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53. ワイルドが足りない!と思った時にみる映画3選

年間100本映画を観ることを自らに課して11年目のわたくしが、映画初心者のために「なりたい気持ちで映画セレクト」する企画、THREE FOR YOU。2週間空いてしまいましたが53回目のお題は、コロナ禍でどうにもこうにも大人しい日々を過ごすことで、なんだか全体的に牙が鈍りがちだというAさんから、血の気の多いこんなお題です。

こんにちは。こんなに長くコロナコロナと言われて、色々なことができないづくしになって、なんだか行動力とか欲望自体が縮こまっている気がします。なんだかやる気がしないというか、やりたいこととか欲しいものが減っていくような。これはこれでいいことな気もしつつ、自分の中のワイルドを呼び覚ますような映画を教えて欲しいです。

なんだかわかる気がするお題です。去年の最初の頃は、「収まるまでしばらく、今はしゃがむ時期だ」とかなんとか自分に言い聞かせて、立ち止まる良い機会くらいポジティブ変換したんですが、こうも長引いてくると、なんか大事なことを忘れそうな気もする。今回は、ちょっと毒っ気や荒々しさ、目的に向けてのがむしゃらさみたいなものを思い出せる、映画ならではのエグみのあるワイルドを探してみました。

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キングスマン

2015年公開
監督:マシュー・ヴォーン
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キングスマン

世界最強のスパイ機関が、IT実業家の企てる陰謀に立ち向かうお話。

いやー、キック・アスの時もそうでしたが今回もたくさん殺してます、マシュー・ヴォーン。黒幕追跡編と後継者育成編がパラレルで進むお話しなので、若干途中、とっちらかり気味な印象も受けたけど、展開のスピード感と潔さ、9割の分かりやすさと1割のどんでん返し、みたいなバランスが気持ちのいいあっという間な作品でした。この映画で補給できるワイルドは「自分がやべえ時はちゃんとキレていいんだぞ!」ってことでしょうか。怒りは制御すべき感情であるというのが最近のビジネスシーンではすっかり通説になってますが、「押し殺して最初っから無かったことにする」のとあるものとして制御するのは全く違う訳で。世の中悪いやつはいるし、たとえ悪気はなくても(この映画の悪役もある意味、善行を行なっていると信じ込んでいるタイプ)、自分に害なしてくる輩とはどうしたって出くわす時は出くわす。そういう時は、怒っていいんだよっていうこと。もちろんその怒りをどう自分なりに処理するかはまた別の話ですが。シンプルにスカッとする話なのと、影のMVPマーリンの仕事人っぷりに痺れてください。

あゝ、荒野

2017年公開
監督 : 岸善幸
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ああ荒野

少年院出の青年と吃音持ちの床屋見習いの、「何もない」2人が居場所を探すお話。「一度死んだ」人にしか生きられない「生」があるとしたらこういう形なのかもと考えさせられる物語。死んだように生きてきた2人が、生きている実感を求めて、殴り合いに身を投じていく。なにかを失った人ばかりの荒野のような新宿で、だらりと重たい日々をなんとか1日1日進めていく感じが、長尺かつ前後編の長さからもずっしりくる。「ミリオンダラーベイビー」「ピンポン」「百円の恋」あたりが好きな人はぜひ。この映画で補給できるワイルドは時には手段の目的化が自分を生かしてくれる」ってことでしょうか。仇に復讐するために、父親の支配から逃れるために、半ば都合がよかったからボクシングを始める二人だけど、次第に「殴り合うこと」自体に自分の存在意義を見出していく。なぜそこまで殴り合うのか。もういいじゃないか。そう思ってしまうほどに止まらないその拳に、おそらく二人にとって殴り合うことと、それによって繋がった絆はそのまま自分自身のbeingになったんだろうということがわかる。時に人はそういう、「なんのために?とかもう超越している状態」にフローすることがあって、それって”最高に存在している”実感に溢れているんだと思う。ラストの試合の壮絶さが、そんなことを思わせる一本。あんまり「なんのために?」って考えすぎなくていいんだっていう、目の前に無心に取り組むワイルドさを取り戻せる作品。

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

2007年公開
監督:ポール・トーマス・アンダーソン
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ブラッド


しがない山師が石油を掘り当てたときから、欲にまみれ身を滅ぼしていくまでの半生を描いたお話。主演が生きる伝説、ダニエル・デイ=ルイスですからね。引き込まれます。そのえぐさに。まるで本当に一人の人間が、それだけの年月で実際に老い、欲に身を落としていくような演技。目つきや佇まいが、あそこまで演技で変えられるんだからすごい。お話の内容は、まあ、えぐい話です。金と、石油と、宗教と、親子と。人間不信はちょっとしたすれ違いと事故を放っておくと、取り返しのつかないものになると。この映画で補給できるワイルドは「どんなにワイルドになったとしても、Evilにだけはなるな」ってことでしょうか。Aさんのオーダーに反して、この映画をみてると「ワイルドになんかならなくていいんじゃないか・・・?」っていう気分になってくるかもしれないです。なにせ人間の醜さ、無軌道さ、手段を選ばないえぐみみたいなものが濃縮されている作品なので。ある種、針が振り切った反面教師的なワイルドさを見ることで、本当に必要なワイルドさについてかえって冷静に考える良いきっかけになるかも。個人的にはこの映画で描かれているような「ワイルドさ」をいいものとは思わない。ただ、栄光や成功、お金持ちになることってその危うさと背中合わせなんだなあと。「正しく欲する」ことについて考えさせられる映画です。

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こんな3本。自分自身、ワイルドさに欠けるタイプなので映画でそういった自分のえぐみや闘争心を呼び覚ますことって、確かにあるなあと再認識させてもらったお題でした。ただやっぱりワイルドさのベクトルを向ける先が、とても重要かなと。ただこの3本、共通してみ終わった後にとりあえずアドレナリンは出る(刺激が強めなので人によってはかえって萎えるかもしれませんが・・・)ので、そのアドレナリンをぜひ、我が闘争のガソリンにしてもらえるといいんじゃないかなと思います。是非是非ご覧くださいませ!

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