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信じる(星の子/今村夏子)

※ネタバレあり※

宗教2世の子どもを描いた小説。芦田愛菜主演の同タイトル映画を先に観て、後から今村夏子原作だったと知り読んでみた。

赤ちゃんの頃から体が弱く、乳児湿疹が治らなかった主人公・ちひろ。
ちひろの父が同僚に相談すると、ある宗教団体が販売する水を薦められ、その水を使うようになってから湿疹が治ったことで、両親ともに宗教にのめりこんでいく。
おかしな両親に嫌気がさした高校生の姉は家出をするが、中学生のちひろは学校で冷やかしを受けても両親を信じ、愛する…という話。

あらすじだけを辿るとちひろが幼くピュアなだけのように思われるが、そうではない。

親戚から「うちから高校に通わないか?」と打診されたり、淡い恋心を抱く中学の先生に、夜の公園で儀式をするちひろの両親(とは知らない)を見られて「変なやつが2匹いる」とディスられたり、自分の親がおかしいことに気づき、距離を取ろうと思えば取れるチャンスは何度かあった。引っ越すたび狭くなっていく家や、変な水を学校で冷やかされることに何も感じていないわけではなかった。

それでもちひろは、両親を”信じる”ことを選ぶ。
普通、宗教2世を描く作品は、主人公が宗教から抜け出して終わるのが相場だが、この作品のオチは違う。
宗教の宿泊行事中、夜中に宿を抜け出し、両親と星空を眺めるシーンで幕を閉じる。

家族ってそれこそ宗教みたいだと私は以前から思っていたが、何を信じるかは本人の自由だよなとあらためて思わされた作品だった。

そういえば、以前Twitterで芦田愛菜の名言がバズっていた。

(“信じる”について)「裏切られたとか期待していたとか言うけど、その人が裏切ったわけではなく、その人の見えなかった部分が見えただけ。見えなかった部分が見えたときに、それもその人なんだと受け止められることができる、揺るがない自分がいることが信じることと思いました」

高校生にしてこの発言、芦田愛菜って人生何週目?と話題になっていたが、これは本作について言及されたものだったといま知った。
彼女以外にあり得ないキャスティングだったのだなと思う。


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