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絶望ベスト映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」

鬱映画だとは聞いていたので、覚悟を決めて見ましたがやっぱり見終わったあとはかなりダメージを受けました。

見終わった後のこの鬱々した気持ち、振り払おうにも心にしがみついてきて離れないし、忘れようにも忘れられない。もう見たくないのに、何度も何度も見たい。
こんなにダメージを受けたのに、私のベスト映画にランクインされたことは間違いないでしょう。
まさに初めての体験でした。

同じく絶望映画といわれる「セブン」とはまた違う味の絶望映画でした。
「セブン」が突き落とされる絶望だとしたら、「ダンサーインザダーク」はじわじわ絞め殺される絶望。

ずっと手ブレの多い手持ちカメラに細切れのカットで、ドキュメンタリー調に撮られているので、それが常に不穏で、気持ちが悪くて…(ちょっと酔いました)

セルマの現実逃避であるミュージカルがはじまると、映像が安定し、色彩が鮮やかになり、セルマの目が輝き出すので、見ていて現実との対比を感じさせられすぎて、楽しいシーンなのに心は削り取られました。

セルマにとっても、現実世界は問題だらけでぐらぐらしていて生きづらい世界で、妄想世界のミュージカルだけが嫌なことのないきらきらした世界なんだろうとわかりました。

どんどん目が見えなくなっていく過程と、それに比例してどんどん悪くなっていく状況が、見ていて辛すぎました。

あの泥棒警官は許せないけど、それ以外のセルマの周りにいた人たちはみんないい人だったのに、それでも止められないんだな、どうしようもないんだな、とそこも絶望ポイントでした。周りも全員悪い人ばかりだったらどこにも希望はないけれど、周りにいい人がいるからこそ、「だれも救えない」という状況がより絶望を際立たせているなと思います。

1番心にぐさっときた場面は、失明するとわかっていてどうして子どもを産んだ?と聞かれて「赤ちゃんを抱きたかったの」と答えるシーンです。
ここ本当に涙をこらえるのに必死でした。

他の人の感想で「そんなのエゴだ、そんな理由で産むな」っていうのを見たんですが、私にとってはそんなにばっさり切り捨てられるシーンではありませんでした。

セルマは自分のエゴだということをわかっているからこそ、産むことを決めた瞬間から息子の目のためだけに生きてきたんですよね。
他は何も望まず、盲目的に息子の目のことだけを考えて生きてきたからこそ、周りに助けも求められず、他の選択肢も考えられず、こんな結末になったんだろうなと思います。

人生って目標があるのはいいことですが、それしかない、と盲目的になってしまうのはよくないなと思いましたが、じゃあセルマはどうしたらよかったか?と考えても、それは答えが出そうにありません。だってこんなのあまりに救いがなさすぎる…

もうしばらくはこの映画の余韻から抜け出せなさそうなので、これを機にはじめてビョークの曲を聴いてみようかと思います!

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