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とーます模話のこざこざシリーズ 12「白と黒、ゴスペルとブルース①」

アーティストの方としゃべる機会があった。

そういう機会から遠のいていたので…新鮮な気分だった。

その方のアートの話を聞いているうちに、
いつの間にか音楽の話になった。

彼はブルースが好きだといった。
日本では忌野清志郎が好きだそうだ。
ロバートジョンソンの話とか…
他人とブルースの話を直接するなんて…
ずいぶん久しぶりなことだった。


アートの表現の場合、
言葉以前の混沌とした部分の意識だとか、
アートで表現したばかりのまだ未整理な意識の部分は…
ありきたりの日常を送っている人間にとっては、
刺激的でくらくらする魅力がある。


ブルースの話の前に…アートの混沌とした、
善も悪も、陰も陽も未分化の状態の魅力というか…
くらくら感の話をしていた。

私はなんだか、その未分化な状態と、
統合した状態の類似性を思って、
つい、その方にべらべらと自分のブルース体験の話をしてしまった。

「マヘリアジャクソンとかゴスペルのコンピ盤聴いたときに、
デルタブルースやソウルミュージックもブルースも、
同じだなって感じたんですよ。一緒だって…
そのときに…善悪とか悪魔と神とか…もとは一緒っていうインスピレーション感じたんですよ…当時のボクにはブルースもゴスペルもおんなじ音楽にしか聞こえないっていうか…」


アーティストの彼にはボクの感じ方が伝わったのかは不明だが…
音楽もアートも二元的なものでなく…宇宙のエネルギーとしては同じくエネルギーなんだろうなと、感じたので…そう伝えたかったのだが、
どうもうまくいかなかった…

最後に、マーティンスコセッシ監督の話をしたので…
インディアンから、黒人が音楽的な影響を受けていて、
アフリカからもたらされたベースに、プアホワイトのコード、
インディアンの音楽が加わって、さらに、軍隊から払い下げられた楽器や、
ローバック社の安いギターなどを通じて、黒人音楽が成熟していった話などをした。


というとまるで私が主でしゃべっていたように思われるかもしれないが、そうではない。私からの話はそのことだけで…大半は展示されているアートの話やその方のアートにまつわる話をきくことに終始した。

たいへんおもしろく、有意義な時間であった。


アートを見ると…私はどうしても、そのアーティストがどんな音楽をきいているのかが知りたくなる。

絵画を見ると、色彩の中に音が、フォルムの中にリズムが見える気がするのだ。色彩にも饒舌な音もあれば、寡黙な音もあるし、さまざまな音階を感じさせてくれるものもある。

とはいえ、それもまた私の中の個人的な体験に過ぎないのだ。
あるアーティストの芸術作品を通じて、まったく同じ内面の体験をすることは不可能だ。

しかし、それゆえにアートは面白いのだろう。
みんなが違うことを言う。違う感想をもつ。
ロックもそうだ。みんなが勝手なことを言う(笑)。


久しぶりに刺激を受けた。
といって、絵をかこうとは思わないが、
おもしろいものをみよう。
おもしろいことをしよう。
わすれていた、たのしいことをしてみたい。

そんなふうに思って…アトリエを離れた。