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本気は具体に現れる

数年前に受けたあるOB訪問。日本の農業にイノベーションを起こしたいと思ってます!という熱い女の子だった。実家が農家で、ひいき目無しにおいしい野菜を作っていると思っているけど、なかなかお金に換えることが難しく、知人もどんどん廃業していって、いいものが世の中でちゃんと認められるようにしたいと。引き込まれる話しぶりで、うんうんと聞き入って。で、僕はいじわるなので、試しに「TPPってどう思う?」と聞いてみたら、TPPがなんだか、まったく知らなかったんです、その学生さん。残念だなあと正直、思わざるを得なかった。

「TPPを知らないような、一般常識に欠ける人は厳しい」とか、そういうことを言いたいわけじゃなくて。知識業についている人ならまだしも、”一般常識”なんて、果て無く広がる概念なので、個人的にはそれを知ってる知らないということより大事なことはいくらでもあると思う。そこではなくて、「もし本当に日本の農業を変えたいと思っているのであれば、TPPという単語に一度も当たらないでそれを考えることができるはずがない」んです。だから、たぶんこの時点で彼女は自分の出自や過去から最も”自分らしさの演出に役に立つエピソード”を持ってきて、自分ももしかしたら自分の熱意については半信半疑だけど、ほかの学生さんとの差別化をしなきゃという焦燥感も相まって、農業キャラで行くことにしたんだと、ごめん、思ってしまった。その後も、話をいろいろ聞いたけど、彼女の話には決定的に「固有名詞」が欠けていたように思う。

「ほんとにやる気だ。こいつ。」っていう、本気度を人は何から感じ取るんだろうか。語気とか、熱意とか、そういう定性的で、人の好みに左右されてしまうものも大きいとは思いますけど、それらを冷静に横においといたときに、僕は「具体度」からだと思う。思いや抽象概念、考え方だけでは、世の中に何かコトを起こすことはできない。コトになったとたんそれは、具体だからさ。実世界との接面をどこで作っていくか、考えるに決まってるはずなんです。もちろん、世の中には「考え方で食べていく」職業もあるので、それ自体、悪いことじゃないけど、やりたいことが具現化を避けて通れない内容なのに、その話に具体が感じられないとすると、たぶん本気じゃないんだろうなと思う。これは、いろんな人を見てきて、間違いない指標だと自分は感じます。自分自身の熱量も、「具体の世界に考えが及ぶか」で図るようになってから、結構はっきりわかるようになった気がする。

という感じで、具体的に考えて、もっと言ってしまえば、もうやってしまえばいいやんくらいに思えるものを、探し探し生きていきます本日も。

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