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4. 「復讐もほどほどにね」っていう3本

リベンジっていう単語が日本語になって久しい今日この頃。あの単語の美しいところは(あくまでも日本語としての使われ方ですが)、「至らなかった自分を越えていく」みたいな、ベクトルがあくまでも自己研鑽に向いているところだと思うわけです。もう一回チャレンジだあ!みたいな、あっけらかんとクリアな感じ。でもそれが「自分を痛めつけた相手を貶める事」に主眼がいくと、”復讐”っていう単語の方がしっくりくる空気をおびてくるわけで、あのスターウォーズも「ジェダイの復讐」から「帰還」に邦題を後出しじゃんけんで変えちゃったくらい、不穏当な単語なわけです。それだっていうのに、あるプロジェクトを社外で一緒にやっているA氏が、ろくでもないじいさんにいちゃもんつけられて自分の企画がボツになったとかどうとか。「絶対復讐してやるんです」っていってはばからないので、この3本を見て、「復讐はろくなもんじゃない」と思ってもらいたく、そんなセレクトです。

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告白

2010年公開
監督:中島哲也
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ある中学校のクラスで起こる、憎悪と復讐のお話。

基本的に、登場人物全員がずれていて狂気じみている。でもきっとそれは、彼らが極端で非現実的な人物として仮想されているのではなくて、人が誰しも持っている感情や心のゆがみを、極端に強調、歪曲させた像であって。つまり、みんな一人の人間の中に飼い得る性格たちな気がふとしました。1年B組が、みんなの中にいるような。基本、救いはないです。答えとか、伝えたいメッセージとかは、かなり投げっぱなしにされるので、結構人によっては観後、グルグルするかも知れませんけど、それこそが狙いのような。子供って怖いね。リリィシュシュを少し思い出した。 この復讐からの学びは、「やってるうちのそれ自体が楽しくなっちゃうのが復讐の恐ろしさ」ですね。

レヴェナント:蘇えりし者

2016年公開
監督:アレハンドロ・イニャリトゥ
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アメリカ開拓時代に毛皮を狩りつつ進む一行を、原住民が襲撃することから始まるサバイバル劇。「死なない」っていうことの尊さというか、しぶとさというか、ひたすらにそういう2時間強。「生きるって美しくて素晴らしい!」とか安易に善なるメッセージに昇華したくなるくらいの絶景が後ろでは終始展開されるのだけど、全部苦痛でしかない悲惨な状況で、そんなポジティブなことはいいから、何しろ「死なない」。死ななければつながる、みたいなメッセージを感じました。あと全然関係ないんだけど、監督はじめとした制作陣と、レオさまはじめとした役者のすさまじい信頼関係も感じたわけです。極寒の川を流されるシーンとか、レオさまが「ふざけんな」って言っちゃえば強要できないようなトンデモナイ撮影なわけで、そこはもう労使とかそういうことじゃない仕事に対するプライドと運命共同感だなあと。突き抜けたものを見せられて面食らったような、そんな壮絶な話でした。しっかし、ほんとに死なないw この復讐からの学びは、ってとこでしょうか。「結局、あとには何も残らないのが復讐の業」ってとこでしょうか。

許されざる者

1992年公開
監督:クリント・イーストウッド
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犯罪から足を洗った伝説的なアウトローが、子供のために再び賞金稼ぎに乗り出していくお話。人の業のお話なんでしょうねこれは。復讐心が復讐心を呼び、連鎖していく。安易な善悪は描かれていなくて、そこに描いたのは、「誰かが誰かを憎む」ということの業の深さと、その憎しみは復讐で果たして本当に昇華されるのかという投げかけ。もうひとつは、「その人はその人の業をずっと背負い続けて生きていく」という、本質的な人間の生き様への問いかけでしょうか。過去の狼藉への贖罪として保安官を務めるリトルビル。世間の蔑みに反発するかのように賞金をかける娼婦たち。そして、ラストシーンで過去の悪事の日々に駆られ戻るマニー。過去の螺旋から表面上は脱することができても、そのときの生き様やその質感からは逃れられない。「許されざるもの」とは、他者に対して許しがたき憎しみを持つ人々と、自分の過去を許せずにどこかで抱え生きていく人々の、おそらくは、ダブルミーニングなんでしょねきっと。この復讐からの学びは、「復讐は、心のなかで尾を引いて一生終わらない」っていう重い話かなあ。

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復讐の本質は、「そんなにむかつくやつに、結局そんなに労力かけちゃって、もっと自分を大事にしようよ」ってことなんだと思うわけです。復讐かなってすっきり爽快!みたいな作品はほぼないわけで。ただ、どうしても許せない存在が自分の視界でのうのうと生きていること自体、精神衛生上よくないっていうそこまでの話なのであれば、除去するつらさと復讐のつらさの天秤の話なのかなあ、なんて。だからA氏、そんなたまにしか合わないじいさんに「復讐」なんて単語使っちゃいかんよ、っていう、今回のTHREE FOR YOUでした。


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