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許しがたいオチ(5A73/詠坂雄二 )

※ネタバレ含みます※

5人の連続した自殺には、ある共通点があった。
それは遺体のどこかに「暃」というタトゥーシールが貼られているというもの。この「暃」という漢字は、JISコード「5A73」で登録された”意味をもたない漢字”、すなわち幽霊文字である。
この文字の意味するところは何か?5人の関係性は?
2人の刑事が、事件を追っていく。


アメトークの読書芸人の回で紹介されていた作品。
設定が抜群に面白く、徐々に明らかになっていく5人の関係性や、「暃」の意味を様々な角度から考察する過程には引き込まれたが、紙の本で読んでいると、残りページが1割ほどになった時に不安を覚えた。
「残りこれだけのページ数で、回収できるか…?」

すると、「始末」と題された最終章で、突然著者の詠坂が登場。
作中、死んだ5人と繋がりがあり、自殺を導いた黒幕と予感させた謎のヘッドフォン男・韮澤と詠坂の会話劇で全ては回収される。
実はこの連続した自殺は、幽霊が5人に順番に乗り移り、自殺へ導いていたのだ。霊感的な特殊能力をもつ韮澤はそれに気づき、食い止めようとしていた。
「この連鎖はまだ終わってません。幽霊は、幽霊文字の意味を考察したがる人をターゲットにしたがるようです。でも詠坂さんは作家でしょ?なら、この話を出版して世に広めることで、考察したがる人を減らせるんじゃないですか」というオチなのだが、いや、推理小説の感じでこの怪奇現象終わりはないだろと思ってしまった。それ許されるなら何でもありじゃねえか。
あと、自殺方法は縊死が圧倒的に多いにも関わらず、この5人の死に方は全員バラバラだった。それをどう説明するのかなと思いきや、「幽霊だって飽きる」という説明。酷い。

三島由紀夫なんかでも急に「筆者は〜」とご本人の意見が差し込まれるくだりがあったりするが、リアルな作者とフィクションの登場人物を交差させるメタ構造は、確かに新しかったと思う。
だけど私は、ガリレオ的な気持ちのいい伏線回収を期待してしまった。

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