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夏目漱石「私の個人主義」は私がキャリアコンサルティングで目指したい世界

多様性の尊重、は私が人生で大事にしたいテーマでもあるのですが、これについて非常にわかりやすく書かれていて、かつ心にズキュンと来る推薦図書がこの「私の個人主義」です。

多様な生き方や価値観を尊重すべきだという流れができてきた現代。ただ日本においてはまだ過渡期にあると思いますから(ジェンダーギャップ指数も121位でしたね)、ぜひ読んでいただきたいと思います。

●第一遍:他人本位と自己本位

●第二編:権力や金力の恐ろしさ

●まとめ

●私が実現したいこと

という構成で紹介しますね。


●第一遍:他人本位と自己本位

書かれている内容は講演で語られたものだったのですが、この講演が行われたのは1914年(大正3年)、お分かりの通り、「西洋の良いというものは良い」という世間の風潮がありました。
漱石はイギリスに留学し英文学を学びましたね。
やはりその当時には、「西洋文学に関して西洋人の評を読み、そのままひけらかすと誉められる」という現象があったそうです。そして漱石自身も同じ経験をします。漱石はこれを「他人本位」と呼びますが、他人本位な状態でいくら誉められても全く満足感にはつながらない。そんな苦悩が語られています。
そこで、「他人本位」ではなく「自己本位」が大事なのだと気づいたのです。
もし英文学の本場の批評家と意見が矛盾すれば気が引ける…。でも、その矛盾を説明してみよう。私は私の意見を曲げてはならない!
この「自己本位」に気づいた時、不安が消えたそうです。

「自己本位」とは平たく言うと、自分自身の意見を持つことなのですね。

その時の気持ちをこのように表現しています。

私はこの自己本位という言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました。(中略)いままで茫然と自失していた私に、ここに立って、この道からこう行かなければならないと指図をしてくれたものは実にこの自我本位の四字なのであります。


●第二編:権力や金力の恐ろしさ

実はこれは学習院大学での講演でした。
そのことから、ここの生徒が世間へ出れば、貧民が世の中に立った時よりも「権力」や「金力」が使えるだろうと話します。

自己本位は大事だが、当然他人のそれも尊重するのが当然の理屈。

しかしながら漱石は、この権力や金力を、

権力:自分の個性を他人の頭の上に無理矢理圧し付ける道具
金力:自分の個性を拡張するために、他人の上に誘惑の道具として使用し得る重宝なもの

と指摘します。

特に金力についてはこんな恐ろしい描写をしています。

それを振り蒔いて、人間の徳義心を買い占める、すなわちその人の魂を堕落させる道具になる

だからこそ、ここの生徒のような方はこれを理解して、自分の持つ権力や金力がどう使われるかを常に考えなければならないと語ります。

(…政治家は出馬前にこれを読むことを義務付けてほしい!!)


●まとめ

・他人がいいと言うからいい、というのではなく、自分自身の気持ち、すなわち個性を認めて尊重していい。
・しかしそういう自分の個性を尊重するように、他人に対してもその個性を認めて尊重するのが当然の理屈である。
・権力は金力は、自分の個性を他人に押し付けたり、誘導する道具になってしまう。すなわち、他の人よりよけいに権力や金力を持つものは、その責任を理解していなければならない。

これが、漱石の考える「私の個人主義」なのですね。


●私が実現したいこと

このように、皆さんの「個人主義」を見つけるお手伝いをすることが、私がキャリアコンサルティングで実現したいことです。

もう一度引用します。

私はこの自己本位という言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました。(中略)いままで茫然と自失していた私に、ここに立って、この道からこう行かなければならないと指図をしてくれたものは実にこの自我本位の四字なのであります。

この「自己本位」を自分の手に握ってほしい。
そのためには、苦い経験も楽しい経験も、コンプレックスも、自分を形作るものとして肯定する。人がこうだから…ではなく、自分の思うところに潔く向き合ってみる。その作業は辛かったりします。だから伴走するのです。そしてこれまでのキャリア(人生)を前向きに捉え、今後のキャリアを考えていく。そんなお手伝いができたらと思っています。

『「キャリア」って何?』の中で、キャリアは単に仕事という意味合いではなく、人生まるごとの経歴なんだと書きました。

漱石はこの講演の中でこんなことも言っています。

まずは、自分の個性が発揮できるような場所や、自分に合う仕事を発見しなければ一生の不幸である。


ここでいう「仕事」とはきっと狭義の仕事ではないでしょう。もちろん、好きを仕事にできて、かつそれで生活していければ超幸せですが、生活するための「仕事」と、「ライフワーク」的なものが別であってもいいじゃないですか。とにかく、他人がこうだから、世間がこうだから、ではなく、自分のやりたいことを見つけて取り組むことは幸せだよということだと思います。

私自身も、小さな頃から同調圧力が嫌で、自分の思う方向に素直に進んできました。女だからこうしたら、という声も無視していましたし、リクルートスーツも着るのやめましたしね。そんな私でも、大学在学中、「専門性の高い大学に進んだにも関わらず違う道に行きたい自分」を認めきれず、苦しんだりしました。それは、「みんなこう進むのに自分は違うんだ」という、ここでいう「自己本位」でいられなかった中での苦悩だったと思います。

自分は自分。でも他人も他人。自分を認め、他人も認め、多様性を尊重できればきっと皆が生きやすくて、より平和な世になるんじゃないかな、と思う推薦図書の紹介でした。

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