見出し画像

営業も AI が自動化する時代はすぐそこ。アメリカで注目される「Revenue Intelligence」とは


AI技術の進化は営業現場でもトレンドに

ChatGPT をはじめとしたジェネレーティブAI(コンピューターが学習したデータを元に、新しいデータや情報をアウトプットする技術)の急速な実用化が進み、AI がますます全世界的に注目されています。さまざまな業務の自動化・効率化が進む中で、営業現場においても、AI を活用し効率化を行うことがトレンドになっています。

まず、セールステック先進国の米国を中心に、どのようにしてAIが注目されるようになったのか背景を振り返ってみます。

始まりは1993年にさかのぼります。米国でクラウド型の営業支援ツール(SFAやCRMなど)が先駆けて普及し、97年ごろには活用が一般化し市場が拡大しました。その後、各システム内に蓄積されたデータを生かそうとする動きが興り、2010年ごろにはアプリケーションの統合が議論されるようになりました。現在はその次のフェーズとして、集めたデータを生かして営業活動自体をさらに効率化していくためのサービスを提供するプレイヤーが多く登場し、企業の取り組みが活発化しています。

米国セールステック市場の変遷

そして、実はジェネレーティブAIの動きが活発になる前から、AIによる営業の自動化も既に始まっていました。近年、最も注目されているのが「Revenue Intelligence」と呼ばれるテクノロジーです。

「Revenue Intelligence」とは?

「Revenue Intelligence」は、営業担当の日々の活動に加え、マネジメント業務の自動化が議論されるレベルの技術をもつテクノロジーです。豊富な営業データを読み込むことで、営業担当には推奨行動を提案し、マネージャーにはパイプラインの健全性についての洞察を与えたり、案件レベルでのリスクとチャンスを検知・報告したりといった機能を備えます。

「Revenue Intelligence」により、従来マネージャーが行っていた活動を簡便化することが可能に

営業活動の効率化だけでなく、マネジメントにも注目が集まるようになった背景には、ダッシュボード活用の難しさが関係します。

従来、マネージャーはダッシュボードの情報を分析し、推奨行動を営業担当に指示していました、しかし、ダッシュボードはあくまで過去の情報が蓄積されたものでしかないため、変化し続ける顧客情報を読み取ることが難しく、また分析の難しさから判断がデータドリブンではなく属人的になってたことから改善の余地がありました。

分析システムの難しさが論点としてあった中で、「Revenue Intelligence」が登場しました。営業データを学習することで各商談の成約の可能性やリスクを評価し、営業担当には顧客状況やタイミングに応じた推奨行動を行います。ダッシュボードの分析工程に加え、案件毎の指示出し、進捗管理といったこれまで行っていた業務自体が必要なくなります。

通常分析のワークフローと拡張型分析のワークフロー

米国のセールステック市場を踏まえた考察

Gartner による調査から、米国のB2B営業組織の75%が2025年までにAIサポートの営業向けソリューションを活用して営業戦略を強化していく方針であることが明らかになっています。

また、21年に同社より発表されたレポートでは、Revenue Intelligence が組織全体の現場回帰を助長するテクノロジーであることが示唆されています。

顧客候補のサジェストや定型業務の自動化が進めば、営業担当のパフォーマンスが平準化されるだけでなく、教育コストの減少や、マネージャーの判断がマストな案件も減ることが期待できます。自動化できるところは徹底的に効率化し、営業担当だけでなくマネジャーも提案活動に集中する、といった世界観にこれから変わっていくかもしれません。

米国のトレンドは日本の営業にも波及する?

中長期的には、労働生産性に課題がある日本では、国内でのデジタル営業の浸透の先にさらなる効率化の手段としてAIの実用可能性に注目が集まることが考えられます。

米国でAI活用による営業業務の自動化・効率化が進む中、日本でも2020年以降のCOVID拡大をきっかけに、オンラインでの打ち合わせやウェビナーの開催など、デジタルチャネルによるセールスの重要度が増しました。働き方の変化が起こり直接商談ができない中、企業の顧客へのアプローチは対面からバーチャルへシフトし、直接会わずともバーチャルでクロージングできる時代になってきました。

一方で単純に日本もアメリカのセールステックトレンドに追随すれば良いのかといえば話はそう簡単ではなく、組織構造や文化の違いから浸透のスピードには差が出る可能性があります。

例えば、日本と米国の違いとして、米国ではジョブ型採用が主流であり、企業側は中途入社の人材採用と流動性を前提とした組織づくりを行います。中途で入社し短期間で活躍する、その期間をできるだけ短くするというのが当たり前なので、常に組織戦力を一定に保つためにセールステックを活用して営業の仕組みを構築し、データを貯めてそれを活用していく動きが興り、定着も進みました。

一方で日本ではこれまでの終身雇用の商習慣から育成に関しては定式がないことがほとんどで、「先輩の背中を見て学ぶ」という OJT を基本とした教育スタイルであることが多いです。また、地域営業が強く、同じ会社の中で部門毎にオペレーションが異なる場合も多いため、部門・エリアを横断したデータの蓄積・運用といった全社的な取り組みを一本化して進める際のハードルが高いといった特徴もあります。

Revenue Intelligence や他の有力なセールステックが台頭しようと普遍的であるのは、AIが学習するためのデータがなければ恩恵にあずかれないということです。特定の業務をデジタル化しても、正しく蓄積されておらず活用できない状態では、実用化にはつながりません。

次の投稿では、AIが学習するためのデータについて詳しく解説します。

また、本投稿の内容を ITmediaビジネスオンラインにて、当社代表村尾の連載企画としてご掲載いただいております。記事では、AIで業務を自動化できる・できない領域について下記記事で考察しています。
米国で「営業マネジャー不要論」が話題 AIが代替できない「営業の仕事」はあるのか