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創業1年目の苦悩。社会課題解決を事業にすることは「目的」となるか

創業1年を目前にしての暗闇

創業して1年、「社会課題を解決する心優しい事業者が挑戦を諦めないですむ世界」を創るためにMAGiC HoUR(以後、マジックアワー)は様々な形で試行錯誤を重ねた。

クリエイティブやブランディングを中心に事業としての形をつくり、メディアで自分たちなりの社会への目線を発信してきた中で、1年を迎えようとする3ヶ月が、最も苦しい期間だった。

自分たちがやっていること、目指していることが正解なのか。
前に進もうとしている方向はそもそも前なのか。
そんなこともわからないのに経営をする意味はあるのか。

ぐるぐると頭の中で考えても答えは見つからず、本当に暗闇のトンネルの中で一歩歩いては止まって戻ってを繰り返していた。その影響でこの「社内報」というアウトプットも、止まってしまっていた。

責任逃れの「社会課題解決」

そもそもなぜ暗闇の中へと落ちていったのか。

それは「社会課題解決を事業とする」ということが本当に「目的」として成立しているのか、また、その道は本当に持続的なのかということに疑問を持ってしまったからだ。

創業を決めてからずっと、「社会課題解決」という大きな枠組みをどうにか事業に出来ないか考え、もがき、その中で多くのビジネスアイデアを出してはボツにしてきた。

もちろんその過程で「SDGs」という概念が一気に普及したことで、社会課題解決を意識することは人びとの生活の中に入り込んできたし、方向性だけで考えれば十分追い風だったように感じる。

だが、多くの事例を調べ、SDGsのことについても学べば学ぶほど、「大きな概念」を「大きく捉えたまま処理する」ことに対して、自分自身がどうにも現実味を感じられなくなってきた。

また、弊社で運営しているソーシャルメディア「DaiFUKU」での取材などを通じ、多くの事業者やNPO、地域で活動をしている方と出会う中で、ほぼ全ての人が「課題解決」に焦点をあててその活動をしているわけではないということが分かったことも、自分のやり方に疑念を持った一つだ。

課題解決に取り組む人は、今目の前で自分や周囲に起きている課題、過去の自分の体験、出会った人との縁、もちろん生活のためや個人の尊厳や承認のため、特定領域への関心からの課題意識など、特定の課題とそれに対する自分自身の結びつきを持っていた

つまり、漠然と「社会が良くなったらいいな」という想いではなく、「他の課題を見過ごしたり、また別の課題の契機となってしまったとしても、この課題に向き合うのだ」という強い意志がそこにはある。

どの領域にも責任を持つことなく、外野からサポート体制を張っているようなポーズをしている自分が、実は何にも責任を負いたくないままでなにかいい人になろうとしているような、そんな気持ち悪さが湧いた。
もやもやと抱えていた思いや疑念が、どこか確信めいたものへと変化したのもその頃だ。

何をしているのだろう。
何をしたいのだろうか。

人権、貧困、性差別、環境、地域経済、観光、農業、福祉、教育、多岐に渡る領域を選べずに、「社会課題解決」という大きな枠組みで起業をしたことは、実はどれも選ばないで目をそむけていただけだったのではないか。

では、誰かを巻き込んでまで、やりたかったことは何だったのか。

大きな迷いの中、思い切ってインプットと思考の発散に振り切った。

目的と手段を間違えないこと

普段から自分は、テレビ番組、動画コンテンツ、漫画、映画、小説、学術書のようなものまで数多くのコンテンツに触れているつもりだ。この数ヶ月、その量をますます増やすとともに、浮かんだアイデアを蓄積させていった。

こうした反復運動は、コンテンツ制作に強い会社を創るためにも有効であるとともに、「自社の未来、ひいては自分の未来をどう創るのか」という問いに、より良い影響を及ぼすと信じていたからだ。

その傍ら、日々お仕事をくださる方々への価値貢献を通じ、自社のクリエイティブ力の向上を、じょじょにではあるが、確かに感じることが出来た。

そうした中で、自分にとって社会課題解決と向き合うことは「社会にインパクトのあるコンテンツをつくるための問い」を見つけることだと気がついた。

「既存のシステムに何らかの変化を与えたい、それならば社会の中でこじれている部分を解消するのが良い」というようなロジックがあったから、社会課題解決に対してベクトルを向けていたのだ。どこかで血の通わない枠組みを追いかけていた感触の正体に触れることが出来た。

原点に立ち返ってみると、自分のなかには

・何か新しいものを生み出す
・クリエイティブやアートの力で新しいインパクトを残す

という2つが残った。そして、これに気がついたとき、一気に視界が開いていった。

「クリエイティブ」の力を信じる

これまでは「クリエイティブ」というツールで社会課題解決をしようとしていたが、それはその逆で、「クリエイティブ」の力を信じているからこそ、その力で社会の課題を解消したい、というのが根っこの部分だったのだ。
「社会のなかで、クリエイティブやアートの領域が最大限のパフォーマンスを発揮出来ない」状況こそが自分が捉え、解決すべき課題であったのだ。

よく、「目的と手段を間違えるな」という言葉があるが、「目的=大義」と考えてしまったからこそ、こんな致命的な勘違いを引き起こしてしまった。

あくまでも、「目的にはそれぞれの尺度で最も大事にしたいものを置くべき」ということを後学のためにも残しておきたい。

また次の1年へ

上記の思索を通じ、2年目を迎えるにあたって、マジックアワーは一気にクリエイティブやアート領域への舵切りを行う。これまでの事業を継続するものものもあれば、新たにチャレンジすることもある。

だが、目的となる部分は大きく変化した。
私たちは、「クリエイティブやアートの領域に存在する課題を解決する会社」となったからだ。事業の中身で尖らせる部分はこれまでとは変化していくだろう。

一方で「心優しい人たちの挑戦をあきらめない」という思想そのものはこれまで通りであり、そこには「出来上がったものに良いも悪いもなかったとしても、やっぱりいい人には報われて欲しい」という創業当初の想いは変わらないからだ。

この1年、自らの足踏みによって失ったものも大きかったが、得たものも数え切れない。

その中でも、クリエイティブという領域に光明を見出せたのは、間違いなくメンバーのおかげであり、その活躍があったからこそ、アートの領域まで視野を広げることが出来た。

また、近日もしくは年明けにでも、2年目にやること、目標などを綴っていこうと思う。

ようやく、MAGiC HoUR(マジックアワー)にも朝の気配がする。

#オープン社内報 -黄昏時- Vol.8


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