死とグリーフ
個人的な話から始めます。今年に入り、私は二人の馴染みある人を亡くしました。一人は祖母。もう一人は大学時代の先生。
それぞれの訃報を聞いたとき、私の体はショックで固まったけれど、心臓だけはいつもより強く速く鼓動しているのが感じられて、脳内では「あぁ、人の死ってこんな形で訪れるんだ」と冷静に情報処理が進んでいたことを覚えています。
そして先週のこと
安倍晋三氏が亡くなりました。もちろん個人的な知り合いではないけれど、そんな私でさえショックは大きい。あらゆる媒体で映像が流れ、最新情報が分単位で報じられ、日本中がこのニュース一色になっています。
ご遺族や関係者に限らず、誰にも予想できない「死」という出来事に触れ、動揺したり、深い悲しみを感じたり、ことばにならないほどのショックを受けたりしている人もいることでしょう。
グリーフ(grief)とは
タイトルにも書いたグリーフとは、大切な対象を失くした時に経験する、深い悲しみや悲嘆のこと。
たとえば、身近な人やペットとのお別れの時、病気や事故によって体の一部を損傷した時。関係性、役割、能力といった、目に見えないけれど自分にとって大事なものを失った時。私たちは深い悲しみと落ち込みを経験します。
元気に活躍していた人が前触れもなくこの世を去った時、長い闘病や介護の末に誰かが亡くなった時、その他あらゆる喪失を経験した時、グリーフは誰にでも起こる反応です。
死別による悲嘆反応
中でも死別による悲嘆反応は、数多くの研究の結果、感情面では多くの文化や個人において共通するプロセスと言われています。残された人々に起こる代表的なグリーフは、次のようなもの。
最初に、強い感情の嵐の中を行きつ戻りつして揺さぶられる時期があります。それから静かに考え込んだり、思い出を振り返ったりしながら、一般的には数ヶ月間かけて死別を受け容れていきます。
(参考までに… 死別による悲嘆が長期にわたる場合について、世界保健機関WHOは国際疾病分類ICD-11に prolonged grief disorder という概念を導入しました。日本語では 遷延性悲嘆症 と訳されています。)
大切な誰かを亡くした人へ
心からお悔やみを申し上げます。
大切な方のご冥福をお祈りいたします。
あなたのこころの痛みを今すぐ取り除くことはできないし、あなたがそれを望んでいるとも思いません。ただ、亡くなった方のことを思う気持ちを大切にすること、誰かと一緒にいること、ゆっくり話をすることが、あなたの助けになるかもしれない。
私がこれを書いているのは、ことばにならない痛みを抱えている人に、どうにかして寄り添えないかと思ったからです。
今まさに混乱の中にある人もいるでしょう。この先、数時間、数日間、数週間が経って、周りの人が回復していって、自分だけ取り残されたと感じることもあるでしょう。
悲嘆反応のプロセスは、人によってそのペースが異なるものです。あなたのペースで、あなたの気持ちを大切にして過ごしてください。
死にたい気持ちがある人へ
いつでも相談に来てください。
たった一人で、疲れ切っていませんか?
こんな世の中では、生きているのが苦しいかもしれない。あなたの苦しい気持ちを聞かせてほしい。あなたの中で巻き起こっている混乱や、圧倒されてことばにもならない感覚、そして積もり積もった疲弊感を見過ごさないであげてください。
あなたのペースを大切にして、まずは今あなたに必要なことを考えましょう。これからのこと、夢も希望もないかもしれないけれど、やり取りをする中で一緒に考えましょう。
今日も読んでくれてありがとう。
それではまた。
岸原麻衣
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