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SSまとめ

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過去に描いた作品をまとめました。 すぐに読める作品ばかりです。 もし少しお時間があって、少しでも興味を持ってくださったらタップして見てください。
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#ショートショート

(習作)道端で見つけた地球

 家の中で考え事をしていた時、ふと外に出たくなって私は散歩をすることにした。
「こんな寒い夜にどこいくのよ。明日も仕事でしょ」
 母親が少しイライラしながら言ったが、私は軽くかわして外にでた。

 夜の散歩は、少し気持ちが高ぶる。普段は陽の光に照らされている光景が、全く別物に見えるし、空気も違って香るのだ。昼の光は、強く照らしてくるからすごく干渉されている気分になる。けれど夜の光は、少し冷たくて他

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【SS】心の缶詰

【SS】心の缶詰

 私は心の缶詰を毎日食べている。子どもの時から、変だとは言われていた。
実際に、何件も病院を回り、とある病院で「体質だ」と言われ落ち着いた。
病院で処方された缶詰を摂取することで周りと同じように生活できている。
 でも、病気ではないのだ。お肌を綺麗にしたい女子が、サプリメントを飲むのと少し似ていると思う。だって、感情は必ずしも必要なものではないから。

 缶詰は輸血のように、人から提供されている。

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【SS】朝のロープ

【SS】朝のロープ

 早朝、布団の中にいるのに手汗が止まらない。怒号が頭にこびりついて、剥がれない。
出勤まであと2時間、予定よりも早く起きてしまう。気持ち悪くて布団から出た。
 起き上がった瞬間、体の周りがぎゅっと締め付けられる。
 朝食をとりながら、ニュースをみる。自分が使っていない電車の人身事故についてやっていた。それを見て、迷惑さよりも羨望の気持ちが強くなる。
 腕に何かが食い込む、手からまた汗が出てきた。今

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【SS】偶然か必然か 〜ペットボトルは愛を運んでくるのか〜

【SS】偶然か必然か 〜ペットボトルは愛を運んでくるのか〜

この部屋の人間は微妙にものぐさだ。

なぜなら、ペットボトルである私がこの部屋に一年もいるからである。

しかも、微妙とつけたのは、なぜか私だけ放置されているからである。

本来ペットボトルとは、1日で消費され、1週間のうちにゴミとして収集されリサイクルや焼却に回されるはずである。

私なんて、ただのぶどうジュースのペットボトルだ。紫色のラベルが体に巻き付けられている何の変哲もないペットボトル。

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【SS】ゾウのハイヒール

【SS】ゾウのハイヒール

あるところにオシャレが好きなゾウがいました。

りんごのイヤリングに、空色のスカーフを羽織り、いつも風を切って凛々しく歩いていました。

あるとき、ゾウは街にこんなポスターがあるのをみつけました。

「あなたのステキな姿がみたい」

そのポスターには、真っ赤なハイヒールを履いた人間の女性が描かれています。

どうやら自分の好きなコーディネートをして、舞台に立てるイベントのようです。

「まあ素敵!

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【SS】じょうねつてきやりとり

【SS】じょうねつてきやりとり

 うちの息子は、情熱100%だ。
保育園の先生から教えてもらった情報によると、同じクラスのまゆちゃんにタンポポを10本も持っていって「結婚してください」と言ったらしい。
 どこでそんな言葉を覚えたのだろうか。まあ4歳児にもなれば、どこかで結婚という言葉を聞いてもおかしくないか。
 今でも、私にプレゼントをするんだと言って、百均で買ってきた折り紙をちぎっている。何をくれるかは教えてくれないらしい。

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