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イーストトーキョー偏愛譚

イーストトーキョーに居を構えて13年めの初夏がきた。
曳舟10年、観音裏3年の暮らしの中で、(いまだのぼったことのない)スカイツリーが建ち、行きつけの銭湯は閉業、地上を這っていた線路が高架になり、あれほど嫌悪していたランニングの週1習慣化、街も私も変わった。変わるからこそ、好きな景色は増え続ける。
三社祭が止まって3回めの初夏、好きな景色を通した自分の視点を綴っておく。

スカイツリー

鉄骨は好きですか?わたしにとっては唯一無二の愛する対象です。
あれほど無駄なく美しさと機能を両立するものは世の中になく、その組み合わせにより成り立つオブジェクトの最高峰スカイツリー。

この頃は出社前と帰宅時を比べて、スカイツリーの伸びた分を観測するのが日課だった。

銭湯

曳舟と言えば曳舟湯だったが、電車の高架化と共に道路整備が始まり、80年の歴史は急に終わってしまった。その後は寺島浴場が好きだったが、これまた急に訪れたサウナブームでサウナ室に人が増えてから足が遠のき、引っ越した先の旧旭湯(現アクアプレイス旭)を現在の常湯にしている。
常湯って言う?言わないね。by.アクアプレイスのサウナでたまに一緒になるマダム。

曳舟湯の煙突はもうない。お豆腐屋さんもなくなってしまった。道路は広くきれいになった。

狭い道

しゃれた路地でもない、ただの狭い道がたくさんある。谷根千や清澄白河になるとしゃれた路地なんだろうが、同じ東でももっと生活というか地べたの匂い。東京大空襲を免れた結果の戦前からの狭い道。ただ最近は京島の辺りも古い建物が更地となり道が拡張されているので、そろそろ普通の道になってしまうのかもしれない。

タイルや石組みのこだわりが食事のボリュームにも反映されている。

商店街の選曲

こないだキラキラ橘商店街でPerfumeのメドレーが流れていて、つい踊りながら歩いたらすれ違う子どもに笑われた。ひさご通り商店街はストリングス強めのTHE クラシックが好きで、たまにフルーツパーラーゴトーさんに列をなす観光客が、ふと聴こえる運命やマーラーの交響曲に「この音楽何」と怪訝な顔をする。千束通り商店街はサティやピアノ曲が多く、小学生の給食時間を思い出す渚のアデリーヌの出番も多い。

鳩の街のこの床屋さんの看板はいつもいいなぁと思う。

夜の静けさ

夜は静かだ。昼間は交通量の多い国道から車が消え、住宅地だから必然的にそうなるというのもあるんだろう。
向島や観音裏の料亭の前にずらりとタクシーや黒塗りのセダンが並ぶと、師走だなぁとしみじみする。あるいは深夜以降にバーの戸を開けると、静かで冷たい路上へ中の灯りと人の気配と会話が染み出していくのがいい。

外のロゴのイメージで戸を開けるとすごくギャップを感じるお店もある。

煽り運転する老人たち(自転車)

日中のロック座辺りや商店街は基本的に歩行者優先だが、老人たちにそんなことは関係ない。我が道をふさぐ者には容赦なくベルを鳴らし、道をあけさせる。わりに、よくそんな遅いスピードで自転車こいでこけないなぁと感心するスピードのなさなので、道をあけさせながらまた抜かされるまでが様式美なのだ。

あのゆっくりさが安全運転の秘訣なのかも。

多すぎる電線

清澄や門仲はそうでもない印象だが、京島や向島、観音裏、西浅草、東浅草、清川辺りは電線が多い気がする。
地中に電柱を埋めて景観に配慮しました、みたいな傾向もあるが、ここはイーストトーキョー的景観として残ってほしい。『木村伊兵衛の昭和』に写されているのとそう変わらない電線の数は誇りだ!

ここのカツカレーは本当においしい。ただしもうあの量を食べられない気がする。

植木鉢の群れ

手入れされているかされていないかが非常に微妙な植木鉢も多く、特にそういう群れは油断すると道へ侵食してくる。特に植物たちが勢いを増す夏は要注意で、自由を謳歌する緑に歩行範囲が限定されることもある。
知らない植物が植わっている時に話しかけると怖そうなオババとも話が弾むが、決して言ってはならない一言は「雑草かと思いました。」

植木鉢から飛び出して路上で生活し始める植物もいる。

お稽古帰りの芸姑さん

がっつりお化粧はしていないもののちゃんと着付けて髪を結った芸姑さんは、たいていお稽古帰りだ。歩きスマホの人が9割の中、うなじから背筋がすらりと伸びて優雅に前を見て歩く姿は本当に美しい。
そういや芸姑さんは香りという点では控えめ、逆にお相撲さんの椿油の香りは電車に乗った瞬間この車両にいるなとわかるくらいなので、それはそれでまた好きな瞬間だ。

香りといえばこの辺のお蕎麦屋さん常備のやげん堀の七味。爽辛がいちばん好き。

オレンジの灯りと油の匂いのお肉屋さん

お肉屋さんの店頭のお惣菜が好きだ。家におかずは用意できているのに、ついハムカツやつくね串を買ってしまうのはなぜなのか。そして油の匂いで何となく勢いづいて多めにお願いしてしまう謎の現象。お肉屋さんは魔力を持つ。

盆踊り、今年は復活してほしいなぁ。


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