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半熟卵の不可逆性が怖い

「定食屋の営業風景」みたいなYoutubeを見るのが好きだ。
40分近くある動画をダラダラ眺めながら土曜の14時台をめちゃくちゃムダにするくらい好き。

定食動画を見漁って気づいたのが、関西のお店の卵料理率の高さ。関東育ちの自分としてはずいぶんと卵のインプレッション多いなと思ったので、ふと調べてみたら、関西は鶏卵の消費量が断然多いらしい。今まで定食動画で浪費した時間を十二分に取り戻せるインサイトが得られて非常に嬉しい。

本題に戻ると、半熟卵は恐ろしい食べ物だと思う。単体としては好きだし、温泉卵にタレかけて食べたり、月見つくねみたいにディップして食べるスタイルも好き。半熟卵というか黄身はある種のソースだと思っている。

ただ、料理の上に乗っかっているタイプは怖い。死ぬほど怖い。目玉焼きハンバーグ然り、丼ものに添えられている温泉卵然り。

まず黄身をいつ割ればいいのかわからない。黄身はソースだと言ったけど、あんなにみっちりソースが入っている玉を気軽に食べ物に乗せてしまっている発想が恐ろしすぎる。不意に割れたらどうするの。エントロピーが高すぎて食事どころじゃなくなってしまう。

中華の五目焼きそばに酢をかけたり、ピザに辛いオイルをかけたりするのは好きだが、次に食べる一口だけにかけて食べるようなタイプなので、黄身が割れた後の惨劇を想像するのが怖い。

皿の上は常に自分のコントロール下にあってほしいので、黄身の量や粘度が毎回想像つきにくい上に一度割れてしまったらもう二度と割れる前に戻れないハンプティダンプティ状態が怖い。

自分が目玉焼きハンバーグを食べる時は白身とその下にあるハンバーグだけ切り分けて、最後に黄身の部分だけ残した上で一口で食べる。口の中黄身だらけになるが、それはそれで満足感が高い。最後まで黄身の貞操を守り抜いた気持ち。

今までの人生で食べ始めに黄身を割って食事をしたことがなかった自分だが、さすがに卵ごときに恐怖心を抱きすぎるのもよくないと思ったのでこの前うどん屋で自分から温泉卵トッピングを宣言してこの悪しきループを断ち切ろうと思った。

肉うどん温玉トッピング。

普段なら肉の煮汁と出汁がコンタミする前にダシをすすって、肉を食べた上で肉の煮汁の味付けとダシの味の差分を脳内で考えながらゆっくり汁のバランス調整をしながら食べているのだが、今日は違う。

「俺は今日このうどんを台無しにするかもしれない、そのせいで気持が下がって午後の仕事に支障が出るかもしれない」そういう考えが頭をよぎったが、今日の俺は違う。初手から温泉卵をかち割って二周ほど箸でかき混ぜて食べることにした。

めちゃくちゃうまい!!!!!!!!!!!

なにこれ。肉の煮汁、出汁、黄身、白身、変数が4倍になった汁のバランス調整をしながら食べる楽しみがすごい。下から麺をつまんで、4つの出口を選びながらうどんをたぐる。とくに黄身に適度にコーティングされた麺がうまい。コーティングされたものの、しっかり出汁、煮汁の味も残している。一麺一麺のキャリアパスを感じながら毎回違う経歴の麺を味わう面白さ。

もっと早くから知っておけばよかった!とまでは思わない。なぜなら自分なりにこの黄身の不可逆性について考え抜いた結果の今日なのだ。

自己研鑽の賜物だと信じて、次回からは初手で卵を割るパターンも試していこうと思う。流川だってパスを覚えてから沢北抜けるようになったもんな。自分も色々な選択肢を持ちながら、常にベストを尽くしていきたいと思う。

それでは。

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