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#09 黒門@上野公園

巨大都市・東京の発展の裏側で、かつての街並みは急速に失われている。
ノスタルジックで心に残る街並み、建築物、飲食店…。
真のレガシーを求めて、今日も裏路地を歩く。
懐かしくて心惹かれる、うるわしの東京アーカイブズ。

上野公園にこんなオブジェができているのに気がついた。

説明書きがあった。「この壁泉(へきせん)はかつてこの地にあった『黒門』の姿を表現しています」とある。“壁泉”って言葉を初めて見たぞ。スマホからネット検索。壁泉とは、人口の滝をつくる、フランスやイタリアの庭園の技法なんだとか。
たしかに、水が流れている。

いつ頃これって建てられたのだろうか。そんなに昔じゃないように思う。少し引いた写真がこちら。

右の階段を登ると西郷隆盛の像や彰義隊の墓がある広場に出る。

この壁泉ができる前の風景をパソコンの中から探してみた。

2009年の6月にオールアバウトで、
上野から谷中へ彰義隊、敗走の道をたどる (全文) [散歩] All About
という記事を書いているので、まずはその日の画像をあたってみたのだが、何気ない場所なので撮っていない。

ネットであれこれ調べてみると、かつてあった黒門が現在も別の場所にあるということがわかった。そこで、今回のレガシー散歩は、かつてあった黒門を見に行くことにした。

その前にざっとおさらいをしておこう。黒門は寛永寺の総門だった。寛永寺の敷地は今の上野公園に加えて、その周辺まであり、かなり広大なものだったようだ。
彰義隊と官軍が戦った上野戦争では、黒門で戦端が切られた。

かつての黒門が残っているのはこちら、円通寺。

ここにかつて寛永寺にあった黒門が、ここ円通寺にあるのは、上野戦争の後、彰義隊の遺骸はそのままにされていたそうで、それを見たこの寺の和尚がいたたまれなくなり、遺体を火葬し、この寺に合葬したんだそうだ。境内には、彰義隊の墓があるのはそのためだ。
こちらが黒門。

近くに寄って見ると銃弾の跡が見える。

お墓にお参りすると、黒門の内側を見ることができた。先ほどは新政府軍側から見ていたのだけれど、今度は彰義隊側から黒門を見る。弾痕が表よりも少ないことがわかる。木の薄いところは貫通しているが、厚めのところはたぶん、そのまま木の中に弾が残っているのではないだろうか。

たぶん、この黒門に銃弾を撃ち込んだ人も、打ち込まれた人も今はいないのかもしれない。
でも、これらがこうして、残り、生々しい姿を伝えてくれているのは、なんだか感動ものだ。

というわけで、僕は、銃弾の跡を見ながら、死んでいった兵士のことを思った。なんだかとても複雑な思いが湧き上がってきた。もしあの場、この黒門の内側、あるいは外側にいたら、どんな気持ちだったか想像してみた。やはり、複雑だ。

(続く)


【プロフィール】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。

【著書】
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