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映画『母なる証明』のはなし


ポンジュノの映画は『殺人の追憶』が大好きで、なんと説明したらよいかは分からないが、見えそうで見えない怖さやじとっとした気落ち悪い映像がどこか心地よい。

本作でいうと、 オープニングから何処か乗り切れなかった。なぜか、、、彩度の低い草原でそこそこの広さはあるものの若干俯瞰気味で撮影され奥行きはあるものの森で閉ざされ奥行き感はあるのものの抜けきれておらず閉塞感を感じるファーストカットだ。そこで踊り始める。疲れた表情はわかる、終盤そこに戻ってなるほどとも思う。しかしなぜ踊るのか、、分からない。

知恵遅れの息子と溺愛する母親。序盤はまぁひとつの家族の形といった感じで進んで行くが徐々に狂気が迫ってくる。逮捕された息子を救うため、真実を追い求める。少しづつ真相に近づいてくるものの母親に味方はおらず、苦戦する。息子の友人を犯人扱いしてしまい、慰謝料を請求されるも彼の手助けから物語は加速し始める。

息子の友人ジンテが個人的には映画制作上いいポジションだと思った。友人を助ける理由がありゴロツキなためやりたい放題動かし物語を展開させられる。さらに頭がキレる。いい設定。あと彼の住む家のロケーションもいい。

真実を知った母親がどう言った行動に出るのか、それこそが最大の見どころであるかと思う。結果、真実を闇に葬りさり息子の元から去った。それこそが息子を守る一番のやり方だからなのだろうか。難しい。

そして最後、ふらつきながらバスに乗る。バスの中では中年のおばさん達が踊っている中で彼女だけがぼぉっと外を眺めている。針を太ももに刺す。確か嫌な記憶を消せる秘密のツボだったとか。そして彼女はその集団に紛れ踊り出す。望遠で映像はブレ逆光で誰が誰かもわからない。まさに狂気。

いくつか気に入った箇所がある。備忘録として、立ちションしながら薬をあげるシーン(溺愛甘やかし)、バスから見る一本だけ立つ木(味方のいない孤立した自身の投影)、火をつける箇所の長回しによるリアリティ。また、気になった点でいうと刑務所で殴られ右目を負傷、昔の写真の右目部分が傷ついておりデジタル修正。ここには一体どんな意味が込められていたのだろうか。この時が一番可愛かった的なセリフもありかなり気になるシーンだ。

消化不良というか、理解が追いつかなかった箇所も多くあるが雨のシーンや廃墟の奥の暗闇への写っていない恐怖など引き込まれながら見ることができた。

次は『パラサイト』を観よう。楽しみだ。

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