印象をもつ人間はなかなか生まれない。

理系の学力のみの競争を考えると以上のようになる。なんだか似たり寄ったりの人ばかりが、学科内に溢れかえることになりがちだ。この泥沼戦争が起こらないようにするための解決策は、ひとつしかない。学力軸以外の競争を行うこと。つまり、ここまで考えた1次元上の競争から2次元平面でのノルムを伸ばす競争にゲームチェンジすることだ。そのためには、勉強が大変なので。という言い訳をやめなければならない。勉強もやるし、他の活動もやることだ。

昔、留年する人や、成績が振るわない人向けの指導経験が豊富な先生に、彼ら彼女らに共通することは何かと尋ねたことがある。すると、「成績が振るわない学生たちの頑張ったと感じる水準が、教育者側の想定する最低限より低い」と返ってきた。これは厄介だが、真理のようだ。頑張る基準は、なかなか人と比べることが難しいが、だからこそそこで差がつくのだ。

勉強もするし、その他の活動もするためには、かなり頑張らなくてはならない。頑張る基準を上げることを、最初の目標にしよう。ただ、頑張る量は、増やせる量に限りがある。だから、その他の活動は、自分が頑張る意識なくやれてしまうことがいい。しかも、あまり世の中の人が目を付けてないことの方が良い。例えば、数理系学科なのに、土日はフリーマーケットで自作の手芸品を売っています。なんて人がいたらとても面白いと思わないだろうか。

競争は大事だ。競争がないとあらゆるものは成長しない。ただ、競争する場所を選ばないと、勝てなかった時は、あなた自身は勝った枝葉の養分になっただけになってしまう。競争する場所は選べるのだから、あなたの第二軸を作って、メタゲームでうまく競争する方が良い。時にこの二軸が主軸に影響を与えて、相乗効果で自己成長することもある。

スティーブ・ジョブズは、中高生のころヒューレット・パッカードでインターンをしてコンピュータの知識をつけていた。そして大学時代は文化宗教などの学問をして、退学後に出会ったカリグラフィーの講義に感銘を受け、デザイン性に優れたAppleのブランドを生み出した。これも何軸も持っていて、かつその組み合わせが希少な人間だからこそできた芸当だろう。

今回は、理系は勉強大変なのでという言い訳を使うべきじゃないことを、競争というテーマとして書いてみた。理系の勉強は大変だが、第2軸を考える(自覚する)のはきっともっと大変だ。だからこそ早いうちから、時間をとって頭の中を整理した方が良い。

ではまた次回もよろしくお願いします。

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