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LGBTQ+が登場する作品を発表しようと思った理由

今年(2024年)から、新しい企画を立ち上げました。

「まど劇」という名前で、主に演劇作品などを発表する場として想定している企画です。

2024年6月に、まど劇としての最初の活動となる演劇作品『こんな夢を見た。』の上演を行います。

そして、この作品では、LGBTQ+の登場人物を描いています。


○○企画/演劇企画〈部屋〉(2019)
photo by beni taeko


私がLGBTQ+の作品をつくろうと思った理由


作品や企画について説明する前に、ちょっと個人的な話をします。(しんどい話ではないです!)

私は学生の頃から10数年、京都を拠点として演劇活動に携わってきました。

その中で、LGBTQ+が登場する演劇作品に、身近で(自分が気軽に観たり、出演したり、スタッフとして携わったりできる範囲で)出会える機会がとても少ない、と思ったことが最初のきっかけです。


10年以上活動しているので、最近は以前と比べて格段に増えてきている、とも感じています。

でも、「LGBTQ+が登場する」と企画段階や宣伝文句で明言されている作品となると、かなり少ない。

作品づくりの段階で、当事者の方が携わっていることがわかる作品となると、もっと少ない。


私は、これからも演劇活動を続けていくならば、少しでも身近で、作っている人の気配が感じられる場で、LGBTQ+を描く作品に出合いたい。

そして、できる限りそういった作品に携わっていきたい。

だから、私が自分の企画で発表する演劇作品は、できるだけLGBTQ+の人物が登場するものにしよう、と思いました。


○○企画/演劇企画ふたりごっこ『窓』(2016)


LGBTQ+当事者として。


またまた個人的な話で恐縮なのですが、私自身、LGBTQ+の当事者です。

詳細なセクシャリティについては専門用語が長すぎるので省略しますが、私はシスジェンダー(体の性と心の性が一致していること)の女性で、かつ、女性のパートナーがいます。

多くの方に伝わりやすい言葉でいえば、「同性愛者(英語だとゲイ、レズビアン)」です。


○○企画/猫遊び企画『DOLL』(2016)
photo by beni taeko


私が自分のセクシャリティに気づいたのは学生の頃で、そこから現在にいたるまで、たくさんの葛藤がありました。
家族と気持ちがすれ違ったり、マジョリティではない自分を内心で責めてしまったり、セクシャリティに悩んで迷走したり。

ただ、そんな不安定でぐらぐらした気持ちの中でも、演劇をしている間はものすごく充実感があって。

今の自分がこうしておだやかに過ごせているのも、確実に演劇に出会えていたおかげだなあと思います。ありがたいかぎり。


○○企画/猫遊び企画『DOLL』(2016)
photo by beni taeko


そんなふうに演劇に支えられた10数年を過ごしてきたので、演劇を通じて世界に恩返し(?)をしていきたい、みたいな気持ちがあります。

世界に、というのは、私がLGBTQ+であることをカミングアウトしたら優しい言葉をかけてくれた人たちや、学生時代に演劇に出合わせてくれた地元の環境、今も一緒に演劇を作ってくれている人たちや観に来てくれる人たち、応援してくれる人たちなどに……というイメージです。


私は、特にセクシャリティに迷いを感じていた学生の頃や20代前半の頃は、少しでもLGBTQ+を描いた作品に出合いたかったし、関わりたいと思っていた。
でも、前述したとおりそういう作品ってとても少なくて。
数が限られているから、自分自身にフィットするような、ああこれが観たかったんだ、と思えるような作品に出合える機会も、その分少ない。

だったら、私は自分の手でそういう作品をつくろうと思った。というわけです。


○○企画/演劇企画〈部屋〉(2019)
photo by beni taeko


作品づくりと、意見の発信について思うこと。


まど劇には前身となる企画(○○企画)があって、そこで2021年に発表した作品では、ひっそりとLGBTQ+に関する描写をしていました。


○○企画/演劇企画〈部屋〉vol.2(2021)


それまで、作品を通じて自分のセクシャリティについて触れるということはしてこなかったので、初めての試みでした。

この公演を経て、自分の中で覚悟が固まったような気がします。

10代、20代前半の頃の私が観たいと思っていた作品をつくろう。
そして、それらの(かつての私が観たいと思っていたような)作品には、きっと高確率でLGBTQ+の人物が登場するはずだ、と。


○○企画/演劇企画〈部屋〉(2019)
photo by beni taeko


もちろん「LGBTQ+」という言葉には、私自身とは異なるセクシャリティも多数含まれています。

本気の理想を言えば、上演の際には必ず作中の人物と同一のセクシャリティの方の監修が入り、かつ、演じる俳優さんは自身のセクシャリティに合致する役(あるいは演じる上で違和感を抱かずに取り組める役)を自ら選択できる……という形で作品をつくれたら一番いいなと思っています。

