永遠には続かないもの(ネットで故人の声を聴け/古田雄介)

闘病者、自殺願望者、90歳ブロガー、娘を殺された父…
今もネット上に残る「死」を綴ったブログやSNSを紐解き、そこに隠された本音や心理を探っていく新書。
著者はライター兼ジャーナリストで、Yahoo!ニュースなどでもたまに記事が取り上げられている。

全ての章に画面の一部を撮影した写真と、亡くなった時期、亡くなった年齢が記されており、高校二年生の若さで白血病で亡くなった「ワイルズ闘病記」

や、癌を患った京大院生による「ヨシナシゴトの捌け口」

などは、本を読みながらブログにもアクセスし、号泣してしまった。

一方で、減っていく残金を数える自殺願望者の「死に場所を見つけた」という投稿で終わるブログや、2004年広島県廿日市で起きた女子高生殺害事件の被害者の父が、事件解決に繋がる情報を得るために毎日綴ったブログは、読んでいてしんどくなった。

しかし、この本の趣旨は、ブログを紹介すること自体ではない。
「故人の声を聴け」というタイトルの通り、著者は一歩引いた目線で投稿を分析し、その背景や本音を探っていく。

故人の声、故人の家族の声という目線の違い。
故人に管理を託された家族や知人たちによって投稿が続く様子。
13年を経て事件は解決したが、被害に遭った真面目な娘に悪い噂が流れていることを知った父が、否定できない本人の代わりに真実を伝える趣旨に変わっていく様子。
そこには様々な背景があり、変化があり、想いがある。

そうして投稿された記事や写真は、しかし、ブログの運営会社がサービス提供をやめた瞬間に消えてしまう。インスタやツイッターにしても、これから何年先まで続くか、誰にもわからない。

世界に向けて公開されているパブリックでありながらも、プライベートな様相も呈する場。その絶妙な場だからこそ残せた故人の声は、日記や出版物とは異なる独特の色を帯びています。(略)
現在の社会ではそれを完全に保存することは難しいところがあります。だからこそ、現存するうちに耳を傾けてみることに意味があると思うのです。

たくさんの想いをのせたまま消えてしまったサイトの儚さに、私はどうしても、命の儚さを重ね合わせてしまった。

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