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シロスジコガネ Polyphylla(Granida)albolineata

これまた昨年のお話。
場所は日本海沿岸地域です。


2021年7月、スーパーの灯火に、見慣れないコガネムシを発見!

んん???
なんだこの格好いいコガネムシ…

かなりオーラを放っています。

白い縞模様がシックでおしゃれ!
というかでかい!


初めてみる昆虫というものはいつでも胸が高鳴るものですね。
急いで、「コガネムシ 白 縞」などのキーワードで検索してみます。

これかっ

シロスジコガネ Polyphylla albolineata

触覚の先の平たくなっているところ(片状部というのですって)が、
手のひらのような形で立派なメキシコシロスジコガネとかは、インターネットでなんとなくみたことがありました。
すげーってなるため皆さんもぜひググってみてください!
全然身近な存在ではなかったため、かなり嬉しいです。

トカラ列島から沖縄諸島、奄美諸島には、オキナワシロスジコガネという同属の種がいるようです。
頭の先の頭盾(とうじゅん)がより角ばっていたりと、見た目も少し変わるそうな。図鑑でみると、たしかに…という感じでした。

以下心の声
こういう時、私は正直大学生の時まで昆虫がどちらかというと苦手(小学生までは虫取り少女でしたが歳を重ねるごとに触れなくなるよくある現象が起きていました)だったロスタイムがあること、
昆虫図鑑を小さい頃愛読していなかったことが悔やまれます。直感的にあれだ!と思い当たらないのです。とりあえず学び始めるのに遅すぎることはない論者としてのらりくらり生きております。
小さいお子さんをお持ちの方にはぜひ、鳥、魚、植物、昆虫、哺乳類、両生類、爬虫類、などなどと満遍なく図鑑を買ってあげてください!
講談社や小学館、学研などから出ている大きな子供向け図鑑はめちゃコスパが良いし写真も美しいし最近は映像もついてるしでとてもお得です。
一般常識が身につくし情操教育にも良いでしょう。私自身、野鳥や金魚などの図鑑は読み込んでいたため、
生き物の名前で鍛えられていたのか、
教科書など授業中に出てくる初見の長いカタカナの固有名詞を同級生よりもスラスラと読めるという地味な特技?がありました。きっと図鑑のおかげ。

さて、シロスジコガネに戻ります。

シロスジコガネを手に乗せる
サイズといい、重量感といい、
只者ではない。


触覚の片状部が小さいため、メスでした。
いつかオスも見てみたい!

スナムグリヒョウタンゾウムシもそうでしたが、
このシロスジコガネも、沿岸部に生息する海浜性昆虫です。

それだけでテンションアップです!

生きる芸術や〜

海岸の松林に生息しており、
実験下では、
幼虫はクロマツ、コウボウシバ、ハマヒルガオ、マツヨイグサ類、様々な種類の海浜植物を、
成虫はクロマツの葉を食べるそうです。

なんと幼虫はアカウミガメの卵を摂食していた例もあるようで、
食葉性コガネムシの幼虫の一部に見られるように、動物質の餌を必要とする可能性もあるとのこと!

ウミガメの卵を、地中のコガネムシ類の幼虫が食べるということを想像したことがなかったため驚きです。

ディテールの細かさと優美さがもはや宇宙
あと、つぶらな瞳がかわいい


またもう一つ驚きなのが、幼虫時代が飼育下では20ヶ月以上、約2年にわたるということです。
2年1化で、じっくりと育つのですね。
ヘビトンボも幼虫時代が2年ないし3年あるそうで、シロスジコガネしかり我々の目につきやすいのは成虫の姿ですが、彼らにとっての人生(虫生?)の大半は幼虫時代にありということが興味深いです。

「2年熟成させた美味しいザーサイです!」「炒飯にいれると最高です!」というCMを昨日テレビで観ましたが、
2年という年月の使い方は色々あるなとしみじみしました。

私がうろうろしていたあの砂浜の下にも、シロスジコガネの幼虫がウヨウヨしていたと思うと、環境の認識の仕方が変わる感じがします。

おしゃれな人のワードローブにこんな雰囲気の冬服がありそう


北海道から九州の屋久島まで分布域は広いですが、海沿いのクロマツ林など松林が減少している土地では、絶滅危惧種に指定されている場所もあるようです。


海浜性昆虫というと、砂浜にいる虫のことをいうイメージだったため、
沿岸の松林専門で生きている虫もいるということが新鮮でした。

↑マツ専門ではなく、幼虫時代は砂浜等の海浜性植物などを食べることから、
砂浜ー草地ー松林という帯状の環境が必要ということでしょうか。

成虫は夜になると、砂浜や松林を飛び回るそうです。

観察した場所も海沿いだったため、灯りに誘われてスーパーの前に来てしまったのでしょう。


もふっ



これまた激推しポイントが、裏側!(裏の写真がなくてすみません!実物をぜひ探してご覧ください)
後胸腹板を中心とするお腹側に、まるでライオンの如くふさふさもふもふの毛が生えているのです!!
獅子や!!

アフリカのナミビアには、背中側までもふもふのライオンコガネというコガネムシもいるようです。
甲虫×もふもふ はギャップで非常に良いですね!

もふもふっ


そしてもう一度この細部をご覧下さい。鱗状片がよくわかります。
そして きゅるん顔


あとはこの白い縞模様ですが、拡大してみると、鱗状片という立体構造でできているのです。
蝶の鱗粉と同じように、毛が変化したものだと思いますが、私はてっきり二次元的なベタ塗りの姿を想像していました。
そのため拡大写真で三次元なふさふさの鱗状片を発見し、そのディテールの細かさに驚嘆しました。

前胸背板
この凹凸にも何らかの意味があるのか?毛穴的なものの名残かしら。


小豆色のような赤褐色を紅とみれば、紅白の縞の獅子っぽい虫が松の葉を食べている様子は縁起良い感じがしますね。
今度出会ったら松葉を召し上がっていただこうと思います。

野生下で松葉を齧っている姿も観察できるようですので、私も今後意識して生活してみます。

いる場所・環境には普通にいる虫のようなので、
皆様も松林の近くの夜のコンビニなど立ち寄る際は、
彼らの姿を探してみてください!

コガネムシ類の紋様考えてみました。
周りの唐草が片状部にみえてきた…。


【参考文献】
https://shikoku-shokubo.org/shikoku-shokubo/images/file/backnumber/38/38-1.pdf 
https://mushinavi.com/navi-insect/data-kogane_sirosuji.htm
・  伊藤 寿茂 ・ 唐亀 正直,神奈川県藤沢市におけるシロスジコガネの出現状況と飼育下繁殖,神奈川自然誌資料 34 P43-48(神奈川県立生命の星・地球博物館) https://nh.kanagawa-museum.jp/www/pdf/nhr34_043-048_itoh_s.pdf
https://www.gentosha.jp/article/13254/
・小泉弘和、松本武(2011).(コガネムシ研究会 監修),日本産コガネムシ上科図説第3巻食葉群2,166-167.昆虫文献六本脚,東京

(全て2021年1月5日に確認)


海浜性昆虫繋がりでどうぞ〜

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