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エレクトリックレディスタジオ

 「このバッズが、本当に、すごいんだよ」

と、かなりスモーキーな部屋の中、漆黒の肌に眼球の白が輝く小柄な男性がボソボソっと話した。小さなアクリルの立方体の箱の中からそれを取り出して、丁寧に巻いている彼がジェイディラ。一緒のソファに座っているのはスラムヴィレッジだった。とにかく笑顔が可愛いジェイディー。とても紳士的で優しくおもてなししてくれた。何を話したのかはもう忘れてしまったけれど、とにかくドリーミングな時間だったのは間違いない。全く怖くはなかった。地下の閉塞された空間のはずなのに、そこはまるで宇宙のようにクリエイティビティが広がって本当に居心地が良かった。

 エレクトリックレディスタジオは憧れの場所。その当時はソウルクエリアンズが使っていたこともあり、見学できてかなり興奮した。スタジオに入った瞬間から、ジミヘンの魂が感じられた。廊下に描かれていた絵もその当時にタイムスリップした気分になる。インスピレーションがどんどん湧いてきて、ここで録音できたら絶対に良い歌が録れるだろうなと容易に想像できた。

 違う部屋ではコモンがレコーディングしていた。休憩中でイヴといちゃついていた気がする。確かにレコーディング中に知らない日本人のガキに来られたらイラつくだろうが、塩対応だった。それでもめげずにファーストから全部アルバムを持っていて、とにかくファンだから会えて光栄だと挨拶したら、急に優しくなって写真も撮ってくれた。ファンには優しくするらしい。最後はボーカルブースにまで入らせてもらえて、マイクスタンドの足元に手書きのリリックノートを発見して、心の中で大興奮していた。名曲はこうやって作られていくのかと本当に大感激の嵐だった。憧れのソウルクエリアンズの本拠地に自分が居るなんて信じられないくらい夢のようだった。

 それから何年か経過しジェイディーが病で亡くなった。その後ジャジースポートから彼の曲で歌わないかと提案があり録音した曲が "I try" だ。いつかジェイディーの曲で歌いたいと夢見ていたがもう叶わないと思っていただけに、このような形で叶うなんて彼との縁を感じずにはいられない。とても大切な曲になった。

 最後に、このような貴重な機会を与えてくれた魂の姉、ZOOCOさんに感謝をして終わりたい。(ジェイディーが「ズーコォー!」とメロメロな顔をしてハグするくらい本当に愛に溢れた魅力的な女性なのです。)

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