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ネガティブな感情が生み出す新しい物語◆神話編

こんばんは! 白樺の騎士団・七庭(ななば)です。

今回は、ネガティブな感情(不安)が生み出すものについて書かせていただきます。

「マイナス思考は悪いことを引き寄せる」という話はよく耳にしますよね。

以前、私はその話を信じていたので、自分がネガティブなことを考えるたびに自責の念にかられていました。

しかし様々なことを経験するうちに、心にある不安が新しい状況を生み出すことに気づいたのです。

その"新しい状況"は、決して楽なものではありませんでしたが、自分の本当の望みをはっきりさせ、今後の方向性を決める鍵になってくれました。


「ネガティブな思いが、新しい展開をつくる」というのは、神話や物語の世界においても言えることです。

本日は、ギリシャ神話を例に挙げ、そのことについて書かせていただきました。(私の体験談は次回書かせていただきます)

この記事が、不安を抱える方の心を少しでも楽にできたら嬉しいです。

よろしくお願いします!


◆不安から動き出す物語◆神話時代の人々も抱えた様々な不安


*アモールとプシケーの物語

今回取り上げるのは、ギリシャ神話(*1)の中の有名なお話です。

あらすじをご紹介します。(長文ですが、ご了承ください)

王女・プシケーの美しさは、美の女神・ウェヌスを凌ぐほどだと言われていました。それを聞いたウェヌスは怒り、息子のアモールに命じて愛の弓矢でプシケーが卑しい男に恋するよう仕向けようとします。その命令を快く引き受けたアモール。しかし、うっかり愛の矢で自分自身を傷つけたことにより、プシケーを愛するようになります。(中略)神のお告げにより、結婚相手に出会うため、山の頂上に向かったプシケー。その後、風の神によって立派な宮殿に連れて行かれ、楽しい生活を送るようになります。しかし、夫は夜になってから寝床に現れるのみで、プシケーはその姿を一度も見たことがありませんでした。ある日、家族が恋しくなったプシケーは夫に頼みこみ、姉二人を宮殿に招きます。妹の豪華な暮らしに嫉妬した姉たちは、「プシケーの夫は化け物に違いない。寝ている間に正体を確かめてから殺すべきだ」と主張。その言葉を真に受けたプシケーは、夜中に火を灯したろうそくを持って夫に忍び寄ります。その際、初めて夫の顔を見たプシケーは、その美しさに驚愕。驚きのあまり夫の体に蝋を垂らしてしまいます。目覚めた夫は、プシケーの行為にショックを受けて飛び去ってしまいました。夫の正体は、恋愛の神・アモールだったのです。(中略)アモールにもう一度会うため、姑・ウェヌスの与える試練を乗り越えるプシケー。あるとき、ウェヌスはプシケーに「冥界の女王から美をもらって自分のもとに持ってくるように」と命じました。首尾良く美の入った箱をもらったプシケーでしたが、禁忌を破り、箱を開けてしまいます。「アモールと再会したときに綺麗だと思われたい」という気持ちから、その美を少しだけ自分のものにしたいと考えてしまったのです。箱の中に入っていたのは美ではなく冥府の眠りでした。眠り込んでしまったプシケーのもとにアモールが現れます。妻を眠りから救い出したアモールは、他の神に妻と母を和解させてほしいと頼みました。(中略)プシケーはネクタール(不老不死になる神の飲み物)を飲み、神になります。そしてアモールと共にいつまでも幸せに暮らしました。

※以下の文献とサイトを参考にさせていただきました。

(*1)大元のギリシャ神話では、登場する神様の呼び方が異なります。

【アモール】=エロス(エロース)。ラテン語ではクピド(クピードー)。英語ではキューピッド。

【プシケー】=プシュケ(プシューケー)

【ウェヌス】=アフロディテ、アプロディーテー。英語ではヴィーナス。

この記事では、前述した参考文献(『絵本と童話のユング心理学』筑摩書房)で使われている呼び方を採用しました。

(下記画像はアモールとプシケー。Wikipediaからお借りしました)

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◆この物語のポイント

プシケーが、不安からタブーを破ってしまう点です。

「犯してしまったタブー」と「タブーを犯すきっかけ」は下記の通り。

・夫の姿を見たこと

→夫の正体がわからないという不安、姉たちに唆されたこと

・美が入っている(と言われている)箱を開けたこと

→自分の容姿に対する自信のなさ、「今のままでは愛されないのでは?」という不安


プシケーがしたような「誘惑に負けて禁を犯す行為」は、多くの物語の中で読者(聞き手)に対する戒めとして描かれることがほとんどです。

わかりやすい例として、「鶴の恩返し」を挙げることができます。

つい気になって部屋を覗き見たことによって、幸せな暮らしが終わってしまうという結末。

その悲しい幕切れは、「約束を破ってはいけませんよ」と私たちを戒めているのではないでしょうか。(物語の解釈は人それぞれですが)


しかしこの物語においては、タブーを破ったことが結果的にプシケーの幸せにつながっています。

夫の正体に疑いを抱かなかったら、プシケーはずっと夫の顔を知らないまま生涯を終えたかもしれません。その場合、神になることも、永遠に夫と幸せに暮らすこともなかったのではないでしょうか。

また、冥界でもらった箱を開けたことは、結果としてプシケーの愛の深さをアモールに示すことになったと言えます。

「愛する人に綺麗だと思われたい」

そう思って、自ら箱を開けたプシケー。

自分のためにリスクを冒したプシケーの姿に、アモールは心揺さぶられたのだと思います。(もちろん彼女の行為は自分自身のためでもありますが)

(下記画像は箱を開けるプシケー。Wikipediaからお借りしました)

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◆不安の裏にあるもの

ネガティブな思いから起こした行動が、最終的に良い結果をもたらすことがあるということを、この神話は教えてくれました。

その良い結果をもたらしてくれるのは、"不安の裏にあるもの"だと私は思います。

不安の裏には、大事なものが隠れているのです。

プシケーが夫の正体を見ようとした背景には、自分の身を守りたいという思いがあります。

また、箱を開けた背景には、「好きな人に嫌われたくない、愛されたい」というアモールへの想いがあるのです。

人が大切に抱えている思い(想い)こそが、望ましい未来を呼び寄せる鍵と言えるのではないでしょうか。

もちろん、この神話のように「災い転じて福となす」パターンばかりではありません。

ヘラクレスの心変わりを恐れたデーイアネイラが、悪者の策略にはまり、ヘラクレスを自らの手で死なせてしまう物語や、

嫉妬深い女神に唆され、関係を持った男性(ゼウス)の正体を確かめようとして死んでしまったセメレーの物語など、ネガティブな感情が、ネガティブな結果を招くことも、もちろんあります。


ただ、上記の2つの物語の中にも救いはあるのです。

妻に殺されたヘラクレスは、死んだことによって神になることができました。

セメレーも、息子のディオニューソスによって冥界から救い出され、女神になることができたのです。(※神になれたら今までの苦労が全て相殺されるかどうかはわかりませんが、少なくとも神になってからのヘラクレスとセメレーは幸せそうなので、私はこれらの物語には救いがあると考えています)

神話の中のお話を、現実世界にそのまま当てはめようとするのは間違いだと思いますが、私はこう思うのです。

「ネガティブな思いが悲劇を生み出しても、何かしら希望は残っているのかもしれない」と。



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