婚活マエストロ 宮島未奈
『成瀬は天下を取りにいく』の宮島未奈さんの新刊です。
読み易い心地の好い文章に、すっかり魅了されていますね。
婚活マエストロ
ん?文藝春秋社だっけ?
そう、"成瀬"は新潮社でした。
『別冊文藝春秋』誌の、連載作品だった模様ですね。
お話は6話に分かれていまして、作中時間としては僅か3ヶ月弱の物語でありました。
静岡県浜松市在住の主人公である猪名川健人は、在宅Web(炬燵記事?)ライターであります。
大学入学以来21年間住み続けている、マンション大家の推薦で、婚活会社の紹介記事を請け負う事になりました。
つまりは、猪名川も単身者であります。
浜松市がその舞台で、裏表紙には琵琶湖の"ミシガン"が描かれていたので、軽く驚いてしまいました。(結局、出て来ます)
兎も角、『婚活マエストロ』が大活躍する物語ではありませんし、何ならマエストロでは無くマエストラらしいです。(女性なので)
無論、巨匠と呼ばれるだけあって、とても有能であります。
大家を始め、個性的な登場人物達も振れ幅が広くて、とても魅力的な面々でありましたし、何とも優しい世界でもありました。
何でもかんでも、活(動)を付ければ良いと言うものでも無いかと思いますが、"婚活"もすっかり市民権を得た言葉であるのかも知れません。
個人的には、もうそう言った年齢ではありませんし、最早願望すらもありませんから、未知の世界を知る面白さみたいなところもありましたね。
猪名川も、当初は特別強い結婚願望がある訳では無さそうでしたが(諦めとは少し違う客観的自己分析)、取材の為の"パーティー体験参加"から始まって、バスツアーに参加したり、婚活アプリを始めたりと、明らかな心境の変化が見て取れました。
ミイラ取りがミイラになる云々です。
婚活マエストロとの出会いが、全てだったとも言えます。
そもそもが、在宅とは言えライターを生業としている訳で、恐らく一般企業に就職していれば、普通に結婚して子供が居てもおかしくない感じなんですよね。
出会いが無いと言うのはあったにせよ、やはり巡り合わせやタイミングと言うものはある筈ですし、"婚活"が一般的に成る事は悪くないのでしょう。
但し、婚活とは言いつつ個々人の濃淡が間違い無くある様ですし、悪意を持つ人間が紛れ込んでいたりする事もあり、それこそ巡り合わせとタイミングなのかも知れません。
虎穴に入らずんば虎子を得ず、なのです。
違うか。
(了)