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外国人として生きること

パリで1番美味しいバゲットを決める、毎年恒例のコンテスト「La meilleure baguette de Paris」。
長さや重さ、塩分量など細かい規定をクリアした100本以上のバゲットがパリ中のパン屋さんから集まるこのコンテスト。

審査内容は味、香り、形、焼き加減、見ためなど細かく、優勝者に贈られるのは賞金と大統領官邸エリゼ宮の公式パン職人になり、パンを1年間納品するという栄誉。
パリの人はもちろん、世界中が注目するこのコンテストで優勝や入賞をすると翌日から店前にできる、興味津々なお客さんの長い行列。

2023年の最優秀バゲット賞を獲得したのはパリ20区にお店のある、スリランカ出身のパン屋さん。
スリランカというフランスとは食文化の違う国から来て、パン作りを一から学び、言葉の壁とかビザとか色々大変な事があったはずだけど、想像を絶する努力でそれを乗り越えて最優秀賞を勝ち取ったなんて本当にすごいな、というのが最初にニュースで見た時の私の感想。

この結果が発表されたのは5月なのだけど、数ヶ月経った今もこの件について時々考えるのは、このコンテスト結果に対する感想を街角で聞いたインタビューや、SNSに書かれていた様々な意見が私にとって印象的だったから。

彼の受賞を褒めるコメントが大多数、そしてもちろんある程度の数の、人種差別だったり保守的な意見があったのも事実だけれど、それは想定内。

私が気になったのは「何年もフランスに住んでいて、言葉や文化を学び、仕事を覚えて、この国に馴染んでいるんだから、わざわざスリランカ出身であることを報道で言わなくていいし、外国人扱いするべきじゃない」という意見が少なくなかったこと。

スリランカ出身であることは彼のアイデンティティーのひとつであるし、逆にあえて伏せる方が不自然な気がすると私は思い、心に軽く残った違和感。

例えば、私が長くパリに住んでいると言うと「じゃあもうすっかりフランス人ですね」と(フランス人に限らず色々な国籍の人から)言われる事が多く、もちろん悪気は無く、むしろポジティブなニュアンスで言われるのだけど、私はフランス人じゃないし、そこを目指しているわけではないのだけど、、、と思うことがしばしば。

今年でパリに来て19年が経ち、これから始まる20年目。
これを機に、「外国人として生きること」について改めて考えています。

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