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日記:20240226〜赤染晶子『じゃむパンの日』〜

 夭逝した芥川賞作家・赤染晶子さんのエッセイ集『じゃむパンの日』を読んだ。

 主に日常から生まれる笑いやおかしみを描いたエッセイ。ちょっと笑いの取り方が狙い過ぎに感じる部分もあり、自分の好みからは少し外れるかも。どちらかといえば、「底冷えの町で」など、笑いは薄めの作品の方が心に残る。

 病院で起こるささやかな出来事がたびたび綴られるが、ご自身の体調や病歴だけでなく、他の登場人物についても入院の理由などの背景は全く触れられていない。ただそこにある人、そこで起きる出来事を、ポンっと切り取ったように淡々と描く。文章で笑いを起こすことが彼女なりの闘病だったのかもしれないが、そこは推し量るしかない。

 巻末に岸本佐知子さんとの交換日記が収録されていて、これがすこぶる面白い。もっと長く続けてほしかった。


 どうでもいいのだけど、学生時代、学校の合宿でお寺に泊まった時のエピソードで、「お寺の食事の規則は厳しい。静かに食事をしなければならない。たくあんも音を出して噛んではいけない」と書かれていて、むかし子供の頃に地元のローカルチャンネルでやたらと流れていた「ハマショクの炉端漬け」のCMを思い出した。
 まんが日本昔ばなしみたいな古めかしい絵柄のアニメーションで、お寺のお坊さんが修行中にたくあんをポリポリ食べる音が聞こえ、「たくあん食べているのは誰じゃ!」と叱ると、小生意気な感じの小僧さんが「たくあんと違いますぅ。浜食の炉端漬けですぅ」ってやつ。CMの最後に「たくあんは奥歯で噛みんしゃい」というナレーションがあって、「『たくあんと違います』って言ってたのに、結局たくあんじゃん!」と幼心に憤りを感じていた。本当にどうでもいい話をしてしまった。


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