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【読書感想文】賽助さんの『君と夏が、鉄塔の上』を読んで

私は、ゲーム実況者の『三人称』というグループで活動をされている方たちが好きで、特にグループのメンバーやファンの方から通称『鉄塔さん』と呼ばれる人物が大好きです。

鉄塔さんのことを調べていくうちに『賽助』という名義で小説家ということを知りました。
鉄塔さんという人物をより深く知る上で、賽助さんの小説を読むことで、この方の考えや価値観などより深く知れると思い『君と夏が、鉄塔の上』を手に取り読むに至りました。

この本はその時に一度読みきりましたが、今回読書感想文の募集があることを知って、改めて読み返すこととしました。


題 名:『君と夏が、鉄塔の上』 著 者:賽助
出版社:ディスカヴァー文庫

❲あらすじ❳


「鉄塔の上に男の子が座っている」

鉄塔マニアの地味な中学3年生男子、伊達を主人公に、破天荒な帆月、不登校のクラスメイト比奈山らが「鉄塔の上に座っている男の子」の謎を解き明かそうとして織り成す、少年少女の成長を描いたひと夏の青春物語。


❲感想❳

学生時代に戻ったような気持ちで爽快かつ、キラキラと輝いて眩しく思えました。
著者の賽助さんは自分で想い描いた話を巧みに言語化ができ、ユーモアに溢れていて改めて凄い人だなと感心しました。

私は、感想などを人に伝えるのが苦手です。
例えば、自分の好きな漫画の見どころなどをおすすめしても、具体的に何て言ったら上手く伝わるのかと考えていても、結局上手く相手に自分の考えを言葉足らずで伝えられてないことが多いです。

なので、今回の読書感想文は果たして最後まで書ききれるのか不安でしたが、伊達の友人である帆月から勇気をもらいました。


「それは知ってるなんて言わない。行ったことも、やったこともない奴が意味ないなんて言っちゃ駄目よ。やってみて初めて “ああ、これは意味なかったな" って分かるんだから」

この会話は1号鉄塔の先とか、どこにどんな鉄塔があるか気にならないかと帆月が伊達に聞いたところから始まっています。
伊達は大抵の情報はサイトで情報は得てるし、近場の鉄塔は一応見て回ったと言いました。
それに対して帆月がそれで満足してるの?と問います。
伊達の弁論は「京北線は長いんだよ。百五十基もあるんだ。それに、鉄塔って道路に沿って立ってるわけじゃないんだ。森の中を通ってたり、川を越えたりしてて、追い掛けるだけでも大変なんだよ」
「……それに、どこにどういう鉄塔が立ってるかは、知ってるし」

その応えに対する帆月のセリフが、自分の中でズシっときました。私はまだ書き始めてもいないのに、最後まで書けるのか不安と言って自分の中にあるネガティブな殻に籠っていました。
だけど、友人に鼓舞してもらい自分が想ったことや感じとったことを読書感想文にまとめて最後まで書いてみようと決心しました。
今後の人生においても帆月の前向きで何事もチャレンジする気持ちを真似ていきたいです。

あと、私は伊達の友人であり同じ部活仲間でもある、木島のセリフで好きな言葉があります。


「工事は、一瞬のきらめきだ」


このセリフがとても好きです。
普段長く感じる「工事」を「一瞬」と捉えるようなものの見方が新鮮で心に残りました。
木島はビルだのマンションだのといった工事現場が好きです。伊達と2人きり会話の中で完成しない建物があり、伊達が“ ずっと工事中ならば、工事現場好きにとっては願ったり叶ったりではないだろうか “に対する木島のセリフに著者の方の美学を感じます。


伊達の言う通り完成させなければ永久に楽しむことができます。しかし一瞬のきらめきだからこそ、そこには完成までの施工の流れや大きな変化を見せる造形美に胸を踊らせる気持ちに感じるのだと思います。

例えでいえば花火を見ているのと同じ感覚と一緒なものでしょうか。
一瞬で輝き儚いからこそ美しく感慨もひとしおです。これが常しえに続くとなればそこまで思いを馳せることはないでしょう。

もしかするとそこには新たな発見や楽しみがあるかもしれません。

本を読み終えて、著者の賽助さんを知れたような気がして、より一層好きになりました。
文章から優しさや温かさが滲みでてるようなそんな気がします。


私はただのいちファンにすぎませんが、私の読書感想文を読んで興味を持っていただき、1人でも多くの方に『君と夏が、鉄塔の上』手に取っていただけたら幸いです。

そして、ふと立ち止まって鉄塔を見上げてみてください。
鉄塔を見上げた時、新しい何が見えるかもしれません。

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