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多面体、もしくは

普遍的なことや
恒久的なことが
必ずしも価値があるとは限らない

刹那的なものの方が
強烈に脳裏に張り付いたり
歪なものの方が
価値観を叩き割ってくれたりする


優しいと思う人間が、さして優しくなく
酷いと思っていた人間が、さして酷くなく
私はそういう時にどんなことを思うのか
誰に期待をして、誰に失望をするのか


髭を剃ってすぐの口にキスをしたときに、
妙に柔らかくて、動物的な気持ちになった
例えば、私を壊されるのならば、
同じく私も壊していいのだな、と思えた

野生動物が朽ちていく様を見て、
可哀相、などと抜かしてはいけない
彼らは、可哀相でも、不憫でもない
自然の摂理としての道理を認めたい
そして
そう思うことは不道徳ではない


野生の生き物として生きるために
人工の柵を乗り越えていく気持ちになった


愛だの、寂しさだの、情だの、
適当な理由をつけてみれば良い
私はハッタリがとても得意で
それで飯を食っているようなものだから

自動運転の電車に乗った私とすれ違う
裸足でガラスの上を歩いている今の私を
すれ違いざまにどんな顔で見るだろう


もしも目があって
可哀相などと言われたら
私は舌を出して笑ってやる
どうせ生きるならこれぐらいなさい、
と中指を立てる



ここまで書いて眠って
朝になり読み返して
夜中の混沌としたムードを想う
しかし夜を超えた今も
あながち同じ気持ちでいる

あまりに多面的な自分の
それぞれを認めたときに
真っ当に(自分としての)
生きていける気がする

もう不和を恐れている時間はない
という最近の気持ち、
そんな休日です。

渡部有希

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