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世界がひとつしかないこと。

先輩が異動するらしい。

仕事柄異動自体は珍しくない。問題はそれが、予想だにしない人物だった事。

私の職場は元々古い考えで所謂「社畜」みたいなのが上層部。そこから新人が染まるかどうかは五分五分といったところで、当然染まった方がウケは良い。

その先輩はまさに「染まった方」

新卒で入ってきて、真面目さ故に染まったのだろう。人としては嫌いでは無いのだが、とにかく仕事第一といった感じで早出残業は当たり前(というか定時の概念がない)で、三十手前にしてくたびれている。一応サビ残が良くないとかそういう理屈は頭に入ってるらしいが、本人曰く「仕方ない」らしい。

最初はそんな先輩の事を理解出来なかった。サビ残そのものもそうだし、それを止めもしない……というか推奨する上司を尊敬してついて行く意味がわからない。

だけど、異動が決まりその先輩があからさまに落ち込んだ時にようやく私は分かった。

その先輩には「ここ」しかないんだ。

元々がどうかは知らないが、実家暮らしの先輩は、しかし早出残業の鬼なので家族との関わりはほとんど無いらしい。ご飯もコンビニで買って食べていると話していた。仕事の疲れで休日も家でお酒を飲んだり寝ていることが多い。人間関係の中心は仕事だ。

だからそもそも、人間の選択肢が職場しかない。サビ残する上司を見てそれが当たり前だと思い、そこに続く。そんなものなのだと。尊敬する云々じゃなくて、世界に上司がその人達しかいないんだ。

そして今、その世界から放り出されようとしている。……そりゃ、落ち込むわ。

気持ちは分かる。
散々ここで書いているけれど、私も学生時代はアルバイトという狭い世界しか無かったし、私の場合は卒業だったけれど、離れる時は生きていけないと思ったし。たまたまそのバイト先がそうでなかっただけで、たぶんサビ残させるバイト先だったら私も「そう」なっていた。

ついでに私は今2社目なので、1社目という経験値もある。そこにも尊敬出来る人がいた。

今の職場は「え?」って思う事いっぱいあるし、今のところ尊敬出来る人が居ない。サビ残褒めるし、止めないし、王様気質だし……でも、私には外の世界に良いお手本がいるから、そうはならないぞって思って生きていける。(それでも引っ張られそうになるのが怖い)

こう考えると、世界がひとつしかないって結構危険なんじゃないかなって思う。だって、それが全てなんだから。盲目になってしまうんだ。

ここから先輩が異動して違う世界を見て、あぁこんな世界もあるんだなって心穏やかに生きて欲しい。

と、同時に私も意識して世界を増やしていこうと思った。習い事とかかな……?



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