この時代には「なくてもいい」が必要なんだと思う
2020年6月。
デザイナーの友達数名と、あるプロジェクトを始めた。
名前は余日。「あまりび」と書いて「ヨカ」と読む。
週1回、夜オンラインで集まってお酒を飲みながら
「こんなものがあったらいいね」
とか
「くだらないけどあってもいいよね」
みたいな話をして、ちょっと深めて、コンセプトをこしらえて、グラフィックに落としては備忘録のようにTwitterのアカウントに垂れ流す。
便利、効率、生産性に逆行した、くだらない、でもユーモアのある「無駄」を考えるプロジェクト。
余日は一画増えると、余白になる。
ユーモアのある無駄(アイデア)で、みてくれる人の日々に余白が生まれたら。
そんな大義名分を掲げながら、自分たちが楽しむ名目で、ゆっくり細々と続けていた。
ゆるゆると自主制作のように溜まっていったアイデアは、25個。
実現可能なもの、不可能なものもあればくだらなすぎるものもある。
これといって大量!というわけでもないし、振り返ると(ギャグすぎて)恥ずかしくなるようなものもある。
仕事なのか生活なのか曖昧な時間を共有して生まれてくるアイデアは、デザインやクリエイションの本来の面白さを感じさせてくれた。
それに、アイデアを「アイデア」として出すことの気楽さ。それは、仕事にはなかなかない「余暇」な時間だった。
諏訪で気づいた「ゆたかさ」
プロジェクトをはじめて3年近くが経った。
経ってしまった。笑
その3年の間で、僕は拠点を東京の高円寺から、長野は諏訪に移した。
妻の転職を期に、思い切って引っ越してみた諏訪。
住処を移してみて一番の変化は、やっぱり「静けさ」だった。
当然のことながら、人口密度も違えば看板や広告の量も桁違いで、高円寺よりも諏訪の方が静かである。
東京に比べたらはるかに「何もない」。
でもその代わりあるのは湖と山と川で、それらは看板や広告と違って、言葉を発してこない。
見方をかえれば「自分から取りに行って、自分で解釈しないといけない情報」がたくさんあるのだ。
「ない」と思っていたものも、視点を変えれば「ある」。
逆に、東京では「なくてもいい」と切り捨ててしまっていたものも「あってよかった」ものなのかもしれない。
「ゆたかさ」は、捉え方ひとつで変わるもの。
地方に引っ越して対峙した「静けさ」に気付かされた。
「ゆたかさ」はもっと多面的でいいと思う
技術革新で、便利さ、効率化、生産性の向上が進む。
最近でいうとAIの発達とか、それは凄まじいスピードで進んでいる。
もちろん技術は進歩してほしい。効率的になること、生産性があがることはゆたかな未来をつくる。
でもゆたかであることの指標はそればかりではなく、もっと多面的でいいんだと思う。
スマホでメモは取れるけれど、紙とペンを持ち歩く。
家にお風呂はあるけれど、銭湯に行く。
倍の時間がかかるけれど、歩いて目的地に向かう。
全部が全部、効率的に、便利になればいいわけじゃない。
紙でとるメモのほうが、頭を柔らかく使えた。
大きな湯船に浸かったら、まあいいかと思えた。
道の途中で遭遇した野良猫が、可愛かった。
非効率で生産性に欠けること。
その中にも、別なかたちのゆたかさがきっとある思う。
そういった多面的なゆたかさに気づけると、仕事も生活も面白くできたりする。
「ゆたかさ」に気づく「きっかけ」として、「なくてもいい」が必要なんじゃないか?
そしてそれを生活の中に根付かせる手段として、デザインやクリエイティブが活かせるのではないか?
きっと3年前も同じようなことをぼんやりと考えていたはずだけれど、より一層解像度が上がった気がする。諏訪パワー?
「余日」を、はじめなおす。
今まで余日ではアイデアをアイデアのまま、流してきた。
アイデアだけでも価値観は示せる。
けれどその価値観を価値に変換できれば、生活の中に取り入れられて、もっと広がるし、僕らが思いもよらない深まりを見せてくれるかもしれない。
「なくてもいい」をつくる。
新しいスローガンを掲げて、余日をはじめなおすことにした。
アイデアをたらたら出すことは変わらないけれど、これからはアイデアという「価値観」だけではなく、ゆたかさという「価値」を受け取ってもらえるように、アイデアをこつこつ形にもしていこうと思う。
小さくても、少しずつ。できれば今まで以上に身軽にね。
便利になればなるほど、その逆側にもあるはずのゆたかさを忘れないこと。
そしてそれに気付ける点を、デザインやクリエイティブの力で増やしていきたい。
この時代には「なくてもいい」が必要なんだと思う。
余日[yoka]、リニューアルして、再始動します!
実装第一弾は「ひともじにっき」
▼詳細はひともじにっき公式webサイトで▼
▼ 余日公式webサイトもあります ▼
▼ Twitterアカウントが元気です ▼
▼ Instagramもこれから元気になります ▼
心機一転、「『なくてもいい』をつくる」をスローガンに、
ゆたかさの選択肢を増やしていきます。
ぜひ、おもしろがってもらえたら嬉しいです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?