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インフレ抑制法とは


日本メーカー、EV電池材を北米生産

日本の素材メーカーが北米でEV向け電池素材の増産に動く。三菱ケミカルグループは26年までに北米で新工場を設ける。脱中国依存に向けて、北米でのEV供給網構築を促すインフレ抑制法(IRA)が米国で成立。電池素材で中国勢に出遅れる日本勢が巻き返しを狙う。

米インフレ抑制法ではEVの購入者は最大7500ドル(約110万円)の税控除を受けられる。電池材料の一定割合を米か米と自由貿易協定(FTA)を結ぶ国から調達するなど、税控除には複数の条件がある。

インフレ抑制法とは

インフレ抑制法(Inflation Reduction Act、IRA)とは、気候変動対策などに4300億ドル(約58兆円)規模を充てる法律だ。EVの普及促進策では新車(EVやプラグインハイブリッド車)を購入すると、購入者は最大7500ドル(約100万円)の税控除を受けられる。

EVの電池に使うリチウムなどの重要鉱物の一定割合を米か米と自由貿易協定(FTA)を結ぶ国から調達することなど、税控除には複数の条件がある。

2023年4月18日から適用となったが、ガイダンスではその条件が大幅に修正され、極めて厳しいものとなった。北米でEVの最終組み立てを行うだけでなく、車載電池(バッテリー)の部品の一定割合を北米で造ったり、重要鉱物の一定割合を米国や米国が自由貿易協定(FTA)を結ぶ国などから調達したりする必要がある。これにより、韓国の現代自動車グループや起亜自動車、日産自動車が北米で生産するEV「リーフ」は対象外となった。

動きの速い韓国

満額の補助金を得るためには材料や部品でも北米生産を求めており、電池や電池材料メーカーがこぞって北米に工場を建設している。

中でも韓国企業の動きは速い
車載電池で中国寧徳時代新能源科技(CATL)に次ぐ2位の韓国LGエネルギーソリューションは米ゼネラル・モーターズ(GM)やホンダ、欧州ステランティス、現代自との合弁などで北米に計8カ所の電池工場を稼働・建設する。サムスンSDIもステランティスやGMと合弁工場を建設中だ。

さらに電池生産拡大を見越して材料メーカーの進出も始まった。LGエネの親会社のLG化学はテネシー州で30億ドルを投じて正極材工場を建設。鉄鋼大手ポスコホールディングスは電池材料子会社とGMの合弁の形でカナダに材料工場を24年に稼働させる。

米政権の優遇策を号砲として、韓国の電池・電池材料メーカーが北米になだれ込み、米国企業とともに電池供給網を築く構図となっている。

ただ、後発のSKは焦るあまりに何度もつまずいてきた。21年には、LGに営業秘密の侵害で訴えられた係争でSK側が2兆ウォン(約2200億円)の和解金を支払った。SKがLGの営業や技術の担当者を引き抜いたことで、結果的に巨額の投資資金を失った。

さらに23年には盟友フォードとトルコで進めてきた合弁工場の建設プロジェクトをLGに奪われた。証券アナリストによると、SKオンは電池生産の歩留まり(良品率)向上に苦戦しており、安定供給への懸念からフォードがLGに乗り換えたという。

こうした逆境でも、SKグループ総帥の崔泰源(チェ・テウォン)会長は車載電池を成長動力と位置づける。崔氏は「グループ全体を見渡せば、まだ旧来型のビジネスが多い。持続成長のためには事業構成の抜本的な変化が必要だ」と話し、新事業を軌道に乗せるために多額の資金を投じてきた。

今日は「インフレ抑制法」について深堀りしてみた。韓国勢の台頭が進んでいるが、今後、日本企業の巻き返しなるか注視したい。

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