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映画『シンプルメン』のはなし

この映画は内容や物語を見ていこうというよりも
カットや照明などに比重を置いて見ていこうと思い鑑賞。

まず思うのは、基本的にずっと画が狭い。
多少引いていても望遠気味でFFちょい広めとかだから
ロングがほぼなかった
それでも人物がどういう場所にいて
何をしているのかというのが分かるようになっていて驚く。

予算は知らないが、
画が広くなるにつれコントロールしにくいことが増えるのは事実で
照明も録音もそうだし
外ロケであれば背景の整理も考えると
色々コストがかかる。
そういう面で予算のない撮影をしている我々にとって
場合によってこのやり方は効率が良いかもしれないと思った。
セリフは多いがカットバックで見せるのではなくて
2ショットを作りフィックスで撮るのも多く
これも勉強になる。
その場合人物を対面で配置しない方が良いと思った。
夜のシルエットで兄弟が話すシーンも、
序盤電話ボックスあたりで話すシーンなど
お互い外を向かせたり
同じ方を向かせたり
正面を向いている人物の後ろでその人物に対して話しかける
お互いにカメラの方を見ながらの会話であったり
こういった立ち位置の工夫は飽きさせない演出かと思った。

ファーストカットからして
肩の力の抜けた展開なんだろうなと思いきやまさにその通りで
シリアスな問題を抱えている人ばかりなのに
悲観的でない変わった映画だった。

よかったと思うのは、
父を嫌い、会いにいくのをずっと拒んでいた兄が
父の元へ車で来たシーン
到着した際に車内での表情や仕草は不安と苛立ちを感じる
いいショットだと思ったし、
その後父親の元へ歩み寄る時の顔もと険しくとても良い。
そして一転してラストカット
これで終わってくれと思ったカットで終わり
安らぎのある表情を俯瞰で撮った2ショット
自分もこういうのを撮りたいと思った。

他印象的だったものとしては
・ずっと探してきた父親がサラッとカットが変わったらでできたこと
 所詮そんな程度だったのかなと思った
 つまり潔く重要であろう人物を雑に扱う勇気がすごい
・兄の運転する車を見た弟のニヤッとした表情
・赤い車があわられてからの室内に近づきてのヨリ
 このカットはかなり怖い

総じて思うのは、
複雑な撮影とかはあまり多くないし物語もシンプルだけど
見ていられるのは役者の表情がずっとよかったからかなと思う。

ヨリの画の多さはより表情を見せていくための手段としたら
撮影含めた演出に見事にハマったことになる。
ファーカス合わせがうますぎて痺れた。


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