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黒猫



街路樹の影が
真っ黒で
ニァアと聞こえた


ああ、
誰かいて
私を呼んでいるのね


耳を塞いでいた
真っ白いイヤホンを外して
影へ歩み寄る

そこには
枯れた葉が2枚
ちらりと落ちているだけで

ニャアも
なにも
なかった

それが
とてもとても
悲しかった

ひとりのかえり

ひとりのうちへの


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詩人ってすごい職業だと思います。

己の身体や頭を切り取って
ご飯を食べているみたいだから。


吉野弘氏の詩集を読みました。

中学生の頃に読んで
強烈にくらった一編を
久しぶりに噛み締めて、

また、他の作品の
優しいくせにドスっと重たくて
なんとなくやり切れなくなったのでした。

通勤電車の中で読み終えて、
一回帰っちゃおうかと思った。

でも、
良いものはずっと良いんですね。

格好良いな。

渡部有希

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