認知症状に対して薬を使うのは適切か
今回はこの記事を見ていきます。
【記事の概要】
・高齢化社会を本格的に迎えるにあたり、重要な課題になっているのが認知症患者の増加。
・福岡県久山町の縦断調査をもとに、認知症有病率が2023年と変化がない場合、2025年には認知症患者が675万人になることが予想される。
・認知症とは、さまざまな脳の病気により、脳のニューロン(神経細胞)の働きが衰え、記憶力や判断力などの認知機能が低下して、日常生活に支障をきたした状態。
・そして認知機能低下は、薬物が原因で発症するケースも少なくない。
[副作用で認知機能が低下する薬]
・日本老年医学会が調査し、高齢の患者さんに認知機能低下を引き起こしやすい薬剤の中でも、特に根拠のレベルが高い薬剤とは以下の3つ。
① 三環系抗うつ薬
アミトリプチリン(トリプタノロール)、クロミプラミン(アナフラニール)、イミプラミン(トフラニール)など。
副作用として認知機能低下が報告されているため、可能な限り使用を控えることが良いとされている。
② 過活動膀胱治療薬のオキシブチニン(ポキラス)
オキシブチニン(ポキラス)は、中枢に作用し、認知機能が低下するケースが報告されている。
③ 睡眠薬・抗不安薬のベンゾジアゼピン系
ベンゾジアゼピン系の薬は認知機能低下を引き起こす可能性があり、特に長時間作用型のものは認知機能に大きな影響を及ぼす可能性がある。
・この3系統の薬は、中枢に抗アセチルコリン作用を持つことで神経伝達物質にブレーキをかけることが知られている。
・認知症を引き起こす原因とされる脳内アセチルコリン低下の仕組みと被るため、一時的に認知機能低下症状を引き起こすものと考えられる。
・薬が原因でアセチルコリンの作用が低下している場合は、服用を中止することで認知機能低下から回復する。
[服薬前後で変化する症状]
・薬を飲む前と飲んだ後で次のような変化が増える時には、かかりつけ医に相談する。
◇記憶障害
数時間前にあったことを忘れてしまう。
同じことを何度も言ったり、聞いたりする。
忘れものやなくしものをよくする。
◇見当識(現在の年月日、自分の基本状態の認識)障害
時間や季節感の感覚が薄れる。
いつも使う道で迷子になる。
昔の出来事を最近の出来事と勘違いする。
◇ 理解力・判断力の低下
考えるスピードが遅くなる。
2つ以上のことが重なるとうまく処理できなくなる。
テレビ番組の内容や人の話が理解できなくなる。
◇ その他の症状
計画を立て、程度よくコントロールすることができなくなる。
これまで正しくできていた仕事が正しくできなくなる。
[医薬品の個人輸入代行に注意]
・法律的には、薬を輸入して販売するなど、国内に薬を持ち込むためには厚生労働大臣による製造販売業の許可が必要。
・ただし、販売を目的としない場合など、以下2つの場合は例外的に輸入することが可能。
1:医師・歯科医師が自己責任のもと自分の患者さんの診断や治療に使用する場合
2:一般の個人が自分で使用するために少量を輸入(いわゆる個人輸入)する場合
・個人輸入は許されていることに目を付け、代行業者が手数料を上乗せするのがこの商売のモデル。
・中間マージンとして個人輸入代行業者がお金を上乗せして利用者に請求することで利益を出している。
・法律上は合法だが、薬の副作用で悩まされた時のセーフティーネット、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外になるという問題がある。
・偽造薬物が多く出回っていると言われており、それらは効かないだけでなく、死亡事例すら報告されている。
・この類の薬は自由診療(100%自己負担)のものがほとんどであるため、医師の診察の元で手に入れるのに比べて安価に手に入るメリットがあると思われますが、あまりにもリスクが大きすぎるのではないか。
・仮に希望通りの薬が手に入ったとしても、その薬を使って良いかは自己判断。
・専門家のサポートを受けられず自分で判断するのは危険がつきまとう。
・自分でインターネットを調べたとしても、医療用医薬品の説明書は、専門家向けに作られた物ですから、知識がなければ読みとれない。
・身体を守るために、お得であっても個人輸入代行の薬を避けるのは必須。
【認知症状は抑えるべき?】
この記事を一言でまとめると「薬を飲むなら専門家の判断に任せよう」です。
これそのものは至って普通の話なのですが、認知症状に対して「薬で対応することが前提」であることに注意が必要です⚠️
記憶障害や見当識障害、理解力・判断力の低下やその他の症状など、挙げられたものは大なり小なり誰にでもあることですし、それ自体は「人間らしさ」でもあります。
認知症状が「日常生活を送る上での困難さ」につながって初めて『対応』が必要だと言えます。
ただそれも「本人が困るか」「周りが困るか」によって必要度合いが変わってきますし、その時の症状を「薬で抑える」発想の方に問題があることが今回の記事で見えてきます。
有名な話ですが、「薬を飲まなければ誤薬は起きない」というもので、薬の量や種類が増えるほどトラブルが起きやすくなるもの。
認知症状においても「それを問題だと捉えること」で問題化して、その対応策に追われて本人・介助者共に疲労して、負荷が掛かることで問題が深刻化していくのです😔
数時間前にあったことを忘れて、何が問題なのでしょうか?
時間や季節感の感覚が薄れて、どう困るのでしょうか?
テレビ番組の内容や人の話が理解できなくなるのは、そんなに大変なことなのでしょうか?
【薬に何を肩代わりさせているか】
人は『基準』を作られると、自ずと「その基準に合っていなければならない」という思い込みに囚われてしまいます。
その『正しさ』に従わないと他人に迷惑をかける、自分が怒られてしまうと萎縮してしまう訳ですね😢
それだと『正しさ』そのものが間違っている場合に誰も救われなくなりますし、このことは2020年のコロナ禍で「示された『正しさ』が感染症拡大を招いた事実」によって皆さん体験済みのはずです😧
大切なのは「正しいかどうか」以前に「自分で考えて決められているか」です。
自分で調べて、考えて、そして決めていった先で「これで良かったんだろうか」を確かめる時に初めて『正しさ』が役に立つのです。
『正しさ』が先に来て、自分を後回しにしてしまってはそこに『責任』は生まれず、何か問題があった時に「誰かのせい」にしてしまうのです😥
そうして皆が「責任を持つ」ことを避けた結果、それらを肩代わりする『コト』や『モノ』が世に出回るようになった訳ですね👨🏻🏫
もちろん『薬』もその一つ。
自分の心身や社会の問題を避けてきた結果、その肩代わりをする為に「症状を抑える」役割を果たしてくれます。
ただ、問題を生み出す「自分の心身」そのもの、すなわち『根本原因』を変えることはできないので、症状を抑えただけでは悪化していくしかなくなるのです😱
つまり薬は「自分で問題を解決する前提」で使用するモノであって、薬が問題を解決してくれるわけではない。
このことを理解していれば、認知症状を生み出す『根本原因』と向き合い、本人や介助者の「心身の問題」を分析・解消していくことが認知症対応として求められる姿勢だと見えてきますね☺️
問題はどこにあるのか。
それを見抜く為にはやはり「日々の学び」が欠かせないのです📕
この他にも介護ブログや読書ブログを運営しています。
今回の記事に共感してもらえたり、興味を持ってもらえたなら、ぜひご覧ください☺️
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