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51. 息子と一緒に旅に出たくなる映画3選

年間100本映画を観ることを自らに課して11年目のわたくしが、映画初心者のために「なりたい気持ちで映画セレクト」する企画、THREE FOR YOU。51回目のお題は、昨年お子さんが生まれ仕事に育児に大変真っ盛りなSさんから、その大変さの向こうにあるはずの楽しみを映画で見つけて欲しいこんなお題。

何週先でも良いのでリクエストですー。
①息子と一緒に旅に出たくなる映画
②息子が10歳になった時に一緒に見たい映画
どちらかやりやすい方でお願いしますー。

二ついただいたので、二つともやらせていただきます!今回は①の「旅に出たくなる」の方から。息子と一緒だろうがそうじゃなかろうが、こんな1年間を過ごしているとどこか遠くに行きたくってしょうがないですが、無論大事なのは「息子と」ってとこ。子供と旅に出ることの本質とはなんなのか、考えて選んでいたら結果として旅の映画はそんなに入ってこなかったんですが、3本選んでみました。

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えんとつ町のプペル

2020年公開
監督 : 廣田裕介
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プペル

空の見えない煙の街で、父親を失った少年と、正体不明のゴミ人間が出会うお話。直感は大事にしたほうがいいという物語。「自分の信じることを最後まで信じろ」というのはまあその通りなんだけど、じゃあ「自分が信じることって何で決めてるの?」って、最後は直感だと思うんです。何で焼却炉にまっしぐらなゴミ人間を助けようと思ったのか。何で友達の大事なブレスレットをゴミまみれになっても探し出そうと思ったのか。「なんかそうしたほうがいい気がする」っていう直感は、結構外れないもんだから、安心して信じてよしっていうのが、一番のメッセージな気がします。この映画で出たくなる「息子との旅」は、”知らない世界へのワクワクを信じろ”ということでしょうか。旅の映画ではないけど、この映画の父親は、世間の目や自分を覆う常識を常に笑い飛ばして、外の世界はきっとあってそれはすげえんだと息子に言い続ける。根拠がなくても、周りになんと言われようと、親がそれやらなくてどうするんだと。そうやって外の世界に連れ出してあげたくなる、そんな一本。原作絵本から結構脚色入りましたが、良脚色だと感じました。西野アレルギーの人も、映画は素敵だったのでぜひ乗り越えてみて欲しいです笑


イントゥ・ザ・ワイルド

2008年公開
監督:ショーン・ペン
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イントゥ

裕福な家庭に育った若者が、本当の意味の自由を求めて放浪の旅に出るお話。自然も人も全てが素晴らしく、自分もこういう後先に縛られない本当の放浪をしてみたいなあとシンプルに思っちゃう物語。自分の人生の過去からの連続性を一旦リセットして、「今、ここ」を全力で生きることで、自分の価値観は幾つになってもどうとでも、変わるんだなあとポジティブに思える。ただ、この映画で出たくなる「息子との旅」は、”一緒に行くだけでよかったのに”ということでしょうか。エリート人生を歩む一方で家庭内の不和や、金の力で物事の解決や自分の懐柔をやってきた親に嫌気がさして、彼は全てを捨ててアラスカを目指し、「幸福が現実となるのはそれを誰かと分かち合った時だ」と気づいた時には辛い結末を迎えてます。要するに、こんなことになる前から、親は外の世界に自由に出してやればよかったってことで。アラスカだってどこだって、家族でも行けばよかったんです。旅って、自分の殻の外と触れる一方で、本質はその外気との接面で相対的に自分の輪郭を自覚し、そこが他者とどうつながっているか内省する行為だと僕は思ってます。彼は、長らくそれをやってこなかったために、暴発して飛び出して、帰ってこれなくなってしまった。親子の旅を描いた映画ではないけど、逆説的に、共に旅に出ないと行けないという気に強くなる映画です。

6才のボクが、大人になるまで。

2014年公開
監督:リチャード・リンクレイター
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6歳の僕


アメリカに住む6歳男子が、親元を巣立っていくまでの成長を描いたお話。のっけから両親は離婚していて、大人になりきれないフラフラし続ける父親とは付かず離れずで、そいつがまたいかんともしようも無い男なんですが、息子が大人になって行くに連れて、不思議な支えとなってつながりの形が変わっていく。一緒に酒を飲むときの距離感が素敵。本当に12年の時間をかけて撮っていくリンクレイター監督お得意の農耕系撮影法が、演者の加齢を物語に乗っけてくるから、なおさらその関係の変化がしみる。もう一つは、「アメリカ」がものすごくよくわかる作品だということ。家族の定義がリキッドであるがゆえに、残っていく人の縁ひとつひとつに愛憎含めた意味が濃くあるなあということ。大学の為に家を巣立つ時に母親が呟く「もっと長いと思ってた。」というセリフが泣かせる。この映画で出たくなる「息子との旅」は、”父親としか、話せないことってあるのかもしれない”ということでしょうか。ちゃんとしてないし、無責任だし、ダメな親なんですが、それでもなぜか、彼にしかできない”力の逃がし方”が、主人公にとってはある。そういう話が旅でできるといいなあと、子供との関係性の一つの指針に思います。こんなにダメ父である必要はないけどw、でも、自分しか引き受けてあげられないことって、あるのかもしれない。そう思って、適度にテキトーでいるのも、悪くないかもね。旅は、その時間だけそういう、「今だけだぜ」っていう時間を過ごせるとてもナイスな装置だと思うので、これも旅の映画じゃないですが、二人旅で話したい気持ちが高まる映画。

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こんな3本。結果的に「息子と二人で旅に出る」映画は一本も入ってません笑 ただ、旅でしたいことって、「旅じゃないとできないこと」とも言えるので、それって日常を見つめ直すことで相対的に見えてくることなんじゃないかと感じます。もちろん、明確な目的がある旅や、単に温泉保養や家族団欒の旅も、最高だと思うし、毎回毎回「人生を揺さぶるような」旅である必要なんか全くない。なんなら、人生を揺さぶるかどうかは狙ってゆさぶれるものでもないし。結局は、そこでどんな心の開き方をして何を話すかが全てな気がします。僕の父親は、旅先とか、あるいは自宅の庭でBBQしたような時に、ふとボーっと虚空を見ながらのんびりしている時間があるような人で、子供からすると「何をしているんだ?」と謎だったんです。そんで酔っ払っていると「ザッツライフ」とか突然呟いたりするわけですが、最近はわかる気がします。その時の、その状況が、それだけで、何もしていないなんてことはなくて、何かの結果なんだなあと。そういう、明確な行為を伴っていない、「ただこの状態がいい」っていう旅が、したいですねえ。そんなこともお伝えしつつ、よかったらみてくださいませ。

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