将来的にもしそうできそうなら、そうしたい。


でも、それらを実現するためには、カミングアウトという手強いハードルを越えることを多くの方々に強いてしまうことにもなり、それは私の本意ではないです。

なので現状、私の手の届く範囲ですべてを叶えることはできていません。


だからこそ、可能な限り、作品に登場するセクシャリティの方のお話を聞いてから作品づくりをすること、実際に自分自身の目で見て耳で聞いて、体験して感じたことを作品に活かすこと、俳優さんには気になることがあれば指摘してくださいと都度確認すること、などを心がけるようにしています。


photo by beni taeko


私は専門家ではなく、一人の作り手であり当事者なので、至らぬところも多々あると思います。

こんなふうにLGBTQ+について明言(明記)しながら作品づくりをすることで、厳しい意見やご指摘、あるいは心ない言葉をかけられる可能性も高まるかもしれない。
作品で何を描くかを言葉で説明するなんて無粋だとか、専門家でもないのにわかったようなことを言わないほうがいい、という考え方もあるでしょう。


でも、個人的には、LGBTQ+についての話題がタブーのような扱いになるほうがモヤモヤするな、と思ったんです。

もちろん言いたくない人、触れられたくない人もいるのであくまで私個人の感覚なのですが、タブーに触れて責められるくらいならはじめから避ける、みたいな風潮が、ちょっとずつ変わっていけばいいなって。

いずれ、LGBTQ+の存在はごく自然で当たり前なものという感覚が広まって、カミングアウトっていう概念も消えていくくらいナチュラルな存在になればいいなと思うので、そのための一歩として、私は「LGBTQ+」についてちゃんと言葉にして発信していこう、と思いました。
(他の方にその話をすることを強制したり、積極的に意見を求めたりはしないです!あくまで私自身の考えはできるだけ言語化してお伝えしていきたいな、と思っているということです)
(他の方からLGBTQ+についての話を振っていただく分には全然OKです◎ もし万が一、その話題はイヤ!と思うことがあればこっそりお伝えします)


とはいえ、社会的な意義とかよりも、昔の自分に届けたいと思えるような作品づくりをしたい。

その思いが一番で、それが派生して、誰か一人の心に届くようになっていけばいいな、と思っている次第です。


今回の作品『こんな夢を見た。』について



まど劇としての初の作品『こんな夢を見た。』には、女性を恋愛対象としている女性が登場します。
そのほか、(直接的な表現はなくても)LGBTQ+にまつわる発言もいくつか出てきます。

ただし、極端にLGBTQ+の人間を攻撃するような描写などはありません。
(詳しいトリガーアラートについては、まど劇のSNSアカウント等にてお知らせします)


まど劇の最初の一歩となる作品は、観ていて、そして演じていて、辛すぎる話や悲しすぎる話にはしたくないな、と思ったからです。

夏目漱石の小説『夢十夜』を下敷きに、私自身が今まで感じてきたこと、見て、聞いて、体験してきたことを織り交ぜた物語です。

すべての人を傷つけないような作品づくりは難しいのかもしれないですが、まずは今の私や昔の私が、観ていてどこか掬い上げられるような気持ちになれる作品にできればいいな、と思っています。


6月1日からの京都での公演を、ぜひ観に来ていただければうれしいです🪟

本番は観に行けないという方も、戯曲を読んでいただいたり、SNSを見て応援していただいたり、そしてまど劇の今後の活動に注目していただけると、さらにうれしいです!


長い文章をここまで読んでいただき、ありがとうございました🎈



まど劇 はじめの一歩公演
『こんな夢を見た。』

原案 夏目漱石『夢十夜』
脚本・演出 にさわまほ

◆あらすじ◆
何度も繰り返し夢に出てくる女性は、祖母のかつての恋人だった。
夏目漱石の小説『夢十夜』を下敷きに、夢と現実のあわいを漂う記憶を描いた物語。

◆公演日時◆
2024年
6月1日(土)14:00/19:00
6月2日(日)14:00/19:00
6月3日(月)14:00/19:00
※開場・受付開始は各開演時間の30分前を予定しています。

◆会場◆
ライト商會三条店 2階ギャラリー
〒604-8036
京都市中京区寺町三条下ル一筋目東入ル

◆チケット料金◆
予約:2,000円
当日:2,500円
高校生以下:一律1,000円
※高校生以下の方には身分証の提示をお願いする場合がございます。

◆出演◆
興梠陽乃(劇団ヨアガキ)
畑迫有紀
藤村弘二
山中麻里絵(まどり)
山本真央(創造Street)
吉岡莉来

◆スタッフ◆
音響:浜間空洞(小骨座)
宣伝美術:三村るな
企画・主催:まど劇

◆予約フォーム◆
https://ticket.corich.jp/apply/307754/

◆お問い合わせ◆
MAIL:madogeki@gmail.com
X:@madogeki
Instagram:madogeki

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