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#55 せんねんそば@田原町店

大都市・東京の発展の裏側で、かつての街並みは急速に失われている。
ノスタルジックで心に残る街並み、建築物、飲食店…。
真のレガシーを求めて、今日も裏路地を歩く。
懐かしくて心惹かれる、うるわしの東京アーカイブズ。


中学生のときに自分の小遣いで初めて立ち食いそばを食べた。今でもあるが、駅に立ち食いそば屋があって、そこでこっそりそばを食べるのが好きだった。たいていは、おやつ感覚で、食べた。そばと言っているけれど実際はうどんを食べていた。
山口県の防府という町の駅そばなので、うどんは九州スタイルで少し細め、箸で切れるほどのやわらかさだった。その後、僕はすべての大学を不合格になり、広島市内の予備校へ入った。広島で立ち食いそばを食べた記憶はないのだけれど、節目に実家に帰るときに新幹線で徳山駅で在来線で乗りかえるときに駅そばを食べるのが楽しみだった。
その後、僕は大阪の堺市にあった桃山学院大学に進学。堺市に住んだ。
難波にあった、吉本の劇場の前にあった立ち食いではないけれど、雰囲気は立ち食いそば屋の店によく行った。そこはカウンターだけの店で値段も安かった。大阪のうどんは山口県よりは少し太く、コシもあった。なにより、かやくご飯というのがあって、うどんといっしょに食べるといいかんじだった。
驚いたのは大阪のうどん屋は、天かすやネギがテーブルにあって、入れ放題だったのだ。僕はうどんに天かすを入れ、かやくご飯にも天かすをかけて、醤油を垂らして食べた。

大阪には5年ほどいて、東京に引っ越した。
最初に住んだ街は荻窪で、駅前に「山田うどん」があった。そこは煮玉子うどんが売りだった。
その後、僕は中野坂上、東中野、そして再び荻窪、さらに高円寺、下井草、神奈川県の茅ヶ崎、明大前、四谷、早稲田、曙橋と引っ越しを繰り返した。それぞれの街で立ち食いそばを食べたが、とくに印象に残っているのが四谷だ。
四谷に住んでいるときは駅からほど近い、四谷コーポラスに住んでいて、昼前に起きて、歩いて駅前の小諸そばまで行った。
いつも同じメニューで、天ぷらそばにライスを食べていた。
今ではちょっと考えられないけれど、けっこうな量だ。だから体重が120kgになり、その後、糖尿病になって、入院することになる。
それから、早稲田鶴巻町に引っ越した。山吹そばという立ち食いの店があって、そこへはよく行った。
曙橋、住所でいえば新宿区富久町だったが、その頃は笠置そばの東新宿店にはよく行った。食べていたのはコロッケそば。
新宿区富久町から台東区北上野に引っ越してきたのが、2014年。
最寄り駅の東京メトロ銀座線の稲荷町駅。駅からすぐの場所に「せんねんそば」はあった。あと、浅草の雷門や田原町にもあった。

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浅草田原町店は国際通りにあって、近くの稲荷町の店よりもよく行っていた。
散歩がてらにぶらぶらと浅草方面に歩くとちょうどいい場所にあった。

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食べていたのはコロッケそば。とにかくコロッケが大きかった。
ところが、あるとき、知っている「せんねんそば」が次々と閉店。
ふと、今はなにになっているのだろうかと、国際通りに行ってみた。

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今は、吉野屋になっていた。
街の景色は、せんねんそばが吉野屋になっていてもさほどかわらない感じだ。
散歩して、ぐるりとまわり、家に帰ってきた。やはり、せんねんそばに行きたい、そう思いながら家でソバを茹でて食べた。コロッケは近所にあるオリジン弁当で買ってきた。うーん、やはりせんねんそばのほうがうまいね。


【プロフィール】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。

ツイッター https://twitter.com/maguro_shimo

【著書】
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