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あとちゃんと - 6

あとが若返った。なんだか立体的に見える。組織細胞剤注射というのを試したのだ。

抗生剤を切って5日で再び歯茎に膿が出てしまい、別の病院を受診した。
もともとあとのお母さんのるるちゃんが、どうも腰が痛そうなので鍼灸をやってくれる病院を探していたところ、そこが東洋治療や自然療法で口腔ケアもできるとあったので、るるだけでなくあとも予約をとって受診してきた。普通の西洋医学では根治には抜歯が必要で、そのためには麻酔が必須だが、あとの腎臓は麻酔に耐えないというのは分かっていたので、試しに行ってみることにしたのだ。

歯茎の膿に関しては量子物理学の理論で、効果のある薬剤を通したレーザーを口元に当てる。レーザーといっても、プレゼンテーションの時に使うポインターのようなもので痛みはない。波動による効果を期待しての仕組みなので、光源から1センチくらいには浸透力があり、口をこじ開ける必要もなく、痛みのある顎の近くでポインターのようなレーザーを暫く当てるだけ。

これが、その日の内に顎の腫れがひいた。膿のせいで絶えず口をひっちゃひっちゃさせていたのもなくなった。

腎不全については期待して行ったわけではなかった。全身状態を説明する中で腎不全は伝える事になる。すると組織細胞剤注射というのを紹介いただいた。再生医療の一つだという。ドイツでは薬事法にのっとっていて人にも動物にも実績があってポピュラー。腎臓の細胞自体を元気にするものだそうだ。効果は約束できるものではないが、維持、または改善を期待できるという。

その結果。何がどう違うか分からないけれど、若返ったとしか言いようがない。強いて言えば立体的に見える。

日々ずっと一緒にいると変化に気付きにくい。最近のあとも特に病んだようには見えなかったけれど、こんなに違ったんだと改めて気付かされる。

気付かなくてごめんね、あと。

ちなみにるるはやはり関節痛があり、マッサージと鍼を打って貰ったが、いつもはおこりんぼうな性格なのに、診察台の上でごろごろ言ってうっとりと目を潤ませている。痛いところを触られると、噛む素振りをするけれど、噛みつきはせず、先生に向けてやめて、という程度。

先生は猫扱いが断然にうまく、院内も落ち着いて受診できる。ちゃんと飼い主の言葉を受け止めてくれてる。そのねこのことを分かって向き合ってくれてるという感じがして安心感、信頼感をもつことができる医院だった。

ところで、今我が家で唯一元気印なあとと一緒に生まれたさきちゃん。他の子にかかりきりの罪滅ぼしのつもりで先生の真似をしてマッサージをしてあげた。するとうっとりごろごろ。可愛い顔がさらに可愛くなった(親ばか)。そのあとはぺったんこになって眠っていたのでリラックスしたのだと思う。

夕方河川敷をウォーキングしながら様々に浮かぶ不安を頭上の桜並木に問いかけた。あとちゃんは大丈夫。わたしたちも守ってるから、と返ってきた。るるのことは何もなし。るるは痛みはあっても元気ってことだな。木々の枝のあいまに浮かんだあとの顔は、お鼻がしっかり赤味のあるピンク。元気だ。調子が悪いときは真っ白なお鼻だったね。

元気な様子は勿論嬉しいのだけれど、再生医療で元気になったら、どうやって死ねるんだろう?と説明を聞いたとき浮かんだ。もちろんいつかは亡くなっていくのだけれど。これまで看取ってきた子たちのやせ細った身体が思い浮かぶ。今の医療は特別なことをしなくてもそこまで命を永らえさせる。いつもそれがいいことなのかどうかわからない。答えは出ない。再生医療の先の死というものがどういうものなのかは、更に分からない。

とは言えあとはまだ10歳。これで普通に長く生活出来ちゃうんじゃないかという日常を思い描いているけれど。


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